被覆配列(covering array)は、構成要素やサブシステムの間の交互作用によって故障が生じる決定論的なシステムを実験するのに適しています。被覆配列は、ソフトウェア設計、回路設計、ネットワーク設計など、次のような状況で役立ちます。
• 試験費用が高い。
• 試験の主な目的が、故障の原因である交互作用を見つけることである。
• 試験の結果は決定論的に決まっており、合格か不合格のどちらかである。
• 試験を反復しても同一の結果が出るだけなので、反復には意味がない。
• 計画の効率は、冗長な実施を含めずに可能な条件のうちいくつをカバーできるかによって決まる。
システム試験はコストが非常にかかるため、試験回数をどれだけ減らせるかが重要です。高次のすべての交互作用を試験するのは、ほぼ不可能であり、不要なことが少なくありません。経験的に言えることは、ほとんどの故障は、少数の構成要素の交互作用に起因します。故障を引き起こすと考えられる構成要素の最大の組み合わせのサイズ(交互作用の次数)を強度(strength)と言います。高い強度の交互作用までも検出したい場合には、試験の回数を増やさなければいけません。
「被覆配列」プラットフォームでは、計画における強度を指定することができます。また、必要な場合には、許可されない因子水準の組み合わせを指定することもできます。「被覆配列」プラットフォームは、分析者の状況に合わせて非常に効率の高い計画を構築します。作成された計画の性質は、被覆度(coverage)という指標で評価できます。また、データテーブルに保存された計画のスクリプトを使えば、結果を分析することができます。
被覆配列は、因子水準の特定の組み合わせが実行できない場合にもよく使われます。「被覆配列」プラットフォームは、因子水準の組み合わせに制約が課されている場合でも非常に効率的な被覆配列を見つけることができます。
被覆配列の構造や計算アルゴリズムの背景については、Colbourn(2004)、Colbourn et al.(2011)、Hartman and Raskin(2004)、およびMartirosyan(2003)を参照してください。因子水準に制約がある場合の被覆配列については、Cohen et al.(2007)およびMorgan(2009)を参照してください。
強度 tの被覆配列とは、t個の因子から構成されるすべての組み合わせを含む計画を指します。あるk個の因子から構成される特定の組み合わせで故障が生じるとします。その組み合わせでの故障を確認した場合、「その交互作用による故障を検出した」と言います。強度tの計画を使うと、t個までの因子の交互作用による故障を検出できます。
文献では、被覆配列を、因子被覆計画(factor covering design)と呼ぶこともあります。背景および詳細については、Yilmaz et al.(2014)、Cohen et al.(2003)、Dalal and Mallows(1998)を参照してください。
被覆配列の性質を理解するために、2水準のカテゴリカル因子が7つある状況を考えてみましょう。その状況で、任意の2因子における水準のペアが、すべて登場するような計画を考えてみましょう。
次のような、8実験で、レゾリューションIIIの主効果のみの計画は、その条件を満たしています。
図20.2 強度2、レゾリューションIIIの計画
この要因計画は、任意の2因子における水準のペアをすべて含むため、強度2の被覆配列です。たとえば、X1とX2に関して、次のような水準のペアが2 回ずつ出現します。
• L2とL1
• L2とL2
• L1とL1
• L1とL2
しかし、強度2の被覆配列は6実験しか必要としません。
図20.3 強度2の被覆配列
6回の実験で、任意の2因子における水準のペアがすべて出現します。被覆配列計画は、レゾリューションIIIの計画よりも少ない実験回数で、強度2の計画を作成しています。その意味で、被覆配列計画は、レゾリューションIIIの計画よりも効率が良いです。
被覆配列の効率は、求めている被覆度を何回の実験で達成できるかで測ります。実験回数が少なければ少ないほど、計画の効率が高いと言えます。