ユーザー事例
P&Gのたゆまぬイノベーションを支えるアナリティクスの力
定量的科学者による統計の活用でP&Gの大ヒット商品群がより魅力あるものに

チャレンジ
洗剤とパーソナル ケア製品における、科学技術の限界を 日々追求する難しさ。
解決策
まず、組織全体に 分析の文化を浸透させた。また、JMPの「実験計画法」を用いて、データ中心のアプローチで 実験を実施、 品質向上とコスト削減を実現。
結果
P&Gのたゆまぬ改善を追求する文化を示す好例となった。
Procter & Gamble (P&G)は、 約200年前に設立されました。石鹸や蝋燭の製造から始まった小さな会社は、今や世界最大かつ最も収益性の高い 消費財メーカーに成長しています。同社の製品群には、ジレット、バウンティ、パンパースなど、60 を超える象徴的なブランドが含まれています。消費財のような変化が激しく、競争の厳しい 業界では、このような成功 は極めて例外的なものであり、決して簡単に成し遂げられるものではありません。
「一般の消費者は、パーソナルケア製品やクリーニング製品の研究開発が、高度に専門的な知識を 必要とするものであることを あまり意識していないようです」とP&Gの定量的 科学部門の統計担当者であるBeatrice Blum氏は言います。彼らは商品を見て、良い品か否かを判断します。「私たちの目標は、 定量的なアプローチを用いて、消費者のニーズを満たすだけでなく、世界中の消費者の生活を 向上させる優れた製品、すなわち『勝てる 製品』を開発することです」とBlum氏。



あらゆる製品開発に統計は必須
P&Gが 看板商品で大成功している理由は何でしょうか。Blum氏は、データに基づいた意思決定が高品質な製品の生産に 重要だと言います。データから洞察を最大限に引き出すことで、P&Gは、 時間とコストを削減し、 消費者の期待に沿う製品設計を実現するなど、より効率的に業務を進めています。その結果、リソースはさらに広がり、製品は 高い品質基準に適合しています。
Blum氏自身も ドイツでP&Gの研究開発機能をサポートし、さまざまな事業分野のニーズに 応えています。「私は、製造工場から設計、 工程改善まで、エンジニアとコマーシャルワークの両方を サポートしています。というのは、製品の改良だけでなく、 データの見方や集め方、 すでに使っている手法の改良も行わなければならないからです」と同氏は言います。
「数年前までは、収集されたデータの多くが 活用されていませんでした。データが不適切に収集された場合、それを 分析して、そこから結論を導いたりすることは極めて困難です」と同氏は指摘します。ですが、現在では定量的 科学の専門家であるBlum氏と同僚たちが、その状況を一変させました。「私たちは、すでに存在するデータを 客観的に別の角度から見ることができるようにしました。今日のP&Gでは、 あらゆる製品開発に統計は必須です。収集されたデータには必ず、 そのデータ収集プログラムに割り当てられた統計学者がいて、データを調べています」とBlum氏。

原材料から最終 消費者までの製品およびプロセスデータへの 全体的なアプローチ
P&Gの統計担当者は、消費者や官能評価パネルによるテストから、安定性・信頼性テスト、 製品の 保管寿命を調べる加速実験まで、さまざまなデータ セットを利用しています。しかも、そのデータセットの利用は、すべて標準的な実験室でのテストに加えて行われます。オムツを 例に採ってみましょう。「私たちは、さまざまな種類のデータを持っています」とBlum氏。「たとえば、 吸水性のテストや、液体がオムツの層間でどのように染み渡るかをテストすることもあります。また、 おむつの生産ラインのテストを行い、適宜パラメータを設定しています。そして、生産工程に入る前に 素材のテストも行います。 供給されたものだけでなく、自社の製造プロセスとプリタイプも確認した上で、 すべての部品が揃うのです」と同氏は説明します。
P&Gが他社と違うのは、 こうした実験がすべて慎重にデザインされており、Blum氏とその同僚は、 無駄な実験を排除して、 ビジネスに対する洞察をもたらす有意義で実用的なデータを収集できる点にあります。より少ない(しかし戦略的に収集された)データで、より多くのことを行うことには、大きな インパクトがあります。「膨大な数の データセットの仮面の裏側には、多くの情報が隠されているのです」とBlum氏は言います。そこで、最適計画に基づく実験計画法(DOE)用いれば、チームは 優先事項に集中し、 各部門が研究に費やすリソースを最適化できるようになります。
「実験計画法(DOE)は、 社内でますます大きな役割を果たすようになりました」とBlum氏。「大規模な消費者調査をする予算の余裕があれば、 大抵の場合は答えを得られるはずです。しかし、今ではほとんどの部門が、 より効率的に資源を使うことを好みます。そこで、最適計画に基づく実験計画法(DOE)を用いると、 企業にとってコストが大きく異なるさまざまなソリューションが存在することに気づくかもしれません。その上で、最適と思われるソリューションが 2つ、3つある場合は、より安いものを選べばいいのです。このような選択肢を与えてくれるのは、 実験計画法(DOE)だけです。そのため、すべてのステップで、 可能な限り実験計画法(DOE)を使うようにしています」とBlum氏は語ります。

