メモ: 本節で用いているのデータは、Automotive Industry Action Group(2002)からの引用です。
工場の責任者として、新しい測定システムを工程に導入することを検討しているとしましょう。製造部品承認プロセス(PPAP: Production Part Approval Process)の一環として、測定システムのバイアスと直線性を評価する必要があります。測定システムが使われる工程から、実際の製品のばらつきに従っている5つの部品を抽出しました。まず、基準値を決めるために、各部品をケガキ検査で測定しました。そして、主任オペレータが各部品を12回測定しました。なお、部品は、測定するその日に無作為に抽出されました。この例では、全体の測定バイアスと個々の測定バイアス(基準値ごとの測定バイアス)を検討します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Variability Data」フォルダにある「MSALinearity.jmp」を開きます。
2. [分析]>[品質と工程]>[計量値/計数値ゲージチャート]を選択します。
3. 「応答」を選択し、[Y, 応答変数]をクリックします。
4. 「基準」を選択し、[基準]をクリックします。
5. 「部品」を選択し、[X, グループ変数]をクリックします。
6. [OK]をクリックします。
7. 「計量値用ゲージ」の赤い三角ボタンをクリックし、[ゲージ分析]>[バイアスレポート]を選択します。
図5.10 「測定バイアス」レポート
測定値ごとにバイアス(「応答」 - 「基準」)が計算されます。「全体の測定バイアス」レポートには、バイアスのヒストグラムと、平均バイアスが0であるかどうかのt検定が表示されます。「平均バイアス」はちょうどぴったり0ではなく、‐0.0533になっています。ただし、95%信頼区間(‐0.1152, 0.0085)にゼロが含まれるため、「平均バイアス」とゼロとの間には、有意水準5%で統計的有意差は見られません。また、p値が0.05より大きいことからも、「平均バイアス」と0との間には有意水準5%で統計的有意差が見られないことが分かります。
「基準ごとの測定バイアス」には、各部品の平均バイアスが表示されます。グラフには、各部品の平均バイアスの他に実際のバイアスの値もプロットされているので、広がりがわかります。この例では、部品番号1(基準値2)は高い方向に、部品番号4と5(基準値8, 10)は低い方向にバイアスが生じています。
ヒント: バイアスの信頼区間を表示するには、表を右クリックして[列]>[下側95%]と[上側95%]を選択します。
本節でも、[バイアスレポート]オプションを説明した前節と同じデータを使用します。本節では、直線性を調べ、部品の大きさとオペレータの測定バイアスの間に有意な関係があるかどうかを判定します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Variability Data」フォルダにある「MSALinearity.jmp」を開きます。
2. [分析]>[品質と工程]>[計量値/計数値ゲージチャート]を選択します。
3. 「応答」を選択し、[Y, 応答変数]をクリックします。
4. 「基準」を選択し、[基準]をクリックします。
5. 「部品」を選択し、[X, グループ変数]をクリックします。
6. [OK]をクリックします。
7. 「計量値用ゲージ」の赤い三角ボタンをクリックし、[ゲージ分析]>[直線性]を選択します。
8. 「工程変動(K*履歴σ)を指定」ウィンドウが表示されるので、「16.5368」と入力します。
値14.9286は、応答の標準偏差2.488105の6倍です。
図5.11 直線性
次のことを注意してください。
• 傾きは-0.131667です。この値は、グラフの下に表示されている回帰式と、3番目の表から知ることができます。
• 傾きに対するt検定のp値はかなり小さくなっています(p < 0.0001)。この検定は、バイアスが基準値とともに変化するかどうかを評価します。
p値が小さいため、部品の大きさと、オペレータの測定バイアスとの間には有意な直線関係があると結論できます。この関係はグラフでも確認できます。基準値が小さいと高い方向に測定バイアスが生じ、逆に、基準値が大きいと低い方向にバイアスが生じています。