この例では、まず、不適合率を予測する前提が成立しているかどうかを確認します。そのために、まず、工程能力分析を管理図ビルダーから直接実行します。データは、サイズが5のサブグループ22群で構成されています。なお、2つの連続したサブグループに3個ずつ、合計6個の欠測値があります。
管理図ビルダーによって、工程の安定性と正規性をチェックすることができます。また、管理図ビルダーでも、工程能力分析を行えます。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Quality Control」フォルダにある「Clips2.jmp」を開きます。
2. [分析]>[品質と工程]>[管理図ビルダー]を選択します。
3. 「日付」を「サブグループ」ゾーンにドラッグします。
4. 「取っ手の間隔」を「Y」ゾーンにドラッグします。
図H.21 取っ手の間隔のXBar管理図とR管理図
管理図から、「取っ手の間隔」が時間が経過しても安定していることがわかります。「取っ手の間隔」列に「仕様限界」列プロパティがあるので、「工程能力分析」レポートが管理図の右側に表示されます。
図H.22 「取っ手の間隔」の工程能力分析のヒストグラム
ヒストグラムとあてはめた青色の曲線から、「取っ手の間隔」の分布がほぼ正規分布に従うことがわかります。工程は安定していますが、「取っ手の間隔」の分布は仕様範囲の右側にシフトしています。
「工程の要約」レポートには、「仕様限界」列プロパティに保存されている仕様限界が表示されています。また、群内変動から計算されたシグマの推定値(群内シグマの推定値)が、標本の標準偏差から計算された全体の推定値(全体シグマの推定値)と大きく異ならないことも示されています。それにより、「安定指数」が1に近い値(0.979268)になっています。この例の工程は安定しているため、安定指数が1に近くなることは期待される結果です。
5. 「不適合率」レポートの中を右クリックして、[列]サブメニューから[群内σ PPM]を選択します。
図H.23 工程能力指数と「不適合率」レポート
サブグループの変動から計算されたCpkは0.966で、工程があまり優れていないことを示しています。Cplの値は優れたパフォーマンスを示していますが、これは工程が下側仕様限界からシフトして離れているからです。不適合の多くは、「取っ手の間隔」の値が大きいことに起因しています。
Cpkの信頼区間は広く、0.805~1.128であることに注目してください。104個の観測値があるにも関わらず、信頼区間は広くなっています。工程能力指数は比であるため、一般的に、推定のばらつきが非常に大きいです。工程能力指数の点推定値だけで解釈すると、間違った結論に至りやすいです。
「不適合率」レポートにおける仕様限界外となる割合の推定値は、工程の性能を知るための直接的な指標です。「不適合率」レポートにおけるPPMの値から、「取っ手の間隔」の値は下側仕様限界未満にはほとんどならないことがわかります(100万個につき1.4個)。一方、「取っ手の間隔」が上側仕様限界を超えるのは、100万個につき1869.0個です。
工程平均が目標値からずれている場合、Cpの値は、工程平均が目標値に一致するように調整されたと仮定した場合の潜在的な工程能力を示します。この工程平均が目標値14.8に一致するように調整された場合、工程能力は1.264、信頼区間は1.071~1.457となります。
「取っ手の間隔」の安定性と正規性を確認したので、次に、「工程能力」プラットフォームによってその他の情報を見てみましょう。
1. [分析]>[品質と工程]>[工程能力]を選択します。
2. 「取っ手の間隔」を選択し、[Y, 工程変数]をクリックします。
3. 「サブグループ化」アウトラインを開きます。
4. 「列の選択」リストから[日付]を選択し、「役割」リストから[取っ手の間隔]を選択します。
5. [サブグループ列からの枝分かれにする]をクリックします。
デフォルトでは、「群内変動の統計量」は[不偏標準偏差の平均]に設定されています。管理図ビルダーの例(管理図ビルダーを介した工程能力分析)では、群内範囲が使用されました。
6. [OK]をクリックします。
図H.24 「取っ手の間隔」のゴールプロットと箱ひげ図
ゴールプロットは、「取っ手の間隔」のPpkがほぼ1に等しいことを示しています。箱ひげ図は、ほとんどの値が仕様限界の範囲内にあることを示していますが、大部分のデータ値は仕様範囲内の右側にシフトしています。
7. 「工程能力分析」の赤い三角ボタンをクリックし、[各列に対する詳細レポート]を選択します。
このレポートは、管理図ビルダーでも取得できるものです。ただし、先ほどの例の「群内シグマ」は、範囲の平均に基づいていましたが、今回の例では標準偏差の平均に基づいています。「取っ手の間隔」の工程能力分析のヒストグラムおよび工程能力指数と「不適合率」レポートを参照してください。