ユーザー事例
分析スキルに長けた人材の育成:競争力の高い企業の新常識
優れた人材の育成に投資し、デュポン社は最先端のデジタルファクトリーから最大限の価値を引き出す。
デュポン社
課題 | 近年の製造現場では、デジタル化の進展と新技術の登場によって多くのデータが収集されるようになり、機械、工程の進化が続いている。一方、台湾の新竹にあるデュポン社の最新鋭施設では、継続的な改善を良しとする企業文化によって、加速し続けるシステムインフラの進歩に対応しようとしていた。 |
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ソリューション | JMP®をベースにしたシックスシグマ・トレーニングプログラムが義務化されたことで、高度な分析を業務に活用する流れが社内で加速。今日では、デュポン社のすべてのエンジニアが、データ分析のベストプラクティスを適用し、適切なツールによって、より迅速かつ高いコスト効率で重要業績評価指標(KPI)を達成する能力を備える。 |
結果 | 社員の分析スキルの向上に積極的に投資することで、スマートマニュファクチャリング施設から生まれる価値を最大限に活用。テクノロジーと社員のスキルアップ双方への投資が、デュポン社の競争力の礎に。 |
近年の5Gと人工知能(AI)の進歩は、クラウド統合製造環境から、スマートセンサー、ハイエンド・パッケージまで、関連技術の革新を連鎖的に引き起こしています。しかし、新世代の製造システムには、かつてないほどの需要と同時に課題もあります。
この分野における世界的なイノベーションリーダーであるデュポン社は、最先端の半導体材料ソリューションを提供しています。特に台湾の新竹にある研究開発拠点では、同社は50年以上にわたって、イノベーションサイクルを推進し続けており、台湾のみならず世界規模で半導体技術の発展に寄与した点が評価されています。
デュポン台湾のリーダー達は、デジタルファクトリー時代に同社が競争力を維持できている一因として、企業レベルで最新分析手法を真っ先に採用していることを挙げています。実際、デュポン社では新入社員にシックスシグマのトレーニングの受講が義務づけられています。これは、最先端の製造システムであっても、それを運用するエンジニアの分析スキルや能力が不足していれば、成果をほとんど期待できないという考えに基づくものです。そして、他社ではこれほど早期にトレーニングを開始できていないのが現状です。
充実したシックスシグマ・トレーニングプログラムで分析能力を向上
分析に精通した人材を全社的に育成するにはどうすればよいか。この課題について、同社ユニットマネージャーのIfrans Pang氏は、「私たちは必修のトレーニングに投資を惜しまず、また、ツールをスタッフに提供し、デジタルファクトリーで収集したデータを活用しています」と説明します。
シックスシグマのマスター・ブラックベルトを取得したPang氏は、現在、同社のシックスシグマのトレーニングプログラムを監督しており、特に複雑なデータに関連する課題を解決する際には、同僚に対してマンツーマンで指導しています。
Pang氏は、トレーニングコースの目標について、統計学の概念を深く理解することだけではなく、現場に戻ってからも学んだ統計的手法をすぐに活用できる実践的スキルを身につけてもらうことだと考えています。そして、トレーニングに用いるソフトウェアを1つに定めたことで、デュポン社のトレーニング理念と分析倫理は大きく進展することになりました。2017年に行われたDow Chemical社との合併を機に、デュポン社はJMP®を導入したのです。
「JMPは、デュポン台湾で行われるすべてのシックスシグマ・トレーニングの標準ツールになっています」とPang氏。入門レベルでは、分析を始めたばかりの研修生が初日にJMPをインストールし、管理図、工程能力分析、測定システム分析、実験計画(DOE)等を学びます。そして、研修以外でもシミュレーションゲームや年2回の継続的改善プロジェクトコンテストへの参加が奨励されており、年間を通じて分析スキルの強化がされます。これらすべての活動において、JMPが使用されています。
このような多分野にわたる分析の取り組みは、キャリア開発の重要な一環です。分析のスキルを磨くと同時に社内で協力して問題解決を深める機会でもあると考えられています。デュポン社の厳しいトレーニングプログラムを受講し、継続的に教育を受けるエンジニアが増えるにつれ、組織全体の能力が大幅に向上したとリーダー達は述べています。そして、この能力の向上には、JMPが社内で広く使用されるようになったことが貢献したと評価されています。
分析的アプローチを提唱する社員を育てる
「弊社では、すべてのプロジェクトにデータと統計による裏付けが必要です」と工程管理システムマネージャーのMiles Chan氏は説明します。分析を積極的に取り入れ、JMPのパワーユーザーとなったエンジニア達は、社内でソートリーダーとして活躍しています。さらに、JMPが導入されて以来、デュポン社では社内の昇進制度と紐づけてJMPの使用を奨励するようになりました。
