この例は、Bollen(1989)で説明されているものです。75か国の発展途上国のデータから、産業化と政治的民主主義について、構造方程式モデルを作成してみましょう。このデータテーブルには、民主主義に関する4つの測定値(1960年、1965年)と、産業化に関する3つの測定値(1960年)が含まれています。これらの変数に対する説明は、各列の「ノート」列プロパティに記されています。この「ノート」列プロパティを確認するには、データテーブルで列名を右クリックして[列情報]を選択し、[列プロパティ]の下にあるリストから[ノート]を選択してください。ここで作成する構造方程式モデルは、構造回帰モデルです。
その構造回帰モデルを指定するには、主に4つの手順を踏みます。第1に、潜在変数を追加します。第2に、因子負荷および回帰係数を追加します。第3に、共分散を追加します。そして第4に、因子負荷に対して制約を課します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Political Democracy.jmp」を開きます。
2. [分析]>[多変量]>[構造方程式モデル]を選択します。
3. [生産60]から[議会65]までを選択し、[モデルの変数]をクリックします。
4. [OK]をクリックします。
「構造方程式モデル」レポートが開き、「モデルの指定」アウトラインが表示されます。
5. 「表示」パネルボックスの[リスト]タブをクリックします。
6. 「矢印の先」で[生産60]から[労働60]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のテキストボックスに「Ind60」と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
7. 「矢印の先」で[報道60]から[議会60]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のテキスとボックスに「Dem60」と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
8. 「矢印の先」で[報道65]から[議会65]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のテキスとボックスに「Dem65」と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
9. 「矢印の元」で[Ind60]を選択し、「矢印の先」で[Dem60]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
10. 「矢印の元」で[Ind60]を選択し、「矢印の先」で[Dem65]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
11. 「矢印の元」で[Dem60]を選択し、「矢印の先」で[Dem65]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
図8.7 因子負荷と回帰
12. 「矢印の元」で[野党60]を選択し、「矢印の先」で[議会60]と[野党65]を選択して、双方向の矢印ボタン()をクリックします。
13. 「矢印の元」で[野党65]を選択し、「矢印の先」で[議会65]を選択して、双方向の矢印ボタン()をクリックします。
14. 「矢印の元」で[報道60]を選択し、「矢印の先」で[報道65]を選択して、双方向の矢印ボタン()をクリックします。
15. 「矢印の元」で[選挙60]を選択し、「矢印の先」で[選挙65]を選択して、双方向の矢印ボタン()をクリックします。
16. 「矢印の元」で[議会60]を選択し、「矢印の先」で[議会65]を選択して、双方向の矢印ボタン()をクリックします。
図8.8 共分散
17. 「因子負荷」のリストから[Dem60->野党60]と[Dem65->野党65]を選択して、[等号制約の設定]をクリックします。
18. 「因子負荷」のリストから[Dem60->選挙60]と[Dem65->選挙65]を選択して、[等号制約の設定]をクリックします。
19. 「因子負荷」のリストから[Dem60->議会60]と[Dem65->議会65]を選択して、[等号制約の設定]をクリックします。
図8.9 設定後の「モデルの指定」アウトライン
因子負荷への制約は、英数字のラベルで示されます。たとえば、[Dem60→野党60]と[Dem65→野党65]にはそれぞれ"c1"というラベルが付いており、等号制約が設定されていることがわかります。
20. 「モデル名」のすぐ下のテキストボックスに、「Industrialization and Political Democracy」と入力します。
21. [実行]をクリックします。
図8.10 構造方程式モデルの「あてはめの要約」レポート
「あてはめの要約」レポートによると、このモデルのカイ2乗は40.18で、自由度は38です。p値は0.3739で、有意でないことに注目してください。これは、「観測された共分散行列に、このモデルは適合している」という帰無仮説を棄却する証拠はないということを示しています。したがって、「観測された共分散行列に、このモデルはあてはまっていないとは言えない」と結論できます。
カイ2乗値は標本サイズによって異なるので、よくあてはまっているモデルでも、有意になる場合があります。モデルの適合度を判断するその他の指標に、CFI(comparative fit index; 比較適合の指標)およびRMSEA(root mean square error of approximation; 近似の平均平方誤差平方根)があります。これらの指標は、0から1の間の値をとります。CFI>0.90、RMSEA<0.10が、適合度の良さを示すうえで望ましいとされています(Browne and Cudeck 1993; Hu and Bentler 1999)。ここで、CFIは0.9968、RMSEAは0.0277となっており、「当該のモデルは、観測データの共分散行列に非常によくあてはまっている」と言えます。
図8.11 構造方程式モデルの「パラメータ推定値」レポート
次に、「パラメータ推定値」の「回帰」を見ると、「Ind60→Dem60」、「Ind60→Dem65」、「Dem60→Dem65」において正の効果があることが示唆されています。つまり、「Ind60」のスコアが高いことは、「Dem60」や「Dem65」のスコアが高いことと関係しており、「Dem60」のスコアが高いことは、「Dem65」のスコアが高いことと関係していると言えます。「回帰」には、これらのパラメータ推定値のp値も示されています。これらの3つの回帰パラメータはすべて、α = 0.05の水準で有意となっています。したがって、これらの回帰係数はゼロではないと結論付けることができます。