「実験計画(DOE)」における一部のプラットフォームでは、連続尺度の因子に対して中心点を追加したり、特定の実験を反復したり、または、計画全体を反復したりできます。ここでは、そのような実験を追加する機能を説明します。
連続尺度の因子に対して中心点を追加すると、非線形効果に起因するあてはまりの悪さ(LOF; Lack of Fit)を検定できるようになります。モデルの指定が不十分なために誤差分散の推定値が実際より大きくなっているかどうかが、あてはまりの悪さの検定により吟味できます。中心点を追加することは、多くの情報をもたらします。
中心点のみで実験を反復することも、中心点以外の実験を反復することもできます。JMPでは、反復されている実験に基づき、モデルに依存しない誤差の推定値(純粋誤差の推定値)を算出します。この純粋誤差の推定値により、あてはまりの悪さを検定できるようになります。
なお、中心点を追加することで、各効果の推定値がより精度が高くなるわけではありません。中心点を追加することにより、曲線性を検出できるようになります。ただし、中心点を追加しただけでは、どの非線形効果が影響を与えているかは特定できません。
曲線性を検出するには、連続尺度の因子における水準を、少なくとも3水準にしなければいけません。決定的スクリーニング計画は因子が3水準となっており、応答に対して強い非線形効果を持つ因子を検出・特定できるようになっています。決定的スクリーニング計画を参照してください。
実験の予算が許すなら、いずれかの実験を反復したり、または計画が最適になるように計画領域内において新しい実験を追加したりできます。反復実験を追加すると、一部の推定値の精度が上がり、あてはまりの悪さ検定の検出力が向上します。ただし、全体の実験回数を一定とした場合、同じ実験を反復しただけの計画は、最適な計画に比べて、モデル効果に対する推定効率が低いです。また、最適な計画に比べて、多くの項を推定できません。
実験計画では、通常、実験の目的に合わせて、出来る限り少ない実験回数で済むように計画が作成されます。実験回数が少なすぎると、非常に大きな効果だけしか検出できません。t検定統計量は、応答平均の変化量をその標準誤差で割った比ですが、誤差の自由度が1しかなければ、その棄却値は12を超えます。そのため、飽和モデルに近い計画の場合には、非常に大きな効果しか検出されません。
あてはまりの悪さ(LOF; Lack Of Fit)の検定についても同様のことが言えます。この検定のあてはまりの悪さを検出する検出力は、分子と分母の自由度の値に依存します。それぞれの自由度が1の場合、0.05の有意水準において有意となるにはF値が150を超える必要があります。それぞれの自由度が2の場合は、F値が19を超える必要があります。後者のケースで検定が有意となるには、あてはまりの悪さの平均平方が、純粋誤差の平均平方の19倍以上でなければなりません。また、あてはまりの悪さの検定は、外れ値の影響も受けやすいです。
あてはまりの悪さの検定の詳細については、『基本的な回帰モデル』のあてはまりの悪さ(LOF)を参照してください。
工業分野では、1回の実験に相当なコストがかかることが多いため、実験回数は最小限に抑えたいでしょう。モデルに含まれるすべての効果を推定するには、少なくとも、それらの効果の項と同じ数だけの実験回数が必要です。効果が影響しているかどうかを判断するには、さらに、誤差分散が精度よく推定されている必要があります。誤差分散の良い推定値を得るには、モデル効果の推定に必要な最小限の実験回数に、少なくとも4を足した実験回数を行ってください。