「Process Measurements.jmp」サンプルデータには、ある製品の製造に必要な7種類の工程における測定値が含まれています。各工程の仕様限界は、データテーブルの各列に、列プロパティとして保存されています。まず、工程データの分析を検討してみると、正規分布でないことがわかります。そのため、「工程能力」プラットフォームで非正規分布に基づく工程能力指数を計算する機能を使用します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Process Measurements.jmp」を開きます。
2. [分析]>[一変量の分布]を選択します。
3. 「列の選択」リストから7列すべてを選択し、[Y, 列]をクリックします。
4. [ヒストグラムのみ]チェックボックスをオンにします。
5. [OK]をクリックします。
ヒストグラムを見るとほとんどの分布は歪んでいて、正規分布に従っていないようです。そこで、工程ごとに、いくつかの確率分布から最もよくあてはまるものを見つけて工程能力指数を計算してみましょう。
1. [分析]>[品質と工程]>[工程能力]を選択します。
2. 「列の選択」リストから7列すべてを選択し、[Y, 工程変数]をクリックします。
3. [Y, 工程変数]リストから7列すべてを選択します。
4. 「分布オプション」パネルを開き、「分布」メニューから[最良]を選択します。
5. [工程分布の設定]をクリックします。
「Y, 工程変数」リストの変数名に「&分布(最良)」という接尾辞が追加されます。[最良]オプションは、各変数に最もあてはまりの良いパラメトリックな確率分布をあてはめます。使用可能なパラメトリックな確率分布は、正規分布・ベータ分布・指数分布・ガンマ分布・Johnson分布・対数正規分布・二重正規混合分布・三重正規混合分布・SHASH分布、Weibull分布(図H.3)です。
6. 「非正規分布のオプション」アウトラインを開きます。「非正規の工程能力指数手法」が[パーセント点]、「Johnson分布の推定法」が[分位点一致]、「分布を比較する規準」が[AICc]に設定されていることを確認します。
図H.3 設定後の起動ウィンドウ
Johnson分布の推定法は、デフォルトでは[分位点一致]手法となっています。これは、最尤推定に比べて、計算時間が早く、また、数値結果が発散することが少ないからです。なお、「一変量の分布」プラットフォームでは、Johnson分布の推定には最尤法が使用されています。
7. [OK]をクリックします。
8. 「ゴールプロット」の赤い三角ボタンをクリックし、[全体シグマの点にラベル]を選択します。
9. 「工程能力指数プロット」の赤い三角ボタンをクリックし、[全体シグマの点にラベル]を選択します。
図H.4 変数にラベルを表示した初期レポート
注: プロット上でラベルをクリックしてドラッグし、ラベルの配置を変えると、ラベルが読みやすくなります。また、「工程能力指数プロット」の右側の枠線をクリックしてドラッグし、広くしても、ラベルが読みやすくなります。
「ゴールプロット」には、「工程 7」の点だけが表示されています。また、「工程能力箱ひげ図」には、「工程 7」の箱ひげ図が1つ表示されています。これは、「工程 7」の最良のあてはめが正規分布であるためです。
10. 「工程能力指数プロット」の右側で、「Ppk」の値を2に設定します。
「工程能力指数プロット」には、7つの工程すべてのPpk値が表示されます。「工程 2」と「工程 7」の工程能力指数だけが2を上回っています。「工程能力指数プロット」では、変数名のすぐ右側に、最もあてはまりの良い非正規分布の名前が括弧で囲んで表示されます。「工程 7」は、最もあてはまりの良い分布が正規分布であるため、分布名は表示されません。
11. 「工程能力分析」の赤い三角ボタンをクリックし、[各列に対する詳細レポート]を選択します。
起動ウィンドウで[最良]のあてはめを指定したため、各分布の赤い三角ボタンのメニューで[分布の比較]が選択されています。
12. 下へスクロールし、「工程能力 工程 4(対数正規)」のレポートを確認してみましょう。
図H.5 「工程 4」の詳細レポート
「工程 4」のレポートのタイトルは、工程能力の計算に対数正規分布が使われたことを示しています。「分布の比較」レポートのチェックボックスを見ると、[ノンパラメトリック]と[ベータ]以外のすべてのボックスがオンになっており、9つの分布があてはめられたことがわかります。(これは、起動ウィンドウで[最良]の分布を求めたためです。)「選択されている列」で[対数正規]のラジオボタンがオンになっているのは、「工程 4」のレポートでは対数正規分布を使って工程能力や不適合率の推定値が計算されていることを意味します。
この「分布の比較」レポートは、9つの分布のあてはまりを比較しています。「ヒストグラム - 分布の比較」レポートでは、分布のあてはまりをグラフで確認することができ、「比較の詳細」レポートでは分布の適合度統計量を確認できます。プロットと適合度統計量の両方から、あてはめた確率分布のうち最もあてはまりの良いのは対数正規分布であると判断できます。
「各列の詳細レポート」にデフォルトで表示される情報は、確率分布の密度関数が重ねて描かれたヒストグラム、工程の要約、全体シグマに基づく工程能力指数、パラメータ推定値、不適合率の観測値と推定値です。