「分布の比較」レポートでは、複数の寿命分布をあてはめ、それらを比較できます。このレポートでは、次に示す2つの一覧が表示されています。
分布
このオプションでは、故障時間の確率分布を選択します。使用できる分布について詳しくは、使用できるパラメトリックな分布を参照してください。
スケール
このオプションでは、軸に対する確率スケールを選択します。各確率スケールは、それらの「スケール」ボタンの左側に表示されている分布名に対応しています。各分布は、該当するスケールでは直線で描かれます。ある分布をあてはめ、その分布の確率スケールを軸に設定したとします。そのときに点が直線に沿っているならば、その分布はデータに良くあてはまっていることを示します。
初めのグラフでは、故障が観測された時間に対して、ノンパラメトリックな推定値(Kaplan-Meier推定値もしくはTurnbull推定値)がプロットされます。また、それらに対する信頼区間が、青色の横線で表されます。
ヒント: ノンパラメトリックな推定量のプロットをカスタマイズするには、[ファイル]>[環境設定]>[プラットフォーム]>[寿命の一変量]を選択し、[時点別区間を塗る]、[同時区間を塗る]、あるいは[階段関数を描く]といった環境設定を選択します。
デフォルトでは、プロットの最上部に、右側打ち切りされた時間に点がプロットされています。
ヒント: この右側打ち切りを示すプロットを非表示にするには、[ファイル]>[環境設定]>[プラットフォーム]>[寿命の一変量]を選択し、[右側打ち切りのマーカーを表示する]のチェックボックスをはずしてください。
「分布の比較」レポートには、選択した各分布の情報が次のように示されます。
• 確率プロットに、推定された累積分布関数の曲線が描かれる
• 確率プロットに、累積分布関数に対する信頼区間が陰影つきの領域で描かれる
• 特定の時点における累積確率を示す分布プロファイルが描かれる
図3.9は、「分布の比較」レポートの一例です。ロジスティック(黄色)と指数(赤紫)の累積分布関数が描かれています。なお、このプロットの軸には、指数分布の確率スケールが使われています。
図3.9 「分布の比較」レポートと「分布プロファイル」
ここでは、「分布の比較」レポートで使用できる分布について説明します。
注: 「競合する原因」レポートの分布については、故障原因ごとの分布の比較に使用できる分布を参照してください。
使用できる分布については、パラメトリックな分布に一覧と説明があります。これらのパラメトリックな分布は、主に以下の4つに分類できます。
• 基本的な分布
• 閾値分布
• ゼロ強調分布
ヒント: デフォルトで使用可能な分布を設定するには、[ファイル]>[環境設定]>[プラットフォーム]>[寿命の一変量]を選択し、不要な分布のチェックボックスをオフにします。すると、閾値、DS(故障部分母集団)、ZI(ゼロ強調)、対数一般化ガンマ、一般化ガンマといった分布が一覧表示されます。デフォルトでは、すべての分布がチェックされ、使用可能になっています。
「分布の比較」パネルにどの分布が表示されるかは、状況によって異なります。「環境設定」で無効にされておらず、かつ、状況に適している分布が表示されます。
基本的な分布は、データ中のすべての故障時間が正である場合、常に使用できます。基本的な分布は次のとおりです。
• 対数正規
• Weibull
• 対数ロジスティック
• Fréchet
• 正規
• 最小極値
• ロジスティック
• 最大極値
• 指数
• 対数一般化ガンマ
• 一般化ガンマ
注: データに負またはゼロが含まれている場合には、上記のなかからは、正規・最小極値・ロジスティック・最大極値・対数一般化ガンマだけが使用できます。
閾値(TH; Threshold)をもついくつかの分布が用意されています。閾値パラメータをもつ確率分布は、対数-位置-尺度型の確率分布に、閾値パラメータを加えたものです。閾値パラメータをもつ分布では、分布の最小値が0でなくなります。これらの閾値分布は、すべてのユニットが閾値までは生存していると仮定します。このような閾値分布は、中程度もしくは高程度に、分布がシフトしている場合に適しています。閾値分布は次のとおりです。
• 閾値 対数正規
• 閾値 Weibull
• 閾値 対数ロジスティック
• 閾値 Fréchet
故障部分母集団(DS; Defective Subpopulation)の分布は、すべての故障時間が正の場合にのみ使用できます。これらのDS分布は、故障をもたらす不具合がごく一部のユニットにしか生じない場合に適しています。一部の部分母集団だけに故障が生じる状態を表現したい場合には、これらのDS分布を用いてください。用意されているDS分布は次のとおりです。
• DS 対数正規
• DS Weibull
• DS ロジスティック
• DS Fréchet
「寿命の一変量」プラットフォームでは、[イベントまでの時間]データの最小値がゼロである場合に、次のゼロ強調(ZI; Zero-Inflated)の分布を使用できます。
• ゼロ強調 対数正規(ZI 対数正規)
• ゼロ強調 Weibull(ZI Weibull)
• ゼロ強調 対数ロジスティック(ZI 対数ロジスティック)
• ゼロ強調 Fréchet(ZI Fréchet)
ゼロ強調分布は、ユニットの一部がゼロ時点で故障する場合に適しています。通常の分布で想定されるよりもゼロ時間での故障個数が多いデータに対して、ゼロが発生する確率を追加してモデル化します。
故障がまったく生じなかったデータを分析する場合、前述した分布はいずれもデフォルトでは使用できません。[Bayes推定]オプションが利用可能な場合にBayes推定を行うには、[ファイル]>[環境設定]>[プラットフォーム]>[寿命の一変量]を選択し、[故障ゼロの場合はWeiBayes分析のみ]のチェックボックスを外します。故障がまったくないデータに対するWeiBayes分析を参照してください。
次のパラメトリックな分布ではBayes推定が使用できます。
• 対数正規
• Weibull
• 対数ロジスティック
• Fréchet
• 正規
• 最小極値
• ロジスティック
• 最大極値
これらの分布における事前分布のハイパーパラメータの指定方法については、Bayes推定の事前分布を参照してください。