応答に大きく影響すると考えられる因子を特定するには、スクリーニング計画がよく使われています。スクリーニング計画を使えば、小規模な実験で多数の因子を調べることができます。
標準的なスクリーニング計画の多くは、主効果の推定に重点を置きます。決定的スクリーニング計画(Definitive Screening Design; DSD)には、標準的なスクリーニング計画と比べて利点があります。決定的スクリーニング計画では、効果の交絡が少なく、また非線形効果を特定できます。決定的スクリーニング計画の利点と構成については、Jones and Nachtsheim(2011a)を参照してください。
連続尺度の因子だけを含む計画について、決定的スクリーニング計画と標準的なスクリーニング計画の違いを以下に示します。
メモ: なお、標準的なスクリーニング計画でも、中心点を追加すれば、2乗効果を推定できます。
• 主効果が2因子間交互作用と直交している
– 決定的スクリーニング計画: 常に成立している
– 標準的なスクリーニング計画: レゾリューションIV以上の場合のみ
• 2因子間交互作用が互いに完全交絡していない
– 決定的スクリーニング計画: 常に成立している
– 標準的なスクリーニング計画: レゾリューションV以上の場合のみ
• 主効果と2乗効果だけを含むモデルで、すべての2乗効果が推定可能である
– 決定的スクリーニング計画: 常に成立している
– 標準的なスクリーニング計画: 成立していない
これらの性質については、節の後半で詳しく説明します。
一部実施要因計画やPlackett-Burman計画などの標準的なスクリーニング計画は、比較的少ないリソースで数多くの因子を調べようとします。ただし、標準的なスクリーニング計画には望ましくない特徴もあります。
• 主効果と2因子間交互作用が(完全に、または、部分的に)交絡する場合があります。たとえば、Plackett-Burman計画では、主効果は、一部の2因子間交互作用とのあいだに相関があります。1つまたは複数の2因子間交互作用の効果が大きかったら、曖昧さを解決するために追加の実験が必要になります。
• 2因子間交互作用が互いに(完全に)交絡する場合もあります。そのため、もし、いくつかの2因子間交互作用の効果が大きかったら、曖昧さを解決するために追加の実験が必要になります。
• 連続尺度の因子は、通常、2水準(低、高)のみに設定されます。しかし、エンジニアや科学者は3水準(低、中、高)の設定を好む傾向があります。一般の物理現象は非線形な関係が一般的であり、非線形性を検出するのに2水準では不十分なためです。従来のスクリーニング計画に中心点を追加した計画は、いずれかの因子に非線形性があることは検出することができますが、非線形効果があるのはどの因子であるかを特定することはできません。
決定的スクリーニング計画では、次のことができます。
• モデルの曖昧さを回避し、重要な因子をすばやく効率的に特定します。
• 2次までの項が交絡するのを回避しながら、非線形効果をもつ因子を特定します。そのため、従来のスクリーニング計画に中心点を追加したときのように非線形性が検出できるだけでなく、2乗の効果をもつ因子を特定することができます。
決定的スクリーニング計画には、次の利点があります。
• 決定的スクリーニング計画は、少ない実験数ですみます。因子が6個以上ある場合、最小実験回数は因子数の倍を少し超えた数で済みます。実験回数の詳細については、カンファレンス行列と実験回数を参照してください。
• 主効果は2因子間交互作用に対して直交しています。そのため、2因子間交互作用がたとえ存在していたとしても、そして、それらをモデルに含めても含めなくても、1次の主効果における推定値はそれらの影響を受けません。一方、レゾリューションIIIのスクリーニング計画では、一部の主効果は交互作用と完全に交絡します。また、Plackett-Burman計画は、部分的に交絡しており、重要な2因子間交互作用がある場合、それらの2因子間交互作用項をモデルに含めないと主効果の推定値にバイアス(偏り)が生じます。
• 一部の2因子間交互作用どうしは部分的に交絡していますが(つまり、一部の2因子間交互作用の間には相関は存在しますが)、完全に交絡する2因子間交互作用はありません。一方、レゾリューションIVのスクリーニング計画では、一部の2因子間交互作用は完全に交絡します。
• 主効果と2乗効果だけを含むモデルにおいて、すべての2乗効果が推定可能です。そのため、非線形性をもつ因子を特定できます。一方、中心点を追加した従来のスクリーニング計画では、主効果と2乗効果だけを含むモデルにおいて、すべての2乗効果を推定することはできません。
• すべての2乗の効果は、すべての1次の主効果と直交します。また、いずれの2乗の効果も、2因子間交互作用とは完全には交絡しません。ただし、相関が見られる場合はあります。
• 6~30個の因子がある場合、そこから抜き出した任意の3個以下の因子で構成された完全2次モデルのパラメータを精度よく推定できます。
• 18個以上の因子がある場合、そこから抜き出した任意の4個の因子で構成された完全2次モデルをあてはめることができます。25個以上の因子がある場合、そこから抜き出した任意の5個の因子で構成された完全2次モデルをあてはめることができます。
「決定的スクリーニング計画」プラットフォームでは、連続尺度や2水準名義尺度の因子から構成された決定的スクリーニング計画を作成できます。また、ブロック因子を含む計画も作成できます。決定的スクリーニング計画の枠組みでは、応答に影響している効果(有効な効果; active effect)が多数ある場合、それらの効果に対する検出力を上げるために、(中心点以外の)実験を追加することもできます。
効果間の相関の絶対値を見るには、「スクリーニング計画」ウィンドウの「計画の評価」アウトラインにある「相関のカラーマップ」を使用します。相関のカラーマップを比較することで、決定的スクリーニング計画の交絡構造と他の計画の交絡構造を比較することができます。相関のカラーマップを参照してください。
決定的スクリーニング計画がもつ構造の詳細については、決定的スクリーニング計画の構造を参照してください。ブロック因子を含む決定的スクリーニング計画については、決定的スクリーニング計画のブロックを参照してください。決定的スクリーニング計画を使って取得したデータの分析方法については、実験データの分析を参照してください。
決定的スクリーニング計画(Definitive Screening Design; DSD)で実験を行った後は、「決定的スクリーニングのあてはめ」プラットフォームで実験結果を分析してください。決定的スクリーニング計画で得られたデータに標準的なモデル選択法を適用すると、応答に影響している効果を見落とす恐れがあります。「決定的スクリーニングのあてはめ」プラットフォームでは、「決定的スクリーニング計画の効果的モデル選択」(Effective Model Selection for DSDs)によって、有効な主効果と2次効果を特定します。この分析手法は、決定的スクリーニング計画に特有の構造を活かして分析を行います。「決定的スクリーニングのあてはめ」プラットフォームを参照してください。
JMPで決定的スクリーニング計画を作成すると、計画のデータテーブルに「決定的スクリーニングのあてはめ」というスクリプトが生成されます。このスクリプトは、前述の「決定的スクリーニング計画の効果的モデル選択」に基づき、自動的に分析を実行します。