競合原因モデル(competing cause model)では、全体の累積分布関数が次のように定義されます。
ここで、Fi(x)、i = 1、…, kは、個々の原因における累積分布関数です。信頼限界も簡単に計算できます。関係する推定値がすべて最尤推定値だからです。
競合原因分析で、ある故障原因の分布パラメータを特定の値に固定したい場合は、その故障原因の「原因ごとの分析」レポートにてパラメータ値を指定します。「寿命の一変量 - 故障原因: <名前>」レポートにおける「パラメトリック推定」レポートでパラメータ値を指定してください。[モデルの更新]をクリックすると、指定したパラメータ値が設定され、全体の分布に反映されます。
次の例では、競合原因分析でパラメータを指定する方法を説明しています。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Reliability」フォルダにある「Appliance.jmp」を開きます。
2. [分析]>[信頼性/生存時間分析]>[寿命の一変量]を選びます。
3. 「故障までの時間」を[Y, イベントまでの時間]に指定します。
4. 「原因コード」を[故障原因]に指定します。
5. 「信頼区間の方法」を[尤度]にします。
6. [パラメータ指定の分布も使用する]を選択します。
7. [OK]をクリックします。
図3.25 原因1を削除したパラメータ指定モデル
デフォルトでは、原因1にはデータが十分ないので、「除去」されています。ここでは、この原因を「除去」として処理したくないとします。
8. 原因1の「原因ごとの分析」レポートを開きます。「寿命の一変量 - 故障原因:1 度数:1」という名前のレポートです。
9. 「パラメトリック推定 - Weibull」の赤い三角ボタンをクリックし、[分布パラメータの指定]を選択します。
10. [Weibull β]を選択して、「2」を入力します。
11. [更新]をクリックします。
図3.26 Weibull βを指定したパラメータ指定モデル
「パラメトリック推定値 - Weibull」レポートで、βを2と仮定すると、パラメータαは22463.391と推定されます。以下の操作により、この分布を原因1の故障分布に使用します。
12. レポートウィンドウの最上部の「故障原因の組み合わせ」が表示されるまで上にスクロールします。
13. 原因1の「除去」ボタンを選択解除します。
14. 原因1の分布に、[パラメータ指定 Weibull]を選択します。
15. [モデルの更新]をクリックします。
図3.27 原因1が表示された更新モデル
これらの操作により、パラメータが指定されたWeibull分布を原因1に適用して、全体のモデルが計算されました。
故障原因にBayesモデルを指定するには、競合原因分析でのパラメータ指定の手順と同じような手順に従います。各原因に対する「寿命の一変量」の「統計量」の「パラメトリック推定」における「Bayes推定」レポートで、Bayesモデルを指定します。Bayes推定 - <分布の名前>を参照してください。
ある原因に対してBayes推定が適用された場合、全体の累積分布関数を求めるのに乱数シミュレーションが利用されます。たとえば、2つの故障原因があるとします。1 つ目の原因には通常のWeibull分布を最尤推定し、2 つ目の原因ではWeibull分布をBayes推定したものを用いるとします。このとき、1つ目の原因においては、パラメータベクトルθ1を推定するのに最尤法が使われます。一方、2つ目の原因においては、パラメータベクトルθ2の事後分布を求めるのにBayes推定が使われます。
この場合、全体における累積分布関数の中央値や分位点は、F(x, θ1, θ2)と記し、次のように求められます。
• 1つ目の原因に対してはパラメトリックなブートストラップを実行します。最尤推定値の漸近分布から標本を乱数で生成します。に対する漸近分布から生成された値をとします。
• 一方、2つ目の原因に対しては、Bayes推定の枠組みで、θ2の事後分布に従う乱数を生成します。これをとします。
• 生成されたとの各セットに対して、F(x, θ1, θ2)に対する推定値F*(x, θ1, θ2)を求めます。
• F*(x, θ1, θ2)から、全体の累積分布関数における中央値や分位点を求めます。これらの中央値や分位点が、分布プロファイルにおいて、対応するx値のところにプロットされます。
故障原因にWeibayesモデルを指定する手順は、競合原因分析でのパラメータ指定の手順と同様です。まず、各原因に対する「寿命の一変量」の「統計量」の「パラメトリック推定 - Weibull」レポートで、[分布パラメータの指定]を選択してください。そして、「分布パラメータの指定」レポートで、「Weibayes」オプションにチェックを入れてください。競合原因分析においてはWeibayesモデルがBayesモデルとして処理され、パラメータαの事後分布からブートストラップ標本が抽出されます。Liu and Wang(2013)を参照してください。
競合原因分析での平均余寿命は、故障時間を乱数シミュレーションで生成することにより計算されています。赤い三角ボタンのメニューの[設定]オプションにより生成される乱数の個数を変更できます。この乱数の個数を、ここではmとします。
時間tでの平均余寿命の推定値を求めるために、「時間tまで生存していたもの」という条件付けをした分布からm個の乱数を生成します。そして、これらの乱数の平均を計算します。
平均余寿命に対する信頼区間をJMPに計算させるには、「設定」ウィンドウのチェックボックスを選択する必要があります。そのチェックボックスにチェックすると、ブートストラップ標本の回数(ブートストラップ標本の標本数)を設定するためのオプションが表示されます。この回数をnとします。
信頼区間を計算するために、最尤推定値の漸近分布、またはBayes推定における事後分布のどちらかに基づいて、シミュレーションがn回、行われます。1回のシミュレーションごとにm個の乱数が生成され、そのm個の乱数から平均余寿命が計算されます。そして、n個の平均余寿命から、信頼区間が計算されます。
ここでは、「混合分布」レポートの[予測の保存]オプションによって保存される式を説明します。
次の記号を用います。
は、混合の割合wiに対する推定値です。
は、累積分布関数Fiに対する推定値です。
は、Fiに対応した確率密度関数に対する推定値です。
• 観測値yが打ち切りデータではない場合、保存される値は次のように求められます。
• 観測値が打ち切りデータの場合には、打ち切りがなかった場合における上式の確率密度値を、以下に述べるものに置き換えて求められます。
(右側打ち切りの場合)
(左側打ち切りの場合)
(区間打ち切りの場合)