NXPは世界有数の半導体メーカーです。オランダのアイントホーフェンに本社があるNXPは、30か国以上で事業を展開しており、ハイテク製造における60年の豊富な経験と専門知識を有しています。
ユーザー事例
半導体製造を劇的に効率化する実験計画法:
統計ソフトによるデータ分析・活用でモビリティ業界の未来を拓く
自動車業界で車載半導体チップの重要性が高まるなか、世界的半導体メーカーのNXP Semiconductorsはチップ製造を統計ソフトで最適化。
NXP Semiconductors
課題 | 大きな変革の渦中にある自動車業界で、新しい半導体ソリューションの設計、テスト、製造を行う必要があった。 |
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ソリューション | JMP Proの高度な解析機能により、半導体チップのテストおよび製造プロセスを変革。 |
結果 | JMP Proは、ソリューション設計、製造、シックスシグマ・トレーニング、その他プロセス改善に向けた取り組みを大きく改善し、NXPが市場の最前線に立ち続けるのを強力にサポート。 |
自動車やトラックは、今後10年で劇的に進化するでしょう。その進化は過去に類を見ないほど素早く、本質的な変化になりえます。業界がよりクリーンな代替動力に移行し、インターネットへのコネクティビティが向上し、自動運転車の研究が進むにつれて、より多様で、より高性能なハードウェアとソフトウェアが必要になります。そして、その中心となるのが半導体チップであり、NXP Semiconductorsなのです。
NXPは、コネクテッドカーに使用される組み込みアプリケーションなどの、いわゆる「コネクティビティ・ソリューション」における世界的リーダーです。同社は、オランダのアイントホーフェンに本社があり、31,000人の従業員が30カ国以上の顧客にサービスを提供、95億米ドルの年間売上があります。同社は、自動車、産業目的、IoT(モノのインターネット)の主要3分野における半導体の利用に注力しており、車載半導体、マイクロコントローラ、車内インターネット環境およびエンターテイメント、安全性(車両へのアクセス、エアバッグやレーダーなどの安全機能)で市場トップの地位を確立しています。
「自動車におけるエレクトロニクスの必要性はますます高まっています」と説明するのは、NXPの構造化問題解決部門でリスクアセスメント、統計、安全分析を管理し、ヨーロッパ、中東、アフリカ全域でシックスシグマと根本原因問題解決(RCPS)トレーニングを指導しているCorinne Bergès博士です。「半導体の搭載されていない自動車など、今では想像すらできないですね」と同氏。
しかし、NXPが業界をリードし続けるためには、半導体ソリューションをこれまで以上に速く、効率的に、精密に設計・製造する必要があります。そして、この目標を達成するためには、製造とテストのプロセスを継続的に改善しなければなりません。
分析の核心となるデータ駆動型アプローチ
半導体の設計と製造において、大切なのはデータです。データ駆動型のアプローチは、NXPおよびそのパートナーの製造サイクルのあらゆる局面やプロセスの継続的改善に採用されています。そして時に、得られた豊富なデータは、チャンスと同時に課題にもなり得ます。「データが多ければ多いほど、それらを相互に関連付けることが可能になり、より多くの情報を引き出すことができます」とBergès博士は述べます。
その一方で、テストの実施の際などに生じる膨大なデータの効果的な管理が課題です。半導体チップの製造業者は、チップを組み込むデバイスの故障が見込まれる限界を特定したり、プロセスのばらつきを制御したりするために、さまざまなパラメータや環境条件で製品をテストし、その過程で膨大な数のデータポイントが生成されます。「適切なツールで分析しなければ、データには価値がありません。だから、最新の最も革新的な統計ツールを使用してデータを扱う必要があります。そして、JMP Proはまさにこのようなニーズを満たす、イノベーティブで効果的なツールです」とBergès博士は指摘します。
具体的には、JMP Proは、データの可視化と分析の両方に役立ちます。「製品エンジニアはデータ可視化の恩恵を受けています」とBergès博士。というのも、データ列とにらめっこするよりも画像をひと目見る方が、はるかに素早く内容を理解でき、エンジニアは外れ値や相関関係、その他の問題をすぐに見つけることができるのです。 また、JMPのインタラクティブな可視化機能によって、NXPのエンジニアやオペレーターは単変量解析から多変量解析まで統計能力を高めることもできたとBergès博士は言います。
「過去に多くのテストを実施しましたが、可視化や単変量解析においては、一度に一回ずつしかテストを実施できませんでしたし、たった一回のテストで首尾よく進めることは今は不可能です」とBergès博士は述べます。そのため、多変量解析の実験用にデータを相関させる必要があります。「この種の分析には、高度な統計知識と統計手法が必要なのです」とBergès博士。JMP Proを利用する大きな理由です。
JMPの「実験計画(DOE)」で工程の弱点を克服
JMPは分析に携わる幅広い方々の役に立ちますが、さらにJMP Proでは、科学者やエンジニア向けの予測モデリング、交差検証などの、より高度な機能が追加されています。NXPがJMP Proを用いる重要な業務の1つに、車載用半導体の 「コーナーロット 」における製造工程のばらつき調査があります。
