[平行性の検定]オプションを選択すると、あてはめたモデルがグループ間で同じ形状で、X軸に沿ってずれているだけかどうかが分析されます(図14.9)。「Bioassay.jmp」の例では、製剤Bの曲線が、他の3つ製剤の曲線よりも左にずれています。しかし、すべての曲線が同じ形状なのか(つまり、平行にずれているだけなのか)、製剤Bの形状が異なるのかは、わかりません。平行性の検定を行うと、異なる製剤の曲線について、形状が同じで、横軸に沿ってずれているだけかどうかを判断できます。あてはめたモデルの赤い三角ボタンのメニューから[平行性の検定]を選択すると、レポートが追加されます。
図14.9 平行性の検定
このレポートには、以下の結果が表示されます。
モデル比較の検定
平行性に対するF検定およびカイ2乗検定の結果が表示されます。この検定では、フルモデル(Full SSE)と縮小モデル(Fit SSE)の誤差平方和を比較しています。この検定での完全モデルは、グループごとのパラメータがすべて異なっているモデルです。一方、縮小モデルは、変曲点以外のすべてのパラメータが、すべてのグループで同じモデルです。p値が小さいことは、グループモデル間に有意差があることを示しています。したがって、いくつかのパラメータがグループ間で同じになっている縮小モデルでは不十分で、フルモデルを使用する必要があります。図14.9では、p値が0.05より大きいため、曲線の形状に差があるという十分な証拠はありません。この例では、縮小モデルのほうが適切そうです。
検定統計量は次のように求められます。
F値
[(Fit SSE - Full SSE) / NDF] / [Full SSE / DDF]
カイ2乗
Fit SSE - Full SSE
平行性でのパラメータ推定値
縮小モデルにおけるパラメータ推定値が表示されます。また、縮小モデルの曲線もプロットされます。ここでの縮小モデルは、変曲点以外のすべてのパラメータがすべてのグループにおいて同じになっているモデルです。製剤Bの変曲点は、他の3つの製剤の変曲点よりずっと低い位置にあります。
効力比
グループ変数の水準ごとに、効力および効力比(relative potency)を計算します。効力は10^(EC50)です。ここで、EC50は応答が中間値となるときの用量です。ロジスティック2P、3P、4Pの場合、効力は、変曲点パラメータを指数変換した値です。効力比は、これらの効力の比として計算されます。たとえば、図14.10では、 standardに対するtest Aの効力比はPotencytest A/Potencystandardです。
図14.10 グループ別の効力比
図14.10の[standard に対する効力比]パネルを見ると、製剤Aと製剤Cの効力比はほぼ1です。これは、2つの製剤の毒性が標準の製剤に近いことを意味します。製剤Bの効力はstandardより低い値です。つまり、製剤Bの毒性は、濃度に対してstandardよりも速く増加します。
平行性の検定からは、曲線が平行であることが示唆されており、もし平行性が成立していれば効力比が意味を持ちます。効力比を見る限り、製剤Bの毒性は他の製剤より強いことが示唆されています。これらの結果と過去の試験結果と総合して、製剤Bの毒性が最も高いかどうかを考えることができます。