厳しい市場環境の中で、競争力を高める武器としてJMPを全社に浸透させ、データ解析を軸としたプロセス改善で顧客満足の最大化を追求していきます
赤間善昭氏
株式会社東芝
イノベーション推進本部 イノベーション推進部 プロジェクト推進室 経営変革上席エキスパート
チャレンジ | 社内標準で使用していた統計解析ツールでは効率的な実験計画を作成・遂行できなかった。また、実験にかかるコストや時間を削減することも求められた。 |
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解決策 | デスクトップ環境で基本統計や複雑な多変量解析を含むあらゆる統計手法を使用できる。 |
結果 | カスタム計画機能を使って目的に合わせた精度の高い解析モデルを構築し、実験回数を大幅に削減。 |
株式会社東芝(以下、東芝)は顧客の声をもとに経営の本質的な課題を抽出し、各ビジネスユニット、および社員がデータに基づいて業務プロセスの改善を進めるイノベーション活動を全社で展開している。研究者・技術開発者は実験計画の質を向上させ、実験回数を大幅に削減するためにJMPを活用している。多くの社員がトレーニングを終え、JMPを業務に活用している。HOPEと呼ばれるロバスト設計手法を製品開発に組み込むための中核ツールとしてもJMPを活用する計画だ。
デジタルプロダクツ、電子デバイス、社会インフラシステム、家庭電器の4つの分野で幅広く事業を展開する東芝は、事業の選択と集中で成長分野へのシフトを 加速すること、成長が見込まれる新興国を中心とした海外比率を高めることの両輪で経営戦略を進め、グローバルトップの複合電機メーカーになることを目指し ている。同社は1999年4月に、各事業において個々のマーケットに最も適合した体制を構築することを目的として社内カンパニー制を導入。これに伴い、各 カンパニー間を横串でつなぎ、経営層の指示をトップダウンで全社に伝達し各業務分野でイノベーションが次々に起こるような企業文化を創造する役割を担うイ ノベーション推進本部を設置した。
同社、イノベーション推進本部イノベーション推進部プロジェクト推進室経営変革上席エキスパート赤間善昭氏は、「われわれは1999年からシックスシグマ の手法をベースとしたイノベーション活動を全社で展開しています。これは顧客の声をもとに経営の本質的な課題を抽出し、各ビジネスユニット、および社員が データに基づいて業務プロセスの改善を進める経営変革プログラム。研究開発や設計製造などの複数の業務分野でイノベーションを創出し、経営品質の向上と競 争力の強化をめざす取り組みです」と語る。
各社員がデータ解析の結果を検証しながらプロセス改善を進めるMI(ManagementInnovation)の推進にあたり、同社は社内標準で使用す る統計解析ツールの運用を開始。統計的手法を活用した課題解決力の養成を目的としたトレーニングコースの受講を社員に義務づけてきた。赤間氏は、「私は、 長く研究員として、実験計画をもとに製品の品質に影響するプロセス変数や製品変数などの因子を体系的に調査し、製造プロセス上の欠陥を識別・除去する業務 に携わってきました。その際に、当時利用していた統計解析ツールに限界を感じたのです」と話す。
実験計画は、製品の品質に影響を及ぼすすべての因子を用いて、その水準の最適な組みあわせを、合理的かつ効率的な実験を通じて検討するために作成される。 実験回数が増えれば、それに比例してコストや手間、時間がかかってしまうため、最小の実験回数で必要十分な情報を得られる実験モデルを構築したい。ところ が、当時の統計解析ツールは、種類の異なる複数の因子を理想的な水準にする指標を求めることができなかった。たとえば、製品に色を付ける際に、塗料の量、 吹き付け時間によって、色味、密着性、耐外傷性など複数のポイントを柔軟に評価できなかったわけだ。
赤間氏は、個人的に新たなツールを調査し、JMPを評価してみることにした。中でも、カスタム計画や満足度の最大化手法こそ、欲しかった機能だったとい う。カスタム計画を使えば、JMPが提供する実験計画のメニューのひとつで、実験数の指定や実験範囲の制約の指定を可能にするなど、現場の状況に合わせて 柔軟に計画を作成できる。また、実験結果の解析では、満足度の最大化手法にて複数の目的変数の制約条件に対する最適解を求めることができる。「カスタム計 画機能によってユーザの目的に合わせて実験計画を自由に作成できるので、タグチメソッドなどの既成の実験計画を進化させることもできます。また実際には、 それぞれ異なる目的変数が複数存在し、説明変数の積項(交互作用)や二乗項が影響していることも多い。これに対して満足度の最大化手法で最適解を一発で算 出し、さらにシミュレータにてロバスト性を検証できることがわかりました」(赤間氏)。
基本統計や複雑な多変量解析を含む広範な統計手法をカバーするJMPは、研究所内で多くの研究員から支持されるようになった。その後、赤間氏がイノベー ション推進本部に配属されると、研究員以外の社員にも有効に使ってもらえるツールとして啓蒙活動を開始。全社員を対象とするJMPの定期トレーニングを展 開するなどの施策も実行された。
現段階でのJMPの主要ユーザは製品開発やプロセス改善に取り組む研究者や技術開発者だ。このプロセスではスクリーニング計画にもとづいて製品品質に影響 する因子を特定。1回の実験で種類の異なる多数の因子を指定し、因子ごとに指定された範囲内で品質を最適化する水準を割り当てられるようになった。赤間氏 は、「カスタム計画を使って簡便な実験モデルを構築して実験回数を大幅に削減し、満足度の最大化手法を用いて最適なプロセス条件を導いています。製品開発 にかかるコストを抑えながら品質を保ち、顧客の嗜好やニーズに合った製品を最適なタイミングで投入する仕組みとしてJMPは大きな役割を果たしています」 と語る。
ユーザが独自に分析機能を作り込み、共有できる点も魅力だ。すでに、アドイン機能で8種類の分析スクリプトを作成。キーワードマイニングにより、営業日報データや保守日報データなどの文書内の傾向や特徴的なパターンをつかむ機能も開発した。
2011年8月には、多数の子会社や工場、研究所、関係会社、カスタマーサポートセンターからそれぞれリーダーを選出し、JMPをはじめとするイノベー ション創出に寄与するツールの普及推進者を配置した。これにより、リーダーの下に各ツールの使い方を指導できるエキスパートを配置し、JMPの活用を全社 で推進する体制が整備された。当面の目標は、すべての事業所、工場、および事業部門ごとに2人以上の担当者、および全研究者の半数以上がJMPを使いこな せるレベルにすることという。
東芝は、HOPEと呼ばれる先進的なロバスト設計手法を取り入れている。ロバスト設計は、制御因子の水準を変えることでユーザの使用環境や製品の劣化・摩 耗、材料品質のばらつきなど、設計者が制御できない、あるいは制御しない誤差因子に対して頑健な設計を行い、製品品質を安定させるアプローチ。この中で中 核的に利用されるのがJMPだ。赤間氏は、「JMPは、あらゆる統計解析ツールの中で唯一、HOPE理論を実践できます。ロバスト性いわゆる品質だけでな く、経済性や製造性なども同時に考慮しながら上流設計を実践できます。厳しい市場環境の中で、競争力を高める武器としてJMPを全社に浸透させ、データ解 析を軸としたプロセス改善で顧客満足の最大化を追求していきます」と話している。
厳しい市場環境の中で、競争力を高める武器としてJMPを全社に浸透させ、データ解析を軸としたプロセス改善で顧客満足の最大化を追求していきます
株式会社東芝
イノベーション推進本部 イノベーション推進部 プロジェクト推進室 経営変革上席エキスパート
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