Michelle Beauchemin 氏

Texas Instruments、インダストリアルエンジニア

Meg Hermes

弊社ユーザーレファレンスマネージャー

Texas Instruments(TI)は、米国を拠点とする大手半導体企業です。80,000 種類を超えるアナログチップと組み込みプロセッシングチップ製品を製造する TI は、世界で最もバラエティーに富んだ製品群を販売する企業の1つです。そして、社内における高い製造能力こそが同社の成長を数十年にわたって支えてきました。

インダストリアルエンジニアの Michelle Beauchemin 氏がプロセスエンジニアとしてTI に入社したのは2015 年でした。現在の職務のインダストリアルエンジニアリング部門に異動すると、同氏はメイン州サウスポートランドにある TI の工場で、統計ツールと自動化を活用すれば有意義な改善を実現できると気付きました。

以下のインタビューは、カリフォルニア州パームスプリングスで開催された 2023 年の「Discovery Summit Americas」で実施されたものです。

Meg:Texas Instrumentsに入社した初日から JMP を使っていたとおっしゃっていましたね。

Beauchemin 氏: 当時は、主にデータ探索や実験計画法 (DOE)を多少使う業務を行っていましたが、 JMP というソフトウェアのことや、それによってできることを完全に理解していたわけではありませんでした。私が本格的にJMPに向きあって学ぼうと決心したのは、約 1 年前にインダストリアルエンジニアリングの業務を担当することになった時でした。

その時は、取り組んでみたいプロジェクトがありました。生産能力モデルの一部を検証することです。当初は Microsoft Excel か TIBCO Spotfire で検証するしか選択肢がないようでしたが、どちらもうまくいきませんでした。その一方で、JMP はカスタマイズが可能で、そのプロジェクトに必要なあらゆるニーズに応えてくれました。

このようにJMP を利用する必要性とユースケースが揃ったので、私はさっそくそのプロジェクトに取り掛かることにしました。それ以降、Microsoft Excel を開かない日が何日もあります。これは1 年前には想像もできなかったことで、今はほとんどすべての分析を JMP に頼っています。

Meg:モデルの検証はどのように始めたのですか?

Beauchemin 氏: 私たちの生産能力モデル(現時点ではMicrosoft Excel のモデル)は、さまざまなツールの処理速度に基づいています。各ツールセットはさまざまなレシピを実行し、そのレシピごとに速度とスループットデータ(基本的には 1時間あたりに生産されるパーツ数)を保存します。これらのスループット値は、それがツール自体の劣化によるものであれ、意図的な変更によるものであれ、時間の経過とともに変化します。そのため、実際のプロセスの変化に合わせてモデルを最新の状態に保たないと、モデルの正確性が失われてしまいます。また、新しいレシピを追加して、その速度も記録しなければならない場合もあります。

基本的に、ありとあらゆる変更をすべて記録し、モデルの値が常に正しいか確認することは極めて困難です。そこで、各レシピのスループットを実際のプロセスの運用のなかで把握し、その情報をもとにレシピ別の分布をプロットすることで、時間の経過に伴う変動やデータセット全体の変動を確認できました。

平均的なパフォーマンスではなく、可能な限り最高のパフォーマンスでツールを捉えられるようにするためには、スループット検証プロセス中に大量の過去の処理データを含めることが重要ですし、モデルの他の部分では、非効率性もモデル化するようにしています。しかし、平均処理速度と既知の非効率性を組み合わせると、非効率性を二重にカウントすることになってしまいます。誤った実行や非標準の実行が含まれていないことを確認するには、常にある程度の手作業によるレビューが必要になります。そこで、まず各レシピを丹念に調べ、モデル化したいものの線引きをします。それからJSL でスクリプトを作成することで、データを整理し、結果をインタラクティブなダッシュボードに構築するプロセスを自動化することができました。JSLのスクリプトを数分かけてセットアップするだけで、どのツールセットに対してもこのプロセスを繰り返すことができるようになりました。

最初はこの検証を 1 つのツールセットで行ったところ、想像以上に他の場面でも使用できることが分かりました。スループットの向上に、思っていたほど多くのリソースを投入する必要はなかったのです。そして、私はプロセスエンジニアリングチームやインダストリアルエンジニアリングチームにそのことをデータを添えて伝えました。

スループット検証データを、説得力のあるJMPの可視化機能によって実証できたことは、数値の更新が持つ意味が大きかったので、本当にインパクトがありました。大勢の人を納得させなければならないので、特にこれは重要です。

Meg:そのような発見はビジネスにどのような影響を与えましたか?

