実験計画(DOE)
公開日: 04/01/2021

実験計画(DOE)

実験計画について

「実験計画(DOE)」プラットフォームの概要

「実験計画(DOE)」メニューにある各プラットフォームは、実験計画(DOE; Design of Experiments)に関するものです。ほとんどのプラットフォームは、様々な実験計画を作成するためのものです。いくつかのプラットフォームは、実験計画の作業を助けます。この節では、[実験計画(DOE)]の各プラットフォームを簡単に紹介します。

実験計画を作成するプラットフォーム

カスタム計画

さまざまな種類の計画を作成します。カスタム計画は、古典的な実験計画よりも、実験コストを抑えることができ、かつ、柔軟性が高いです。

カスタム計画では、さまざまな種類の因子、因子に対する制約、および、許可しない組み合わせを指定できます。また、どの効果を必ず推定するか、どの効果を必要に応じて推定するかを指定できます。そして、状況や予算に応じて、実験回数を自由に指定できます。その他にも、「変更が困難な因子」や「変更が非常に困難な因子」を指定することにより、分割法などの計画も作成できます。

「カスタム計画」プラットフォームでは、次のような特殊な種類の計画を作成できます。

スクリーニング計画

応答曲面計画

配合計画

乱塊法

分割法

2段分割法

2方分割法

スクリーニング計画、応答曲面計画、配合計画は、他のプラットフォームでも作成できますが、「カスタム計画」プラットフォームには、他のプラットフォームにない柔軟性があります。分割実験を作成できるのは、「カスタム計画」プラットフォームのみです。

決定的スクリーニング計画

連続尺度および2水準の因子に対するスクリーニング計画を作成します。曲面性が存在する場合や、因子間に交互作用がある場合、決定的スクリーニング計画が役立ちます。決定的スクリーニング計画は、2次までの効果において完全交絡がなく、強い曲面性をもつ効果を検出できます。

決定的スクリーニング計画は、4つ以上の因子をもつ実験に適しています。また、決定的スクリーニング計画は、ブロックをもつ実験も作成できます。この時、ブロックの数には任意の数を指定できます。

決定的スクリーニングのあてはめ

決定的スクリーニング計画に特化した統計手法により、決定的スクリーニング計画のデータを分析します。この手法は、「決定的スクリーニング計画の効果的モデル選択」(Effective Model Selection for DSDs)と呼ばれています。この手法は、決定的スクリーニング計画がもつ特殊な構造をうまく利用して、分析を行います。

スクリーニング計画

連続尺度の因子、および、任意の水準数をもつ離散数値とカテゴリカルの因子に対して、スクリーニング計画を作成します。標準的な従来のスクリーニング計画が存在する場合、次の2つのオプションがあります。

従来のスクリーニング計画の一覧から選択します。このオプションでは、2水準の連続尺度の因子、2水準または3水準のカテゴリカル因子、2水準または3水準の離散数値の因子をもつ計画を作成できます。

主効果に対する直交計画や殆直交計画を生成します。殆直交計画を作成する機能では、2水準である連続尺度の因子、および、任意の水準数をもつカテゴリカル因子と離散数値の因子を扱えます。主効果に対する直交計画や殆直交計画は、交互作用が無視できるほど小さい状況において、主効果を効率よく推定するためのスクリーニング計画となっています。

スクリーニング計画を行いたいのに、標準的な従来のスクリーニング計画には、自分の状況に適したものがない場合があります。そのような場合でも、殆直交計画は作成できます。

応答曲面計画

連続変数の2次式を推定する計画を作成します。応答曲面計画では、2乗の効果を推定するために、各因子は3水準とされます。このプラットフォームでは、最大8因子の応答曲面計画を作成できます。

中心複合計画やBox-Behnken計画を、リストから選択できます。場合によっては、直交しているブロック因子の中心複合計画も選択できます。中心複合計画には、さまざまな調整を行えます。

完全実施要因計画

任意の水準数を持つ、連続変数やカテゴリカル因子で完全実施要因計画を作成します。因子数も任意です。完全実施要因計画は、各因子における水準のすべての組み合わせになっています。完全実施要因計画は大規模になる傾向があります。実験回数は、各因子の水準数を掛け合わせたものです。

配合計画

配合物の成分を因子とした計画を作成します。配合実験では、1つの成分の割合を変更すると、全体の合計を維持するために残りの成分の割合も変更しなければなりません。JMPでは、従来型のアプローチを含め、最適計画、単体重心計画、単体格子計画、端点計画、ABCD計画、Space Filling計画(空間充填計画)が作成できます。最適計画、端点計画、Space Filling計画では、線形不等式の制約を因子に課すことにより、計画の領域を制限できます。

Image shown here被覆配列

ソフトウェアやネットワークなどのシステムを検証するための組み合わせを作成します。強度tの被覆配列では、t個の因子における水準のすべての組み合わせが、少なくとも1回は実験に出現します。被覆配列では、任意の水準数を持つ任意の個数のカテゴリカルな因子を指定できます。また、許可しない組み合わせも指定できます。

