固定効果の共分散行列は、Kackar‐Harvilleの修正を行って求められています。ただし、BLUPの共分散行列と、BLUPと固定効果の間の共分散に対しては、Kackar‐Harvilleの修正は行われません。変量効果に数多くの水準がある場合、BLUPの修正は計算が複雑になり、多くのメモリを必要とするためです。
SASでは、Kackar-Harvilleの修正は、DDFM=KENWARDROGERが設定された場合にのみ、固定効果とBLUPの両方に対して行われます。
• 固定効果パラメータしかない線形結合の標準誤差は、PROC MIXED DDFM=KENWARDROGERに一致します(PROC MIXEDとJMPで、同じパラメータ化を行った場合)。
• BLUPパラメータしかない線形結合の標準誤差は、PROC MIXED DDFM=SATTERTHWAITEに一致します。
• 固定効果とBLUPの両方のパラメータを持つ線形結合の標準誤差は、不釣合い(アンバランス)なデータに対しては、PROC MIXEDのどのDDFMオプションの結果にも一致しません。JMPの標準誤差は、DDFM=SATTERTHWAITEオプションとDDFM=KENWARDROGERオプションから得られる標準誤差の中間になります。釣合い(バランス)が取れているデータに対しては、どのようなDDFMオプションであっても、Kackar‐Harville修正は影響しないため、JMPとSASで得られる標準誤差は一致します。
固定効果パラメータの線形結合だけを含む検定の自由度は、Kenward-Rogerの修正を使って計算されるため、JMPでの検定結果はDDFM=KENWARDROGERオプションを使用した場合のPROC MIXEDと一致します。線形結合にBLUPパラメータが含まれている場合は、JMPではSatterthwaiteの近似を使って自由度を求めます。このため、結果は前述のようなパターンになります。
Kackar-Harvilleの修正とKenward-Rogerの自由度のアプローチの詳細については、Kenward and Roger(1997)を参照してください。Satterthwaite法の詳細については、SAS Institute Inc.の「MIXED Procedure」章を参照してください(2020d, ch. 83)。