Beauchemin 氏: 数値を更新する前は、急に生産能力が増えたツールセットに時間とリソースを割く必要を覚悟していました。ですが、経営陣の賛同を得て、スループット分析に基づきモデル化された生産能力を調整すれば、よりインパクトのある改善プロジェクトにリソースを割り当てられることになります。品質に影響を及ぼす可能性のあるプロセス変更を行う必要はなかったのです。

これは大きな決断でした。「この分析に基づけば、プロセスに変更を加えなくても、計画を予定通り実行する十分な生産能力がある」と自信を持って言える必要があったのです。

Meg:その決断に対する自信を経営陣に理解してもらうためにどのようなことをしましたか?

Beauchemin 氏: まず、そのツールセットを持つプロセスエンジニアやグループのマネージャーと分析を共有することから始めました。そのマネージャーは JMP の熱烈な支持者で、スクリプト記述に長けていて、非常にデータドリブンな人で、私が発表した内容に興味を持ってくれました。彼は、過去のプロセスデータから分析を構築することの価値を理解していたので、その意味では私の味方と言えるかもしれません。彼は、私が示した内容について「とても理にかなっていて実にすばらしい。ぜひ引き続き取り組むべきだ」と言ってくれました。

そこで、その言葉に勇気づけられて、彼のフィードバックに基づいて自分のアプローチを調整しました。例えば、ある時、そのマネージャーが決断を下す前に別の負荷パターンを確認したいと言ってきたので、そのデータをもとに数値を調整しました。

マネージャー本人がプロジェクトをサポートしてくれて、そればかりか、より多くの同僚に見せるよう勧めてくれたり、経営陣にプレゼンテーションする機会まで与えてくれたりことは、とてもありがたかったです。また、プロジェクトについて話した同僚たちが、この種の分析を他のツールセットで活用したり、他のさまざまな用途で利用したりするようにもなりました。

Meg:社内に理解し支援してくれる人がいることはとても重要ですね。そのような人がいるかいないかで、大きな違いが生まれるでしょう。

Beauchemin 氏: その通りです。私の仕事をさらに前へと進めるために、あらゆるレベルで経営陣がサポートしてくれたことは本当に心強かったです。彼らはすぐにその価値を理解し、サポートしてくれました。

Meg:誰もがうらやむような会社ですね!「わが社の幹部連中は頭が固すぎる」という声をよく耳にしますが、TI が社内のあらゆるレベルで分析の重要性を認識・実践していると聞くと嬉しくなります。それこそがイノベーションの原動力ですね。

Beauchemin 氏: 初めて分析を共有して以来、マネージャーたちから支持やサポートを得られたからこそ、私はこのプロジェクトに取り組み続け、進展させ、拡大していく時間と余裕を持つことができました。

それだけに留まらず、生産能力を評価する時期になると、他のツールセットについても分析を繰り返してほしいと何人かの同僚から頼まれるようになり、今では、「モデルを検証できるか?」と聞かれるようにもなりました。「このモデルは正しい」とか「このツールセットの生産能力を増やすためには何らかの行動を起こす必要がある」といった分析結果をチームに提示することで、みんなから信頼してもらえるのは本当に嬉しいですね。

私には視覚的に説得力をもって結論を裏付けられるデータがあり、プロセスに対する多少の自信も持ちあわせています。それなので、 JMP のグラフを見せさえすれば、社内では私の分析内容を信用してくれるはずです。このようにデータを共有することで信頼を獲得できるのです。

Meg:現在実施している大規模なモデル検証の最終目標は何ですか?また、それをどうやって達成する予定ですか?

