高速柔軟充填計画(FFF; Fast Flexible Filling)では、地図などの複雑な領域に合わせて実施する実験が計画できます。たとえば、米国のある州全体で2つの方法を用いて標本を採集し(空気の標本または土の標本)、比較したい場合には、高速柔軟充填計画が向いています。
ジョージア州で調査を行うとしましょう。ジョージア州内の各地で、それぞれの方法で20ずつ、計40の標本を抽出することにします。そのような場面で高速柔軟充填計画を作成するには、境界線の緯度と経度を保存したファイルが必要になります(背景地図を参照)。
次の例では、ジョージア州の地図情報(境界線の緯度と経度が含まれたデータ)から、ジョージア州内での高速柔軟充填計画を作成します。計画には、40の標本のそれぞれについて、位置と抽出方法が含まれます。
1. 「Maps」ディレクトリを開きます。
Windows: C:¥Program Files¥SAS¥JMP¥<バージョン番号>¥Maps
macOS: /Library/Application Support/JMP/<バージョン番号>/Maps
2. 「US-State-XY.jmp」と「US-State-Name.jmp」を開きます。
「US-State-Name.jmp」では、「Shape ID」が「11」の州がジョージアです。この例では、ジョージア州について調べます。
3. 「US-State-XY.jmp」で、[行]>[行の選択]>[Where条件で選択]を選択します。
4. 「Shape ID」を選択し、テキストボックスに「11」と入力して[OK]をクリックします。
「Shape ID」が11である行、つまりジョージア州の行がすべて選択されます。
5. [テーブル]>[サブセット]を選択し、[OK]をクリックすると、ジョージア州の経度・緯度データ(選択された行)をまとめた「US-State-XY.jmp」のサブセットが作成されます。
6. 「US-State-XY.jmp」と「US-State-Name.jmp」を閉じます。
Space Filling計画の空間を定義するためには、ジョージア州の経度と緯度の範囲を知る必要があります。それらの範囲に基づき、因子を作成します。
1. [ファイル]>[新規作成]>[スクリプト]を選択します。スクリプトウィンドウで右クリックし、[ウィンドウ内にログを表示]を選択します。
2. 次のスクリプトをコピーし、新しいスクリプトに貼り付けます。
dt = current data table();
mymap = dt << get as matrix({X,Y});
xx = mymap[0,1];
yy = mymap[0,2];
show(min(xx), max(xx));
show(min(yy), max(yy));
show(xx,yy);
3. 「US-State-XY.jmpのサブセット」をアクティブにした状態で、スクリプトを実行します。
ジョージア州の緯度と経度の値の範囲、そしてxxと yyの行列がログに表示されます。
図21.25 範囲を調べるスクリプトとログに表示された結果
1. [実験計画(DOE)]>[特殊な目的]>[Space Filling計画]を選択します。
2. 計画に連続変数の因子を2つ追加します。「N個の因子を追加」に「2」と入力し、[連続変数]をクリックします。
3. 因子の名前を「緯度」と「経度」に変更し、「因子」アウトラインで最小値と最大値を入力します。
– 経度については、「-85.6」と「-80.9」を入力します。これは、xのログに表示された経度の最小値と最大値です。
– 緯度については、「30.4」と「35.0」を入力します。これは、yのログに表示された緯度の最小値と最大値です。
4. カテゴリカルな因子を1つ追加します。[カテゴリカル]>[2水準]をクリックします。因子の名前を「方法」に変更します。
図21.26 因子
5. [続行]をクリックします。
Space Filling計画の空間を決めるために、多角形を使って州の形状を定義する必要があります。
1. [スクリプトで許可しない組み合わせを指定]を選択し、「許可しない組み合わせの式」テキストボックスを開きます。
緯度と経度の範囲では、四角い形しか定義できませんが、ジョージア州の形状は多角形で、四角ではありません。点はジョージア州の多角形からはみ出ないようにする必要があります。
2. スクリプトウィンドウに移動し、スクリプトログにあるxxと yyの行列をコピーします。コピーした行列を「許可しない組み合わせの式」のテキストボックスに貼り付けます。
3. 末尾に次の行を追加します。
!In Polygon(経度, 緯度 , xx, yy);
これにより、xxとyyの座標で定義される多角形に収まらない点が除外されます。
図21.27 許可しない組み合わせの式
1. 「実験の回数」を「40」に変更し、[高速柔軟充填]をクリックします。
2. [テーブルの作成]をクリックします。
3. 計画のデータテーブルで[グラフ]>[グラフビルダー]を選択します。
4. 次のように、列をゾーンにドラッグします。
– 「経度」を「X」ゾーンに
– 「緯度」を「Y」ゾーンに
– 「方法」を「色」ゾーンに
5. グラフの上にある[平滑線]のアイコンをクリックして、平滑線を削除します。
6. 州のシェープを追加するため、グラフを右クリックし、[グラフ]>[背景地図]を選択します。
7. 「境界線」として[米国の州]を選択し、[OK]をクリックします。
図21.28 ジョージア州の高速柔軟充填計画の例
メモ: 高速柔軟充填アルゴリズムでは、開始点がランダムに選択されるため、地図上の点の位置はここに表示されたものとは異なります。
地図は、標本の採集をすべき40の場所を示しています。点の色が標本採集の方法(L1またはL2)を表しています。
[グラフ]>[背景地図]を選択して開いたウィンドウには、次のようなオプションがあります。
• 調査する対象が群の場合は、[境界線]の中の[米国の郡]を選択します。
• 調査する対象がより狭い地域の場合は、「イメージ」の中の[Street Map Service]も使用できます。