ユーザー事例
実験計画法の活用で製造プロセスをスピーディーに改良
JMPの「カスタム計画」によってバイオリアクターの収率を最適化
Lonza
課題 | 製品を迅速に市場投入するための新たな製造プロセスの開発が、製造業社にとって喫緊の課題であった。 |
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ソリューション | Lonzaの科学者は、プロセスの最適化と研究開発に統計的アプローチを導入。JMP®のインタラクティブな可視化と「カスタム計画」プラットフォームによって、高度な実験計画法(DOE)を業務に活用できるようになった。 |
結果 | Lonzaのチームは結果的に全体の収率を倍近く向上させ、短期間に成果を出すのが困難な課題にも関わらず、驚くべき成果を上げることができた。「社員ばかりか顧客からも大変好意的なフィードバックを得られ、大満足な結果でした」とプロセスエキスパートのAndreas Trautmann氏。 |
パンデミックのさなか、世界中でワクチン開発が急ピッチで進められ、各国の製造業者はワクチン候補の臨床試験と技術移転を同時に行うという、サプライチェーンにおける緊急かつ重大な課題に直面することになりました。
現代史上、市場投入までの時間短縮化がこれほど重要な意味を持ったことは極めて稀で、迅速かつ革新的な製造プロセスを構築することの重要性に注目が集まっています。
スイスの総合ヘルスケア・ソリューションプロバイダーであるLonzaは、ワクチン、モノクローナル抗体、その他のバイオ医薬品から、薬物複合体、ペプチド、非経口剤形を必要とする分子まで、あらゆるもののバッチ生産を加速するために、豊富に有するグローバルな製造専門知識を駆使しています。
迅速なスケールアップを得意とする同社は、長年にわたり、プロセスを最適化し、製品の品質と安全性を確保し、収率を向上させる最先端の手法をパートナーに提供してきました。
Lonzaにおける真のイノベーションは、統計的アプローチを駆使するやり方にあります。これをプロセスエキスパートのAndreas Trautmann氏は、「最適化を繰り返す」と説明しています。
最適化を繰り返す
バイオプロセス工学の分野では、「最適化」とは細胞培養バイオリアクター内の生成物の濃度を高めることを意味し、それによって生成物の頑健性を維持しながら全体的な収率が向上します。
これは段階的な改善であっても非常に価値があり、顧客は時間とコストの両方を節約することができます。Lonzaは、同様のプロセスでさまざまな製品を製造し、時間をかけてこうした効率性を深いプロセス知識へと育て上げ、そこからの恩恵をすべての新製品ラインに反映しています。
スイスのフィスプに設置された、製造科学技術部門における上流工程プロセスエキスパートとして、Trautmann氏は研究室での製品開発から市場投入までをサポートしています。
製造規模の拡大は、基本的に既存の知識に基づいてなされます。「取り組むプロジェクトの数が増えて、それらのプロセス等で統計ツールを使えば使うほど、実験に関する知識は増えます」と同氏は述べます。しかし、一部のプロセスはゼロから計画する必要があるのです。
最近の特筆すべきプロジェクトの一例を挙げましょう。Trautmann氏と彼のチームは、同社の標準的バイオリアクターの製造プロセスよりも、新しいものの設計を命じられ、厳しいスケジュール上の制約の下でそれを実行しました。品質を維持しながらプロセス設計を迅速に進めるには、実験計画に対する高度に戦略的なアプローチが不可欠でした。
「JMPを使ったことのある方には当たり前のことかもしれませんが、JMPの『実験計画(DOE)』プラットフォームは、とりわけ(このケースで)非常に役立ちました。取り組み中のプロセスでは、多くのパラメータが未知であることが多いため、研究開発グループではJMPを重宝しています」とTrautmann氏。
JMP®の「カスタム計画」で収率がほぼ倍増
実験計画法(DOE)では、統計モデルで実験条件を設定することで、目的とする結果を得るために必要な実験回数を減らすことができます。JMPの「カスタム計画」では、ユーザーは実験回数に応じて、推定が必要な効果と、可能であれば推定する効果を指定できます。また、予算にあわせて、実験回数を指定することもできます。
JMPの導入によって、因子を一度に1つずつテストする従来的なやり方よりも効率的で戦略的なアプローチを迅速に実行できるようになったとTrautmann氏は言います。
「JMPは比類なき統計ツールで、非常に業務に役立っています。因子を1つずつ調査するよりも、一度に複数の因子を調査する方がはるかに効率的だからです。JMPの『カスタム計画』のおかげで、時間を大幅に節約できました」と同氏。