Beauchemin 氏: 最終的な目標は、検証だけでなくモニタリングもできるようにすることです。

私以外の人も使える検証ツールを作らなければならないと考えています。というのも、現時点では私自身は問題なく使えても、自分が構築したからこそ分かる想定事項や把握できる不確実性があるかもしれないからです。他のユーザーが、どのポイントに注目し、どのポイントを除外し、その違いをどのように理解すればいいのかを特定できるようなツールを作りたいですね。

その後は、過去のデータを振り返る検証ではなく、スループットの変化が発生した場合にそれを検出するための継続的なモニタリングが中心になるでしょう。

Meg:受け身の「リアクティブ」な考え方から積極的な「プロアクティブ」な考え方への転換ですね。とてもエキサイティングですね。

Beauchemin 氏: そうですね。社内で賛同を得るために、実際にデモンストレーションできるツールを構築する時間があったことは、本当にラッキーだったと感じています。今となっては「これは君のプロジェクトだから、必要なときに自由に取り組んでくれ」といった具合に信頼されています。

それに、実際の取り組みにもやりがいを感じます。仕事で何かに取り組んでいるときに、ふと立ち止まって「これに取り組めるなんて信じられない。本当に楽しすぎる!何かおかしいのでは」と疑ってしまうこともあるほどです。でも、もちろんその後、「いや、これこそが私がやるべきことだ」と気づきますけどね。

Meg:まさに夢の仕事ですね。そしてその仕事に就けたのは、あなた自身がアイデアを思いつき、行動に移したからですね。素晴らしいサクセスストーリーです。きっと、他の人にとっても、データスキルをレベルアップさせ、統計の力を引き出せばどんなことが達成できるかを探るインスピレーションになるはずです。

Beauchemin 氏: そうなることを願っています。メイン州にあるTIの工場で 「JMP Inspire」イベントを開催した時に、私はイベントの企画に協力したのですが、その成果を持ち帰り、今度は自分の工場で「皆さんは、あちこちでちょっとしたプロジェクトに JMP を使っているようですね。でも、 JMP でもっと色々なことができることはご存知ですか?」と皆に知識を共有することができて、とても嬉しかったです。

私は、現場の同僚に、これまで JMP を使うことを考えてもいなかった業務にも使ってみるように勧めたいと考えています。数日間だけでも、Microsoft Excel を開かずに、すべて JMPで試してみてください。

それに加えて、JMP を使えばスクリプトの作成をとても簡単に始めることができる点も強調したいです。最初の一歩を踏み出して、スクリプトでどれだけのことができるかがわかれば、多くの可能性を広げることができます。だからこそ、他の人たちにも同じことを実感してもらえるよう勧めていきたいと思っています。

Meg:「JMP Inspire」 イベントの話が出ましたが、TI では他にも JMP のトレーニングの機会を提供していると思います。でも、トレーニングには多大な時間の投資が必要です。それにエンジニアの時間を費やす価値があるということを経営陣にどう説明しますか?

Beauchemin 氏: 弊社の経営陣は、すでに JMP による統計の活用を大いに支持しているので、特に無理矢理説得する必要はなく、「みんながワクワクするようなチャンスがあります」というようなニュアンスで伝えれば、意図を汲んでもらえるはずです。

私たちは、ただデータの可視化をするためだけであってもJMPを使うなど、さまざまな業務の場面でこの統計ソフトを活用しているので、既にその有用性が経営陣の目に留まりやすくなっています。そのため、JMPを学び、熟達し、新入社員がすぐに使いこなせるように、トップダウンで多くのサポートが提供されています。

この前の Discovery Summit では、「データリテラシーの文化の構築」について多くの話を聞きました。そして、弊社ではすでにこのような文化を構築できていると私は気づきました。むしろ、私たちが現在抱えている課題は、分析重視の文化を社内に根付かせることではなく、(社員それぞれの立場・地位にあわせた適切な統計知識)をどのように身につけるかということです。誰かが退職する時に、その人が持つ技術的知識が会社から失われるような事態を避けたいのです。

キャリアをスタートさせたばかりでは、人々がデータ分析について話しているのを聞いても、技術的な応用面について完全に理解できるわけではないでしょう。背後にある本質を理解することなく、バズワード(流行語)を繰り返すのは簡単なことです。だからこそ私は、データリテラシーの基礎となるような真の技術的知識を改めて社内で紹介することが、私たちの課題だと思っています。私自身、統計知識の習得は長い道のりだと感じていますが、Discovery Summitは、その道を歩み続けることがいかに重要であるかを明らかにしてくれました。

Meg:分析の熟練度は人それぞれです。人によってはずっと先に進んでいる人もいるかもしれませんが、だからといって課題がないわけではなく、人によって異なる課題があるだけです。

