この例では、被覆配列を使って電話システムをテストします。次の例は、Dalal and Mallows(1998)で解説されている例を元にしています。発呼側電話が受呼側電話に電話をかけます。通話は、インターフェースAまたはBを通じて行われます。分析対象となる因子は5つあります。
• 市場: USA(アメリカ)・UK(イギリス)・Canada(カナダ)・France(フランス)・Mexico(メキシコ)
• 発呼側電話: ISDN、Bus(企業用)・Coin(公衆電話)・Res(家庭用)
• 発呼側インターフェース: AまたはB
• 受呼側電話: ISDN、Bus(企業用)・Coin(公衆電話)・Res(家庭用)
• 受呼側インターフェース: AまたはB
これらの因子をどのように組み合わせると失敗が生じるかを調べます。ただし、次のような組み合わせは現実にはあり得ません。
• どちらかの電話がISDN回線の場合、インターフェースAは使えません。
• 発呼側電話が企業用回線または家庭用回線の場合、インターフェースBは使えません。
因子とその設定が、「Phone Factors.jmp」データテーブルにまとめられています。次の手順で、強度2の被覆配列を作成します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Design Experiment」フォルダの「Phone Factors.jmp」を開きます。
「Phone Factors.jmp」データテーブルには、因子とその設定が保存されています。
2. [実験計画(DOE)]>[特殊な目的]>[被覆配列]を選択します。
「強度: t =」の隣にあるメニューは、デフォルトで[2]に設定されているので、そのまま使います。
3. 「被覆配列」の赤い三角ボタンをクリックし、[因子のロード]を選択します。
「因子」セクションに5つの因子とその水準が入力されます。
図21.10 「Phone Factors」の「因子」
4. [続行]をクリックします。
「因子の制約を定義」セクションが開きます。
許可しない組み合わせを次のいずれかの方法で指定します。
• フィルタで許可しない組み合わせを指定
• スクリプトで許可しない組み合わせを指定
フィルタを使うと、許可しない組み合わせを直感的な方法で指定することができます。スクリプトを使うと、許可しない組み合わせをすばやく簡単に指定できますが、スクリプトを書くか、保存しておく必要があります。この例でフィルタではなくてスクリプトで制約を指定したい場合には、スクリプトで許可しない組み合わせを指定に移動してください。
次のような制約があることを思い出してください。
• どちらかの電話がISDN回線の場合、インターフェースAは使えません。
• 発呼側電話が企業用または家庭用の場合、インターフェースBは使えません。
このオプションでは、フィルタによって許可しない組み合わせを指定します。なお、ここで述べる方法ではなく、スクリプトで許可しない組み合わせを指定で説明されている方法でも、許可しない組み合わせを指定できます。
1. [フィルタで許可しない組み合わせを指定]を選択します。
2. 「フィルタリングする因子の追加」リストから「発呼側電話」と「発呼側インターフェース」を選択し、[+]ボタンをクリックします。
3. Ctrlキーを押しながら、「発呼側電話」で「ISDN」を、「発呼側インターフェース」で「A」をクリックします。
図21.11 「許可しない組み合わせ」パネルで1つ目の制約を指定したところ
クリックしたブロックが強調表示されます。これで、発呼側電話がISDN回線の場合にインターフェースAが使えない、という制約が追加されました。
4. [OR]をクリックします。
5. 「フィルタリングする因子の追加」リストから「受呼側電話」と「受呼側インターフェース」を選択し、[+]ボタンをクリックします。
6. Ctrlキーを押しながら、「受呼側電話」で「ISDN」を、「受呼側インターフェース」で「A」をクリックします。
これで、受呼側電話がISDN回線の場合にインターフェースAが使えない、という制約が追加されました。
7. [OR]をクリックします。
8. 「フィルタリングする因子の追加」リストから「発呼側電話」と「発呼側インターフェース」を選択し、[+]ボタンをクリックします。
9. Ctrl キーを押しながら、「発呼側電話」で「Bus」(企業用)と「Res」(家庭用)を、「発呼側インターフェース」で「B」をクリックします。
これで、発呼側電話が企業用または家庭用の場合にインターフェースBが使えない、という制約が追加されました。
図21.12 「許可しない組み合わせ」の入力が完了したところ
許可しない組み合わせは、スクリプトによって指定することもできます。因子をロードした後(因子のロード)、次のような手順を行います。
1. [続行]をクリックします。
2. [スクリプトで許可しない組み合わせを指定]を選択します。
3. 次のスクリプトをコピーし、「許可しない組み合わせの式」ボックスに貼り付けます。
(発呼側電話 == "ISDN" & 発呼側インターフェース == "A") |
(受呼側電話 == "ISDN" & 受呼側インターフェース == "A") |
(発呼側電話 == "Bus" & 発呼側インターフェース == "B") |
(発呼側電話 == "Res" & 発呼側インターフェース == "B")
図21.13 「許可しない組み合わせの式」の入力が完了したところ
メモ: 次の2つの手順にて乱数シード値を設定すると、以下の数値例と同じ結果が得られます。同じ結果でなくても良い場合は、これらの手順は不要です。
1. 「被覆配列」の赤い三角ボタンをクリックし、[乱数シード値の設定]を選択します。
2. 「632」と入力し、[OK]をクリックします。
3. [計画の作成]をクリックします。
「計画」セクションが開き、全体で20回の試験が表示されます。ウィンドウに「指標」セクションが追加されます。
図21.14 電話の計画の「指標」
「指標」を見ると、強度2の被覆度が100%であることがわかります。つまり、許可されている2因子の組み合わせすべてが、計画に含まれています。また、3因子の組み合わせの65%がカバーされています。
4. [テーブルの作成]をクリックします。
計画をまとめたデータテーブルが作成されます。応答の列や、各種スクリプトが用意されています。
図21.15 被覆配列計画のテーブル
被覆配列計画を実行した後、結果を計画テーブルに記録します。「分析」テーブルスクリプトを実行して結果を要約します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Design Experiment」フォルダの「Phone Data.jmp」を開きます。
2. 「テーブル」パネルで、「分析」スクリプトの横にある緑の三角ボタンをクリックします。
図21.16 電話の実験データを分析する
「要約(Summary)」セクションを見ると、失敗した試験が3つあります。
「失敗分析の詳細(Failure Analysis Details)」セクションには、「2因子間の交互作用(2 Factor Interactions)」レポートが表示されています。2因子間の交互作用となっているのは、失敗を検出する交互作用の強度として2次を指定したからです。
「2因子間の交互作用(2 Factor Interactions)」レポートには、3つの失敗の原因であり得る組み合わせが表示されています。「発呼側インターフェース」の「A」と「受呼側電話」の「公衆(Coin)」の組み合わせが、3つの失敗すべての原因である可能性があります。あるいは、他の組み合わせのいくつかによって、各失敗が生じているのかもしれません。
3. 「2因子間の交互作用(2 Factor Interactions)」レポートの最初の行を選択します。
データテーブルで、4, 16, 19行目が選択されます。これらの組み合わせでは、「市場」・「発呼側電話」・「受呼側インターフェース」の設定とは無関係に失敗が生じます。ただし、試験では試されなかった組み合わせが原因となって失敗が生じる可能性もあります。