JMP®を用いた洗練された実験が、短時間でより多くの知見の獲得を可能に
P&GがJMPを採用する前から、 「JMPの実験計画(DOE)プラットフォームが 優れていることは知っていました」とBlum氏は言います。同部門において比較的早い段階でJMPを使っていた人々は、JMPを使用して、ラボ全体で役立つカスタム スクリプトを開発していました。「機器から得られたデータを、JMPで 1クリックするだけで結果が得られました」とBlum氏。
Blum氏自身もすぐに、JMPを使って ますます複雑な解析を行うようになりました。「JMPには 強力で実用的なインターフェースが搭載されており、誰でもグラフビルダーで直感的にデータを描画できます。 データが構造化されてさえいれば、分析開始前の段階で既に、グラフビルダーで作成したグラフを見れば、 だいたい何を発見できるかが分かります。私は、 この点を非常に気に入っています」とBlum氏は言います。
Blum氏は、P&Gのようにハイパフォーマンスチームの中核をなすのが、多様な経歴や 経験を持つ人材である企業にとって、JMPは経歴や経験の多様性から生まれるギャップを埋めるのに 役立っていると語ります。「P&Gでは真の意味で多様性を受け容れ、 コンピューターサイエンスや機械学習の 専門家など、さまざまな分野の従業員の視点を取り入れることにしています。もし、全員が同じ問題に目を向ければ、 データから読み取れるものをもとに、事実が何で、どのように改善できるのかをよりよく 理解できるようになるでしょう」とBlum氏。それはすなわち、統計担当者とエンジニアの橋渡しをすることであり、現場で働く 人と重役の間のギャップを埋めることを意味します。
「可視化こそすべてのカギです。というのも、 特にマネジメント層は視覚的に理解しやすい資料を好むからです。彼らは数字で説明されることを望んでいません。数字の代わりにストーリーで説得するのが効果的です。細かい内容を含む 必要はなく、 結論に至るストーリーがあれば十分なのです。この点、JMPはインタラクティブで見て理解しやすいグラフを出力できるのが大きな強みなので、とても役立つツールです」とBlum氏。

社内文化の変化が体現するP&Gのブランド価値
統計学に基づく戦略は、 他のビジネスアプリケーションにも応用されつつあります。Blum氏は、「テキストマイニングによって非構造化データから洞察を得る方法が 次々と見つかっています。たとえば、 以前とは異なり、今では特許や消費者のコメントの分析にテキストマイニングを活用することで、すべてを読む必要がなくなりました。 また、かつてマーケティング部門 は市場調査にしか興味がなかったのですが、 今ではさまざまな観点から分析できるようになりました」と説明します。そして、同じような良い変化が、P&Gのサプライ チェーンマネージャーについても生じています。
イノベーションを志向する定量的な 考察法が、P&Gで重要な役割を担っていることは間違いありません。「社内のカルチャーが 変わるのを見るのは楽しいです。P&Gは継続的に改善を行い、前進しています。 そこにルーチンはありません。繰り返しの業務もありません。学び続けるのがP&Gの文化なのです」とBlum氏。
「 以前は不可能だったことを達成できるようになったのは、収集されたデータの分析から、貴重な洞察というものが得られるという 事実を社内の多くの人が知るようになったからなのです」とBlum氏は締めくくりました。