Beauchemin 氏: 企業によっては、統計のプロフェッショナルやデータアナリストがいて、その場で相談に乗ったり、実験の構築や結果の分析を手伝ってくれたりするようです。ですが、TI ではそういったアプローチは一切取っていません。弊社では、全員が自らの実験の計画と分析に責任を負うので、日常業務をこなすには、全員がデータ分析について基本的な理解レベルに到達していなければなりません。

だからといって、弊社に専門家がいないわけではありません。もちろんいます。質問がある場合には喜んで相談に応じサポートしてくれますが、そのために彼らは雇われているのではなく、実際にはプロセスエンジニアやプロセスマネージャーという肩書で、統計に関しても豊富な経験を持つ社員として勤務しています。

Meg:そうすることで組織全体の統計能力を高めているわけですね。

Beauchemin 氏: 私たちの職場では、データ分析を実施するにあたって 経営陣からのサポートがとても充実しています。そして、私も Discovery Summit に参加して学んだことを工場に持ち帰ることで、新しいことに挑戦する自信とサポートを同僚に提供し、分析文化の維持に貢献できればと考えています。JMP をさらに活用できるように同僚のモチベーションを高めることで、きっと素晴らしい結果に繋がるはずです。

Meg:今後、JMPを活用してどのような業務を行いたいですか?

Beauchemin 氏: 何といっても「自動化」でしょうか。私はまだJMPの「ワークフロービルダー」をあまり使ったことがありませんが、タスクを自動化したくてもスクリプトを書くのが苦手な人にとって、「ワークフロービルダー」は大いに役立つだろうと考えています。私たちは皆、手間をかけて分析を繰り返しているわけですが、「ワークフロービルダー」を使うことで、そのような作業を簡単に自動化できることに気づいていない人もまだまだ多くいます。

1 つのプロジェクトを自動化してみると、自動化できる他のすべての場所も見えてきて、とてもエキサイティングです。実際、私も今取り組んでいるモデル検証を自動化したときに、その感覚を味わいました。開始するやいなや、「大変だ。これまで取り組んできた他のプロジェクトでも今すぐ試さなければ」と慌てたことを覚えています。

Meg:どこからこれほどの情熱が湧き上がってくるのですか?こんなにエネルギッシュに仕事に取り組めるのはなぜでしょう?

Beauchemin 氏: 普私は、普段コーディングが大好きなのです。でも、それ以外では、工場に大きな情熱を注いでいます。私は(TIの工場) から南へ30分ほどのところで育ったので、車で幹線道路を走るたびに、その工場の看板を目にしていました。中学生の頃、サマーキャンプの工場見学があり、「ここで働きたい」と思いました。そして、今それが実現しています。

プロセスエンジニアリングの仕事をしていると、たとえば、「このロットを動かさなければ」とか、「この条件を満たさなければ」といった具合に、今起きていることに集中しすぎて、全体像が見えにくくなることがあります。しかし、インダストリアルエンジニアリングの部門に移ると、いかに自分がこの工場が好きなのか、その気持ちが再び戻ってきました。

ここで自分に確固たる役割があると感じられるのはとても刺激的で、この工場の素晴らしい未来への全体像を把握しつつ、自分がこの大きなコミュニティの一員であると感じられるのは素晴らしいことです。

Meg:とてもよく分かります。私も、JMP に対して、そしてデータを使った問題解決に情熱を持った人々が集まるコミュニティに対して、同じ気持ちを抱いています。

Beauchemin 氏: 先週、同僚と話していて、「パズルをやっていて楽しいのは、仕上がりの部分?それとも、ピースを試行錯誤しながら組み合わせる部分?」と聞いてみました。すると彼は、「仕上がりを見るのが好きだ」と答えました。

私の場合、パズルの仕上がりにはそれほど興味はありません。私はもともと探すことが好きで、小さなピースを見つけたときに得られる満足感がたまりません。それはコーディングに似ているのです。何かやりたいアイデアがあったときに、最初はほんの2、3行から始めるわけです。テストしてみて、もしかしたらうまくいかないかもしれない。でも、ちょっと修正してみると、うまく動くようになる。それは、プロセスのほんの一部に過ぎないのです。

私は、その過程での小さな発見や成功のひとつひとつに喜びを感じます。何かを生み出すプロセスは、最終的に出来上がる作品と同じくらいエキサイティングなものなのです。ですから、プロセスに参加でき、結果を共有して、それが何をもたらすかを見届けることができる自分は、本当に幸運だと感じています。