この例では、ある企業の人事部が社員の業務満足度を向上したいと考えているとしましょう。そのために、「構造方程式モデル」プラットフォームを使って、200人を対象に実施した業務満足度に関する調査の回答データを分析します。この調査には、業務満足度のさまざまな側面に関する11個の質問が含まれています。ここでは、構造回帰モデルを仮定し、調査データに基づいて、リーダーシップの要素、役割の葛藤、全体的な業務満足度という3つの潜在変数について調べることにします。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Job Satisfaction.jmp」を開きます。
2. [分析]>[多変量]>[構造方程式モデル]を選択します。
3. [Support_L]から[Supervisor_S]までを選択し、[モデルの変数]をクリックします。
4. [OK]をクリックします。
「構造方程式モデル」レポートが開き、「モデルの指定」アウトラインが表示されます。
5. 「矢印の先」で[Support_L]から[Interact_L]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のボックスに「Leadership」(リーダーシップ)と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
6. 「矢印の先」で[Person_C]から[Inter_C]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のボックスに「Conflict」(葛藤)と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
7. 「矢印の先」で[General_S]から[Supervisor_S]までを選択し、[潜在変数の追加]の横のボックスに「Satisfaction」(満足度)と入力して、[潜在変数の追加]をクリックします。
8. 「矢印の元」で[Leadership]を選択し、「矢印の先」で[Satisfaction]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
9. 「矢印の元」で[Leadership]を選択し、「矢印の先」で[Conflict]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
10. 「矢印の元」で[Conflict]を選択し、「矢印の先」で[Satisfaction]を選択して、一方向の矢印ボタン()をクリックします。
11. 「モデルの指定」レポートの左上にある「モデル名」のテキストボックスに、「潜在変数を含むパス分析」と入力します。
12. [実行]をクリックします。
13. (オプション)「構造方程式モデル: 潜在変数を含むパス分析」の赤い三角ボタンをクリックし、[Path Diagram Setting]>[レイアウト]>[Top to Bottom]を選択します。
14. (オプション)「パラメータ推定値」の横にあるグレーの開閉アイコンをクリックします。
「パラメータ推定値」レポートを閉じると、パス図の全体が見えるようになります。
図8.2 「構造方程式モデル」レポート
「あてはめの要約」によると、このモデルのカイ2乗は34.27、自由度は41です。p値は0.7624と、有意ではないことに注目してください。これは、「このモデルのあてはまりが良い」という帰無仮説を棄却する証拠はないということを示しています。したがって、このモデルはデータに適度にはあてはまっているであろうと結論できます。
ただし、カイ2乗値は標本サイズに依存するので、よくあてはまっているモデルでも、有意になる場合があります。モデル適合度を判断する指標には、CFI(comparative fit index; 比較適合の指標)およびRMSEA(root mean square error of approximation; 近似の平均平方誤差平方根)があります。これらの指標は、0から1の間の値をとります。CFI>0.90、RMSEA<0.10であることが、適合度の点では望ましいです(Browne and Cudeck 1993; Hu and Bentler 1999)。この例では、CFIは1であり、RMSEAは0です。よって、現在のモデルは得られたデータに良くあてはまっていると言えるでしょう。
15. 「構造方程式モデル: 潜在変数を含むパス分析」の赤い三角ボタンをクリックし、[標準化したパラメータ推定値]を選択します。
図8.3 「標準化したパラメータ推定値」レポート
「標準化したパラメータ推定値」レポートの「因子負荷」の推定値は、潜在変数で構成された測定モデルを解釈するのに役立ちます。標準化した因子負荷量は、顕在変数(観測された変数)と潜在変数(観測されていない変数)の相関です。このレポートでは、すべての潜在変数の因子負荷量が0.52から0.67の間に収まっており、「Leadership」、「Conflict」、「Satisfaction」にそれらの潜在変数が影響していることが示唆されています。
また、「回帰」のパラメータ推定値を見ると、「Leadership」から「Conflict」、「Conflict」から「Satisfaction」に対する効果はそれぞれ負の値となっています。一方、「Leadership」から「Satisfaction」に対する効果は正の値となっています(図8.2)。つまり、「Leadership」のスコアが高いほど、「Conflict」が低く「Satisfaction」が高くなるように関係しています。「Conflict」のスコアが高いほど、「Satisfaction」が低くなるように関係しています。「回帰」には、これらのパラメータ推定値に対するp値も表示されています。「Leadership -> Conflict」、「Leadership -> Satisfaction」の回帰パラメータは両方とも、α = 0.05の水準で有意となっています。したがって、「これらの間には、関係があるだろう」と結論付けることができます。
注: 「標準化したパラメータ推定値」レポートにおける「回帰」のパラメータ推定値は、効果の大きさ(効果量; effect size)と解釈することもできます。「標準化したパラメータ推定値」は、説明変数の標準偏差が±1変化したときに、結果の標準偏差が何単位変化するかということを示しています。
16. 「構造方程式モデル: 潜在変数を含むパス分析」の赤い三角ボタンをクリックし、[正規化した残差のヒートマップ]を選択します。
図8.4 正規化した残差のヒートマップ
「正規化した残差のヒートマップ」によると、正負の両方向において2単位を超える値にはなっています。これは、モデルがデータによくあてはまっていることをさらに裏付ける証拠となっています。正規化した残差によって、モデルのあてはまりの悪さをより細かいレベルで調べることができますが、この例の正規化した残差からは、局所的なあてはまりの悪さを示す証拠は見当たりません。