「大学でカリキュラムを検討する際に、“まず体験してもらう”という視点で選ぶなら、プログラミング不要で使える専用ソフトウェアであるJMPの役割は大きいと考えています」
滋賀大学データサイエンス学部 教授
清水 昌平氏
課題 | データサイエンスに興味のある学生に、早い時期から演習や課題解決に取り組んでもらう必要性があった。 |
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ソリューション | 対話的で操作性に優れたJMPを演習に採用。それまでに習得した知識を実践に移す機会と環境を提供。 |
結果 | 短期間でJMPの操作を習得、学生のほぼ全員がそれぞれのテーマのデータ分析と各自の発表を成功させ、実りある演習となった。 |
滋賀大学データサイエンス学部において、学生が専用ソフトウェアとデータを使って統計手法を初めて実践する場になるのは、2回生の前期に演習形式で行われる講座だ。学生は、1回生時に座学で学んだ手法を実践し、独自のテーマを設定して発表を行う。学ぶソフトウェアの1つがJMP。個人のPCにインストールして使えるため、自宅でのレポート作成に使用することも可能だ。
滋賀大学は、2017年に日本で初めてのデータサイエンス学部を開設。2019年にはデータサイエンス研究科も設け、データサイエンスに精通した人材であるデータサイエンティストの育成に取り組んでいる。1学年の学生数は約100人。統計学や情報学などの研究者が彼らを指導する。開設から4年を経た現在(2021年現在)、卒業生は理系文系のどちらの素養も備えた人材として、高い評価を受けている。
学生は、入学直後の1回生から統計解析手法の座学を中心にデータサイエンスを学ぶ。彼らが初めて本格的にデータサイエンスを実践するのが、2回生の前期に実施される演習講座だ。この講座を担当する滋賀大学データサイエンス学部教授 清水 昌平氏は、「1回生の後期にExcelでデータ分析をする講座はあるのですが、専用ソフトウェアを使えばより高度なことができるということを実感してもらうために、この講座を設けています」と話す。
使うソフトウェアは、2つ。そのうちの1つがJMPだ。プログラミングをすることなく、統計手法を用いた分析をできる。講座では、まずJMPの操作方法を学ぶ。学生は、1回生で記述統計やクロス集計だけでなく、検定や回帰の知識も頭に入れている。説明変数を複数使う重回帰分析まで座学で学んでおり、この講座を受講した学生は、学んだ統計手法をJMPで使えるようになる。
「授業を聞いて頭に入れるより、実践できて楽しいと好評です。当初は2回生の後期に置いていたのですが、データサイエンスを学びたいと考えて入学してきた学生たちに少しでも早く演習させた方が良いのではないかと考え、2021年度から前期に移しました」(清水氏)
早くデータ解析を行ってみたいけれど、いきなりプログラミングを実践せよと言われるとハードルは高い、と感じている学生にぴったりだ。清水氏は、「学生には、広く、浅く、まず知ることから始めてもらいたいのです。ですから、道具としての専用ソフトウェアを一通り学べるカリキュラムとしています」と話す。
ITエンジニア志望の学生も少なくないが、データ解析の経験を経てコンサルタントや、企業内のデータサイエンティストを目指す学生も多い。「業務の一環としてデータサイエンスを使うのであれば、全員が必ずしもR、Pythonのエキスパートになる必要はありません」(清水氏)。実際に、インターン先でJMPを使う機会のあった学生や、就職先でJMPを頻繁に使っている卒業生もいるという。
「大学でカリキュラムを検討する際に、“まず体験してもらう”という視点で選ぶなら、プログラミング不要で使える専用ソフトウェアであるJMPの役割は大きいと考えています」
滋賀大学データサイエンス学部 教授
清水 昌平氏
講座の後半は個別発表になる。ソフトウェアを使って学生が自ら設定したテーマの分析を行い、全員の前でその結果を披露する。学生がレポートを準備する際にJMPの利用形態が便利だという。
具体的には、JMPは、個々のPCにインストールするソフトウェアなので、オフラインでも使うことができる。そのためコロナ禍におけるリモート授業や在宅での作業が中心でも、ネットワーク環境などの影響をうけず使用できる強みがある。一方、他のソフトウェアは、大学のサーバにVPNで接続しなければ使えない。結果として、発表にはJMPを選択した学生の方が多くなったようだ。
「コロナ禍でリモート授業になり、講義が終わると情報センターへ立ち寄って作業するという流れができなくなりました。学生が個人のPCにインストールして卒業までずっと使えるという点は大きな魅力になっています」(清水氏)
学生は、自らデータを集め、自由にテーマを決めてレポートを書き、発表する。政府統計を使ったり、気象データを使って地元と彦根市の気温を比較したりするレポートなどが多いものの、中には競馬、スポーツやゲームの分析結果を発表する学生もいる。「コーヒーが好きなので、自分でデータを取ってコーヒーの味について分析をしました、という学生もいました。日常にデータサイエンスを取り入れるという視点はとても大切で、うれしい発表でした」(清水氏)
調べたいことはあっても、データが手に入らないこともある。そのようなときは、完璧な結果を得られなくはなるが、別のデータで代用するという方法もある。発表の完成度だけでなく、そうした思考プロセスを発表内容に加えるなど、取り組もうとする姿勢も評価するようにしているという。
清水氏は、数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムの教材分科会主査としても活動し、モデルカリキュラムに基づいた教材作成にもかかわっている。「公的なコンソーシアムのため、商用ソフトの名前を入れにくい現状があるのですが、JMPは受験科目に数学がなかった学生に適していると考えています。Pythonを勉強してから解析しましょう、では時間がかかりすぎます。大学でカリキュラムを検討する際に、“まず体験してもらう”という視点で選ぶなら、プログラミング不要で使える専用ソフトウェアであるJMPの役割は大きいと考えています」と話してくれた。
JMPは、さまざまなタイプの学生に、講座をとおして、データの重要さや解析の面白さを実感してもらうことの一端を担っている。