Trautmann氏によれば、研究チームが小規模リアクター用に開発した新プロセスの場合、実験計画法(DOE)を利用することで、生成物濃度(もしくは全体の収率)をほぼ倍に高められたといいます。
同様のシナリオで科学者がまったく成果を上げられないこともあることを考えれば、これは驚異的な成果です。「社員ばかりか顧客からも大変好意的なフィードバックを得られ、大満足な結果でした」と同氏は述べています。
このプロジェクトでは、収率の改善ばかりか、大幅な時間短縮も達成しました。チームは実験を24回実施し、それぞれの時間を短縮できたので、全体として大幅な時間節約につながりました。
「JMPのカスタム計画でなければ、因子の調査に少なくとも倍の時間がかかったでしょう。2週間どころか、少なくとも4週間はかかったはずです」とTrautmann氏は説明します。
「カスタム計画」で生成されたモデルは、柔軟であるだけでなく効率的でした。24回の実験の実施のうち3回は不成功だったものの、特性付けられた範囲での出力変数を正確に予測することができました。そのため、Trautmann氏のチームは、特に実験の追加や削除などにおいて標準的な実験計画よりも柔軟性が高いことから、他のツールではなくJMPの「カスタム計画」を好んで使っています。この柔軟性により、同氏のチームは実験状況の変化に応じて調整していくことができます。
「私たちは、小規模バイオリアクターでの実験の設計、計画、評価に最初からJMPを使用しました。その後、中規模のバイオリアクターでも実験を実施し、今年中には生産規模に移行できる予定です。実験室の小さなリアクターから生まれた非常に新しいプロセスが最終的に製造過程に導入されることは、そうあることではないので、これは非常にすばらしい成功だと言えます」と同氏は説明しています。
- What factors increase reactions within a chemical reactor?This design of experiment (DOE) explores the factors that go into increasing reaction within a chemical reactor.
- What factors go into making a strong cup of coffee?This design of experiment (DOE) explores the factors that go into making a strong cup of coffee.
実験計画法の神髄:可視化とデータ探索
Trautmann氏がプロセス最適化に役立つと考えるJMPの機能は、「実験計画」プラットフォームだけではありません。データ探索とグラフ機能も極めて効果的であり、他の方法では見逃される可能性のあるデータ内の交互作用を明らかにすることができます。
「優れたデータ探索を行えるのがJMPの長所です。データを探索し、評価することで初めて気づく交互作用はかなりあります。データテーブルを目で見るだけでは、データの違いや重要な点を見落としてしまいがちです」と同氏は述べています。
「たとえば、データクラウドを生成して因子間に交互作用があるかどうかを確認したり、ヒストグラムを作成してデータセットのなかで幾つかのデータがどのように分布しているのかを確認できます」と同氏。
また、JMPはデータの可視化に優れているため、データの質をすぐに評価でき、それが「実験計画」プラットフォームをさらに有用にしています。
オンライン統計コース「STIPS」で社内の統計スキルを向上
多くの企業同様、Lonzaでもさまざまな形式のトレーニングを導入して、科学者やエンジニアに統計手法を習得してもらっています。そして、JMPで大きな成果が上がったことから、同社の多くの従業員は、さまざまな業種やアカデミック向けにJMPが制作した無料オンライン統計コース「Statistical Thinking for Industrial Problem Solving(STIPS)」を受講しています。
STIPSは6つのモジュールに分かれており、幾つかの業種に対応したさまざまな統計およびデータ分析のコンテンツを利用可能です。このコースはTrautmann氏のチームでも好評で、統計知識やJMPの使用経験がない同僚でも、自身の仕事に統計手法を取り入れられるようになりました。
「STIPSは非常に優れたコースです。重要な情報がふんだんに盛り込まれたオンラインコースであるのに、簡単で理解しやすく、とても満足しています」とTrautmann氏。
JMPをそれなりの期間使用してきた同氏でさえ、このコースのおかげで管理図や工程能力などの品質管理についての理解が深まり、現在では、さらに積極的にこれらの知識を活用し、業務に役立てているとのことでした。