「JMPはとてもパワフルなツールです。インターフェースはすっきりしていて、とても直感的に操作できます。また、トレーニングを受けなくてもJMPの操作は簡単なので、エンジニアにとって使いやすいです」とランプラントエンジニアのVinson Wei氏は述べています。同氏は、主に工程の信頼性に関わる仕事をしており、根本原因分析にJMPの分布、グラフビルダー、ランチャート、ANOVAを使用しています。JMPがバラツキの原因の素早い特定に役立っていることが何より大切だと同氏は指摘します。
時間の節約とコスト削減の両方の観点から、JMPの価値を明確に実証し、同僚たちの当初の懐疑的な見方を打ち破ることができたのは、初期の概念実証があったからだと同氏。
一方、MinitabとSPSSを長年使ってきた分析ラボのシニアエンジニア、Jerry Huang氏は、当初、ツールの変更に抵抗を感じていました。しかし、JMPを使ったいくつかのプロジェクトの成功を目の当たりにしたHuang氏は、JMPが多変量実験のためのより使いやすいツールであることに気づきました。それ以来、同氏はずっとJMPの支持者であり続けています。
「JMPの実験計画(DOE)では、非常に強力かつ完全な予測モデルを利用できるので、最適条件を正確かつ迅速に見つけることができます。これは他のソフトウェアでは得られないものです」とHuang氏。
分析能力が高い従業員ほど、より迅速な顧客への対応が可能に
データに基づいたコミュニケーションは、デュポン社が広範なトレーニングプログラムを通じて培ってきた分析文化のもう一つの重要な側面です。そして、この点は時に過小評価されることがありました。デュポン社のデジタルファクトリーのデータがJMPと完全に結びついたことで、同社のエンジニアは、JMPのレポートを使ってデータを可視化し、誰にでも分かりやすい形で顧客にプレゼンテーションを行っています。
誰に対しても伝えるべき情報を的確に伝達し、しかも、それを可能な限り短時間で行うことが必要なところ、ダイナミックな視覚化は、情報を直感的に共有し、エラーや異常値がすぐに分かる最良の方法だとWei氏は説明します。
「JMPの出力結果は、理解しやすく、簡潔で、プロジェクトを視覚化して明確に説明してくれます」とHuang氏は付け加えます。顧客とのコミュニケーションが効率化されたため、デュポン社はハイテク製造業の特徴である顧客ニーズの進化に迅速に対応できるようになりました。
たとえば、顧客のプロセス仕様が7nmから5nm、3nmへとアップグレードしていくのにあわせて、デュポン社は新世代の検出装置の開発に着手できたとHuang氏は説明します。また、あるケースでは、Huang氏はWei氏と協力して、顧客が外部光起電力素子に関する問題を解決するのをサポートしました。
光起電力素子は、温度、高度、プローブの状態など、さまざまな環境変数によって影響を受ける可能性があり、デュポン社の顧客は、コストも考慮したうえで達成可能な最適条件の組み合わせを求めていました。この問題がデュポン社に持ち込まれた当時、顧客は一因子ずつの実験に頼っており、主要な出力パラメータを定量化することなく、計算式を段階的に調整してテストを繰り返していました。
そして、Huang氏とWei氏は、JMPで重回帰と実験計画(DOE)を用いた多変量アプローチを行えば、解決策を見つけるまでの時間を劇的に短縮できることにすぐに気づきました。JMPの優れた「実験計画」プラットフォームにより、非常に高い相関性を持つ高度な製造工程に対する顧客ニーズを満たす最適な条件を確立できたのです。
さらに、JMPの分布に関する機能で、デュポン社のチームは変動性の問題を迅速に特定して解決できました。「他のソフトウェアなら何度も実験を繰り返す必要があっただろう」とHuang氏は言います。もしJMPを使っていなかったら、歩留まり率はさらに低下し、顧客満足度に影響していたかもしれないと同氏は付け加えています。
半分の時間で、2倍の成果
デュポン台湾のエンジニアの多くが、高度な分析スキルを有するようになったことで会社にもたらした価値は、効率性の向上だけではありません。
全社的に分析能力が向上したことで、同社のデジタル化が進んだ施設において、データからインサイトを最大限に引き出せるようになったとHuang氏は指摘します。
また、JMPという優れた統計ソフトによって、エンジニアは「半分の時間で、2倍の成果」を達成できるようになると同氏。
競合他社が、完全にデジタル化された製造環境を構築するために、テクノロジーへ多額の投資を実施するなかで、そのうちの多くの企業がテクノロジーと同様に重要であるはずの人材の能力開発への投資をしてきませんでした。
そう考えると、テクノロジーとエンジニア教育の双方に投資するデュポン社は、未来に向けた十全な競争力の維持を目指しており、先見の明に長けていると言えるでしょう。