半導体チップ製造において「コーナーロット」とは、実験計画法(DOE)を使って、製造パラメータの極端な値をテストする技法で、回路設計の品質を検証するために、チップメーカーはコーナーロット、つまりプロセスパラメータを極端な値に設定した半導体ウェハーセットを製造し、これらのウェハーから作られたデバイスを、電圧や温度などさまざまな環境条件下でテストして動作限界を特定します。NXPは新しい半導体を開発する際、このコーナーロット・アプローチを使用して、製造中に発生する可能性のあるばらつきを包括的に分析することで、製造工程における技術的な弱点を特定し、修正できるのです。
「従来のコーナーロット・アプローチでは、自動車用バルブドライバーコンポーネントに最大で75を超えるエンジニアリング・ロットを使用し、各パラメータが個別に評価されており、パラメータ間の交互作用を評価しないという点で限界がありました」とBerges博士は指摘します。ですが、JMP Proを使用することで、1つのロットの実際のコーナーポイントの評価が可能になり、その結果、NXPではクラスプローブパラメータのばらつきを制御し、新しい統計手法により収率のモデリングと予測も生成できるようになりました。
欠陥のない製造への道のり
Bergès博士は、プロセス改善と問題解決のための技術やツールとして知られるシックスシグマのブラックベルトを獲得しており、NXPの世界中の部門とサプライヤーに、シックスシグマとRCPSのトレーニングやコーチングを提供しています。そのため、シックスシグマとRCPSは、博士にとっても会社にとっても不可欠な存在となっています。NXP社員のおよそ3,300人が、ホワイト、イエロー、グリーン、ブラック、そしてマスターブラックベルトの認定を受けています。
そして、同社では、シックスシグマの実践にJMP Proが不可欠です。「まず、イエローベルトのカリキュラムでは、分布や標準偏差などの基本概念について学び、次の段階のグリーンベルトとブラックベルトのトレーニングでは、統計に関してさらに多くを学ぶことになります。そして、弊社が実施する最高のトレーニングはJMP Proで行われています」とBergès博士。
NXPでは、分散分析(ANOVA)、回帰分析、カスタム計画、発展的なスクリーニング計画、測定システム分析、信頼性分析など、さまざまなシックスシグマ研修でJMP Proを使用しています。「こういった研修は、3年前に始まりました。そして今では、社内でグリーンベルトやブラックベルトを目指す社員のほとんどがこの研修を履修しています」とBergès博士は語ります。
同社のシックスシグマ・トレーニングでは、e-DMAIC(elimination [消去] Define [定義]、Measure [測定]、Anaylyze [分析]、Improve [改善]、Control [制御] の略)と呼ばれる、プロセス品質を向上させるためのデータ駆動型アプローチについても学びます。というのも、e-DMAICはシックスシグマの核だからです。「グリーンベルトを取得するには、e-DMAICに沿った改善プロジェクトの達成が必要です。そして、このプロジェクトはマネジメント層によって検証され、スコアカード評価されます。これにより、得られた知識が現実世界の課題に実際に適用できることが保証されるのです」とBergès博士は説明します。
DMAICは構造化された問題解決フレームワークとしてよく知られていますが、先頭についている文字「e」は、実際のマインドセットとなり得る根本原因の除去を指します。このDMAICの改良版は、NXPとトヨタの共同研究から生まれ、品質レベルを向上させ続けています。このような「品質」への意識の高さは社内どこででも見受けられ、NXPが重視する「トータルクオリティ」の中核となっています。
業界を牽引し、お客さまに価値を届ける
NXPでは、JMP Proをどのように業務に活用しているのでしょうか。「当初、Minitabを使っていたのですが、JMPに乗り換えることにしました」とBergès博士は当時を振り返ります。「エンジニアの大多数は、互換性が高く、使いやすいのでJMPを選んでいます。もはやJMPは分析に手放せないツールです」と同氏。現在、同社では1,600人近くのデータ専門家がJMPを日々利用しています。
同氏が言及するJMP Proの大きな利点の1つは、高度な統計実践者であれ、エンジニアであれ、初心者レベルの統計トレーニングを受けるだけで、JMPを効果的に使用できる点です。「Minitabで有意義な分析を行うには、かなりの統計知識が必要です。その一方、JMPは極めて直感的に操作できるので、誰でも分析が可能です」とBergès博士。そして、もう1つの明白なメリットは、JMP Proによって効率よくテストを実施し、プロセスを最適化できるという点です。「わずか1、2回のクリックで、望むままに正確かつ充実した統計分析を行えます。そのため、大量のデータ処理の際にはPythonを使いますが、プログラミングをしないで素早く結果を出したい時は、JMP Proが断然優れています」と同氏。
半導体の設計とテストをJMP Proで最適化できる。NXPが市場の最前線に立ち続ける秘訣の1つです。自動車業界における変化の速さは驚くばかりです。そのような厳しい環境下にあってもNXPが新しいソリューションを迅速かつ確実に設計および製造できるのは、他社との大変大きな差別化要因になります。そしてまた、これからはBergès博士が指摘するように「JMP Pro(のような統計ソフト)が必携のツール」になってくるのかもしれません。