信頼性/生存時間分析 > 比例ハザードのあてはめ > 効果や水準が複数あるモデルの例
公開日: 11/25/2021

効果や水準が複数あるモデルの例

この例では、「VA Lung Cancer.jmp」サンプルデータに対して、比例ハザードモデルをあてはめます。このデータテーブルは、ランダム化臨床試験によって得られたデータです。外科手術が難しい肺がんを患った男性患者を、標準的な化学療法の群(「Standard」)と、新しい化学療法を受ける処置群(「Test」)に割り付けました。これらのどちらの群に割り付けられたかは、「処置」列で示されています。この試験の目的は、処置によって生存時間に違いが生じるかどうかを、特に腫瘍の種類(「セル」)を考慮しながら評価することです。このデータの詳細については、Prentice(1973)およびKalbfleisch and Prentice(2002)を参照してください。

ここでは、以下のような説明変数をもつ比例ハザードモデルをあてはめます。

患者が以前治療を受けたことがあるかどうか(「前治療」

患者の年齢(「年齢」

肺がん診断から試験開始までの時間(「月数」

一般全身状態の指標(「KPS」

「年齢」「月数」「KPS」は連続尺度の測定値です。「セル」「処置」「前治療」はカテゴリカルな変数(名義尺度の変数)です。名義尺度の「セル」には、「Adeno」・「Large」・「Small」・「Squamous」の4つの水準があります。

つまり、このモデルには、複数の効果があり、そのうち1つの名義尺度の効果は複数の水準をもちます。次の操作によって、比例ハザードモデルがあてはめられ、また、リスク比が計算されます。

1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「VA Lung Cancer.jmp」を開きます。

2. [分析]>[信頼性/生存時間分析]>[比例ハザードのあてはめ]を選択します。

3. 「生存日数」[イベントまでの時間]に指定します。

4. 「打ち切りの有無」[打ち切り]に指定します。

5. 「セル」「処置」「前治療」「年齢」「月数」「KPS」を選択し、[追加]をクリックします。

6. [実行]をクリックします。

7. (オプション)「平均におけるベースライン生存曲線」の開閉ボタンをクリックしてプロットを閉じ、「効果の要約」の開閉ボタンをクリックしてレポートを閉じます。

図15.6 効果や水準が複数ある比例ハザードモデルのレポート 

Report Window for Proportional Hazards Model with Multiple Effects and Levels

結果について次の点を確認してください。

「モデル全体」レポートで、「p値(Prob>Chisq)」が小さい(<.0001)ことから、モデルにおける少なくとも1つの効果は、生存率に影響を与えているということがわかります。

「効果に対する尤度比検定」レポートで、「p値(Prob>ChiSq)」の値が小さいことから、「KPS」「セル」の少なくとも1水準は、他の水準と異なると結論できます。一方、「処置」「前治療」「年齢」「月数」の各効果は有意ではありません。

8. 「比例ハザードモデルのあてはめ」の赤い三角ボタンをクリックし、[リスク比]を選択します。

図15.7 「リスク比」レポート 

Risk Ratios Report

3水準以上のときのリスク比

図15.7には、連続尺度の効果(「年齢」「月数」「KPS」)と名義尺度の効果(「セル」・「処置」「前治療」)のリスク比(ハザード比)が表示されています。ここでは、連続尺度の効果「年齢」と、4水準の名義尺度の効果(「セル」)に対する結果を説明します。

「VA Lung Cancer.jmp」サンプルデータの連続尺度の効果「年齢」のリスク比は、次式で計算されます。

単位リスク比

exp(b) = exp(-0.0085494) = 0.991487

範囲リスク比

exp[b(xmax - xmin)] = exp(-0.0085494 × 47) = 0.669099

名義尺度の効果「セル」に対しては、「セルのリスク比」表に、水準のすべての組み合わせに対するリスク比が表示されます。なお、水準数がk個のカテゴリカル変数に対して実際に推定されるパラメータ数は、k - 1個です。「セル」は4水準ですので、「パラメータ推定値」表には3つ(「Adeno」・「Large」・「Small」)のパラメータ推定値が表示されています。「Squamous」の推定値は計算されていませんが、他の推定値を合計し、その符号を逆にして求めることができます。下の式は、計算例として、「セル」の2つのリスク比を示しています。

Large/Adeno = exp(bLarge)/exp(bAdeno) = exp(-0.2114757)/exp(0.57719588) = 0.4544481

Squamous/Adeno = exp[-(bAdeno + bLarge + bSmall)]/exp(bAdeno)

= exp[-(0.57719588 + (-0.2114757) + 0.24538322)]/exp(0.57719588) = 0.3047391

なお、基準となる水準を逆にしたリスク比は、これらのリスク比の逆数(つまり、1÷リスク比)で計算できます。

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).