この例では、6枚のウエハーを、3名の測定者が2回ずつ測定しています。「測定システム分析」プラットフォームを使用して、測定システムのパフォーマンスを確認するための詳細な分析を行います。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Variability Data」フォルダにある「Wafer.jmp」を開きます。
2. [分析]>[品質と工程]>[測定システム分析]を選択します。
3. 「Y」に[Y, 応答変数]の役割を割り当てます。
4. 「ウエハー」に[部品, 標本ID]の役割を割り当てます。
5. 「測定者」に[X, グループ変数]の役割を割り当てます。
「分析方法」が[EMP]に、「ばらつき図の種類」が[範囲]に、「モデルの種類」が「交差」に設定されていることを確認してください。
6. [OK]をクリックします。
図4.8 平均図と範囲図
平均図には、管理限界を超えた部品測定値の平均の一部が表示されます。これは、測定によって、部品間の違いを検出できていることを意味しており、望ましい結果です。
範囲図には、管理限界を超えた点は表示されません。これは、測定者による測定値が部品内で一定にばらついていることを示し、望ましい結果です。
測定者と部品の間の交互作用を調べましょう。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[平行性図]を選択します。
図4.9 平行性図
測定者別の平行性図を見ると、折れ線グラフがおおむね平行し、大きく交差する箇所もありません。
測定者ごとに見られるばらつきについて、さらに詳しく検討しましょう。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[繰り返し誤差の比較]を選択します。
図4.10 繰り返し誤差の比較
「繰り返し誤差の比較」レポートから、各測定者の繰り返し誤差がいずれも、全体の繰り返し誤差と有意に異ならないことがわかります。測定者の測定が一貫していると考えてよいでしょう。
念のため、「バイアスの比較」グラフも見てみましょう。このグラフは、測定者ごとの平均を見て、平均が高すぎたり、低すぎたりしている測定者がいないかを確認できます。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[バイアスの比較]を選択します。
図4.11 バイアスの比較
「バイアスの比較」グラフからは、次のようなことがわかります。
• 測定者AとBは、全体平均からの偏りが大きく、測定バイアスが生じています。
• 測定者Aは、低い方向にバイアスが生じています。
• 測定者Bは、高い方向にバイアスが生じています。
• 測定者Cには、全体平均との有意差は見られません。
「EMP分析」レポートを参考に、測定システムを等級分けし、改善点を探ってみましょう。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[EMP分析]を選択します。
図4.12 EMP分析
この例の測定システムは、「第2級」に分類されました。「第2級」の測定システムは、平均が3シグマだけ変化した場合、ルール1だけによって、サブグループ数が10個以下のうちでその変化を検出できる確率は88%以上です。また、レポートを見ると、「バイアス要因によって減少する級内相関の量」が0.11になっています。つまり、もし、バイアス要因を除去できたら、級内相関係数は0.11だけ大きくなります。
「変化検出プロファイル」を使用して、工程における変化を管理図が検出できる確率を調べます。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[変化検出プロファイル]を選択します。
図4.13 変化検出プロファイル
デフォルトでは、3シグマの限界を超えている点を検出するテストだけが選択されています。また、デフォルトのサブグループのサイズは1で、つまり、個々の測定値の管理図を使用したときの結果です。
部品の標準偏差の2倍だけ平均がシフトしたときの変化を10個以下のサブグループによって検出できる確率を調べてみましょう。「部品平均の変化」の値2.1701をクリックして、4.34(2.17の2倍)に変更します。部品の標準偏差の2倍だけ平均がシフトしたとき、それを検出できる確率は56.9%です。
次に、部品の標準偏差の2倍だけのシフトを検出する確率が、バイアスを排除することでどのように変化するかを見てみましょう。「バイアス要因の標準偏差」の値を1.1256から0に変更してください。変化を検出する確率は67.8%に高まります。
最後に、さらにテストを追加して、部品の標準偏差の2倍だけのシフトを検出する確率を調べてみましょう。1つ目のテストに加えて、2, 5, 6つ目のテスト(Wheelerのルール4, 2, 3)を選択してみてください。バイアスのかかった変動がない状況で、これら4つのテストによって、シフトを検出する確率は99.9%です。
サブグループの標本サイズを増やした場合の効果も調べることができます。サブグループの標本サイズを1より大きくした場合、管理図はXBar管理図になります。「バイアス要因の標準偏差」の値を1.1256に戻し、1つ目のテストだけが選択されている状態に戻してください。そして、プロファイルの「サブグループのサイズ」を4に設定してください。部品の標準偏差の2倍だけ平均がシフトしたとき、そのシフトをこの設定で検出する確率は98.5%となります。
最後に、測定値の桁数が適切かどうかを調べてみましょう。「Yの測定システム分析」の横の赤い三角ボタンをクリックし、[測定の有効桁数]を選択します。
図4.14 測定の有効桁数
「現在の測定単位」は0.01で、「測定単位の下限」の0.09を下回っています。この結果は、測定値の桁数を1桁減らして、0.01から0.1に単位を変更したほうが良いことを示唆しています。