選択モデル計画

異なる属性をもつ製品の候補を比較するための計画を作成します。選択モデル計画では、製品の属性を因子とします。異なる属性をもつ製品を、1回につき2個~4個用意して回答者に提示します。実験では、それらのなかから回答者に好きな製品を選んでもらいます。製品の属性について事前情報がある場合は、それを計画に反映させることができます。

MaxDiff計画

MaxDiff調査のための選択肢集合を含む計画を作成します。MaxDiff調査では、回答者は、小規模の選択肢集合の中から、最も好ましいものと最も好ましくないものだけを回答します。最良のものと最悪のものを選んでもらうので、最良のものだけを選ぶ実験よりも、順位付けに関するより有用な情報を得ることができます。

Space Filling計画

Space Filling計画(空間充填計画)は、調査対象であるシステムが決定論的である(または、ほぼ決定論的な)場合に用います。一般的には、決定論的で、かつ、とても複雑なコンピュータシミュレーションの結果から、単純な近似モデルを作成するときに使用されています。

決定論的なシステムには、ばらつきがありません。そのような場合における分析の目標は、近似的なモデルと真のモデルとの差(バイアス)を最小にすることです。Space Filling計画は、計画点をお互いからできるだけ遠ざけたり、計画領域全体に均等に分散させたりすることで、この目標を達成できるようにします。

JMPでは、7種類のSpace Filling計画が用意されています。このうち、高速柔軟充填計画では、任意の水準数を持つカテゴリカルな因子や、線形制約も指定できます。

加速寿命試験計画

加速寿命試験(故障時間を早めるために過酷な条件下に製品をさらす試験)を作成・拡張できます。試験結果をもとに、通常の運用条件下での製品の信頼性を予測できます。

寿命の分布として、対数正規分布またはWeibull分布のいずれかを仮定できます。1 ~ 2 つの加速因子を指定できます。加速因子が2つの場合は、交互作用を含めることもできます。加速寿命モデルのパラメータに対し、事前分布を指定することができます。D-最適計画と2種類のI-最適計画が作成できます。

非線形計画

パラメータに関して非線形なモデルをあてはめるための計画を作成・拡張します。既存のデータがあるならば、そこから計算された推定値から、計画を作成すると良いでしょう。既存のデータがない場合には、何らかの事前の知識をもとに計画を作成します。

釣合い型不完備ブロック計画

a個の処置をb個のブロックにおいて実験する計画を作成します。その際、1つのブロック内で扱う処置の数をk個(k < a)に制約します。

タグチ配列

SN比分析に使用する計画を作成します。この計画は、内側配置と外側配置との直積から構成される配列です。制御因子の設定が内側配列、誤差因子の設定が外側配列を形成します。SN比分析では、平均とSN比を応答として分析が行われます。

なお、この[タグチ配列]ではなく、カスタム計画によって、制御因子、誤差因子、制御因子と誤差因子の交互作用を含む計画を作成することも考えられます。そのような計画は、組み合わせ配列(combined arrays)と呼ばれており、一般的に、タグチ配列よりも実験回数が少なくてすみ、効率が良いです。

実験計画の作業を助けるプラットフォーム

計画の評価

既存の実験計画を診断します。「計画の評価」プラットフォームは、さまざまな方法で計画の長所と短所を評価します。JMPで作成した計画に限らず、どんなデータテーブルでも評価できます。

次のような診断統計量が求められます。

検出力分析

予測分散プロット

パラメータの推定効率

交絡行列(alias matrix; モデル効果のバイアス構造を示す行列)

効果間の絶対相関を示すカラーマップ

計画の効率を示す指標

計画の比較

最大4つの計画を基準の計画と比較します。計画の性能を調べ、評価し、比較することができます。複数の計画を比較したときの相対的な効率性に関する診断統計量と、1つ1つの計画の絶対的な効率性を示す診断統計量が計算されます。

拡張計画

実験を追加した後の計画が最適になるように、既存の計画に実験を追加します。逐次的に実験を追加していくときに、「拡張計画」が役立ちます。計画を反復したり、中心点を追加したり、計画を折り重ねたり、軸点を追加したり、Space Filling(空間充填)の枠組みで点を追加したり、などの方法で、実験を追加できます。元の実験と追加した実験をブロックに分けることもできます。元のモデルに存在していない効果を新たにモデルに加えて、それらの効果を推定できるように実験を追加することもできます。

検出力/標本サイズ

さまざまな検定に対して、検出力や標本サイズを計算します。用意されている検定は、1つまたは複数の標本平均、1つの標準偏差、1つまたは2つの割合、ユニットあたり度数(Poisson分布の平均)、シグマクオリティの水準です。これらの計算では、3つの数値のうち2つを入力すると、残りの1つの数値が計算されます。3つの数値とは、検出したい差、標本サイズ、検出力です。また、数値を1つだけ指定すると、他の2つの数値の関係を示すプロットが描かれます。

また、信頼性試験計画の標本サイズも計算できます。信頼性試験計画は、故障確率を推定するための試験です。このほかにも、信頼性実証の標本サイズも計算できます。信頼性実証は、製品が特定の標準を満たすことを実証するのが目標です。

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).