「支払意思額」(willingness to pay)とは、製品の新しい機能に対して顧客が支払うであろう価格を指します。「支払意思額」は、基準機能の効用と等しくなる、新機能の価格です。たとえば、40 GBのハードディスクを搭載したパソコンが、1000ドルだったとします。80 GBのハードディスクに対する支払意思額は、ハードディスクを80 GBにした場合、1000ドルである40 GBのパソコンと同じ効用をもたらすのに、どれぐらいの価格にできるかを示します。
[支払意思額]オプションを選択すると、「支払意思額」起動ウィンドウが開きます。図4.20は、「Laptop Profile.jmp」データテーブルにある「選択モデル」スクリプトを実行した後、赤い三角ボタンメニューから[支払意思額]オプションを選択したときに表示されるウィンドウです。
因子
分析に含まれる変数。製品の機能や被験者の属性などです。
基準
各因子の基準設定。カテゴリカルな因子に対しては、リストから基準値を選択してください。連続尺度の因子に対しては、基準値を入力してください。
役割
因子の種類。
機能因子
支払意思額を求めたい製品やサービスの機能。
価格因子
選択実験で提示された価格の因子。価格因子は連続尺度でなければならず、1回の「支払意思額」分析において1つの価格因子しか指定できません。
背景因子 定数
「支払意思額」の計算で固定にする因子。通常は、被験者に関する因子を指定します。
背景因子 変数
「支払意思額」の計算で水準ごとに固定する因子。通常は、被験者に関する因子を指定します。被験者に関する因子を[背景因子 定数]ではなく[背景因子 変数]に指定すると、その因子の全水準に対して支払意思額が計算されます。
レポートの表に、基準となる設定も含める
「支払意思額」レポートに、価格変更を加える前の基準設定が表示されます。
ヒント: このチェックボックスをオンにしてデータテーブルに出力した場合、そのデータテーブルには基準となる設定も出力されます。
データテーブルにも出力
「支払意思額」レポートを含んだデータテーブルが作成されます。
図4.20 「支払意思額」起動ウィンドウ
1回目の「支払意思額」の計算が完了すると、選択した基準値と役割が記憶されます。そのため、基準情報を一度入力するだけで、「支払意思額」の比較を何度も行うことができます。「価格」という名前の因子はないが、分析に使われている連続尺度の因子が1つしかない場合は、「支払意思額」ウィンドウにて、その因子に自動的に「価格因子」の役割が割り当てられます。実際の金銭的な価格以外にも、旅行時間や距離などの金銭的ではないコストも価格因子と考えられます。
「支払意思額」レポートには、各因子の基準値と、基準における効用が表示されます。そして、各因子について、機能設定、価格変更(価格がどれだけ変化するか)、新価格がリストされます。交互作用や2次の効果がない場合は、標準誤差と信頼区間も表示されます。標準誤差や信頼区間は、デルタ法で求められます。
図4.21 「支払意思額」レポート
(階層型Bayesを使ったモデルのあてはめで使用できます。)Bayesチェーンのデータテーブルを使うと、MCMCアルゴリズムで生成される係数値の安定性を調べることができます。作成されるデータテーブルには、(起動ウィンドウで指定した)「Bayes計算の反復回数」に1を足した数の行が含まれます。最初の行(反復1)は、開始値を示します。2行目以降には、生成された乱数が反復の順に保存されます。このテーブルには、以下に示すように、反復数の列、モデルの対数尤度、および各モデル効果に対応する列があります。
反復
反復の番号。最初の行は、開始値です。
対数尤度
その反復におけるモデルの対数尤度。各反復に対する対数尤度をプロットすれば、バーンイン期間(調整段階)での振る舞いを確認できます。
<モデル効果> 適応型シグマ
逆Wishart分布の尺度行列における対角要素の平方根。
<モデル効果> 受容率
MCMCアルゴリズムでの受容率。
<モデル効果> 平均
被験者ごとに生成された係数値、の平均。
<モデル効果> 分散
被験者ごとに生成された係数値、の分散。