引き続き、「Drug.jmp」サンプルデータを使います。今度は、「薬剤」群ごとに回帰直線の傾きが異なるモデルをあてはめてみましょう。モデルにあてはめた後、この例では共変量xの特定の値で「薬剤」の水準の最小2乗平均を比較します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Drug.jmp」を開きます。
2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
3. 「y」を選択し、[Y]をクリックします。
4. 「薬剤」と「x」の両方を選択し、[マクロ]>[設定された次数まで]をクリックします。
これにより、「次数」ボックスで指定した次数までの項がモデルに追加されます。「次数」のデフォルト値は2 です。これで、「薬剤」と「x」の主効果と、それらの交互作用である「薬剤*x」がモデル効果のリストに追加されたはずです。
5. [実行]をクリックします。
以上のような指定によるモデルは、前節の傾きが等しい共分散分析モデルに、2つの変数(x4iとx5i)が追加したものになります。これは、共変量に対する傾きが「薬剤」の水準ごとに異なるモデルになります。追加される2つの変数は、「薬剤」のダミー変数に共変量を掛けたものです。モデル式は、次のようになります。
表4.1は、このモデルのコード変換を示しています。なお、交互作用項において、連続尺度の変数は、Xの平均10.7333を引くことにより、中心化されています。
説明変数 |
効果 |
値 |
x1 |
薬剤[a] |
aのとき+1、dのとき0、fのとき–1 |
x2 |
薬剤[d] |
aのとき0、dのとき+1、fのとき–1 |
x3 |
X |
Xの値 |
x4 |
薬剤[a]*(X - 10.733) |
aのときX – 10.7333、dのとき0、fのとき–(X – 10.7333) |
x5 |
薬剤[d]*(X - 10.733) |
aのとき0、dのときX – 10.7333、fのとき–(X – 10.7333) |
レポートの一部を図4.6に示します。「回帰プロット」に描かれている回帰直線は、傾きが異なっており、平行にはなっていません。「効果の検定」レポートを見ると、交互作用のp値は0.56で、統計的には有意でありません。
図4.6 プロットと交互作用
次に、共変量xの特定の値で「薬剤」の水準の最小2乗平均を比較します。共分散分析モデルなどにおけるこのような比較は、スポットライト分析と呼ばれることがあります。スポットライト分析の詳細については、Spiller et al.(2013)を参照してください。
1. 「応答 Y」の赤い三角ボタンをクリックし、[推定値]>[多重比較]を選択します。
2. 「多重比較」ウィンドウで、[ユーザ定義の推定値]を選択します。
3. [薬剤の水準を選択]の下の3つの値をすべて選択します。
4. xの下の最初のボックスに「12.5」と入力します。
5. [推定値の追加]をクリックします。
これは、3水準の[薬剤]をx = 12.5で比較したものを追加します。
6. [OK]をクリックします。
「ユーザ定義の推定値」レポートには、共変量xを12.5に設定した[薬剤]の各レベルの最小2乗平均の推定が表示されます。「ユーザ定義の推定値」の[多重比較]の横にある赤い三角形には、推定値の間の差を検定するオプションが含まれています。
図4.7 「ユーザ定義の推定値」レポート
7. 「ユーザ定義の推定値」の[多重比較]の横にある赤い三角ボタンをクリックし、[全体平均との比較]を選択します。
図4.8 全体平均との比較 グラフ
[全体平均との比較]オプションでは、平均と3つの最小2乗平均との間の差に対するANOM(平均分析)を作成します。ANOMグラフから、x = 12.5の応答では、[薬剤]の有意な効果は認められないと言えます。