多重因子分析(Multiple factor analysis; MFA)は、主成分分析(Principal Components Analysis; PCA)を発展させた手法です。主成分分析と異なるのは、多重因子分析は複数のデータセットを分析できるという点です。多重因子分析で分析される1つ1つのデータセットは、部分テーブル(sub-table)や部分行列(sub-matrix)と呼ばれています。多重因子分析が対象とする部分テーブルでは、含まれる行数は同じでなければいけません。各行は、商品(たとえば、評価をする製品や、官能検査をする食品)に対応しています。JMPの「多重因子分析」プラットフォームを実行するには、すべての部分テーブルが1つのJMPデータテーブルにまとめて保存されていなければいけません。そして、1つ1つの部分テーブルは、列のグループとして定義します。JMPの「多重因子分析」プラットフォームでは、この列のグループを「ブロック」と呼んでいます。ブロックについて、以下の点に注意してください。
• 各ブロックに含まれる列の数は同じでなくてもかまいません。たとえば、味や匂いなどを調べる官能検査においては、1つのブロックに含まれる各列は1名の検査者(パネリスト)が行った各評価に対応します。官能検査では、検査者が調べる評価項目が異なる場合もあります。
• 多重因子分析のブロックに含まれる評価項目やデータは、異なるものであってもかまいません。多重因子分析では、データの尺度(スケール)をブロックごとに調整した後、その尺度化された全データに対して主成分分析を適用します。
多重因子分析の主な目的は、商品や食品(データテーブルの行)における類似性をグラフで描き出すことです。もう1つの目的は、回答が大きく異なる回答者(反応が異なる検査者)を特定することです。なぜなら、ひとりだけ回答が大きく異なっている場合、そのデータは全体の結果にも影響するからです。多重因子分析では、結果を解釈しすくするために、追加変数(supplementary variable)を分析に追加することもできます。
多重因子分析では、測定する項目が異なっていたり、測定装置・回答者・環境状況が異なっていたりしているデータを分析します。多重因子分析は、特に官能検査データの分析で使用されることが多く、検査者間における違いを視覚化します。従来の官能検査では、複数の検査者が一貫した検査ができるようにするために、数時間に及ぶトレーニングが事前に必要でしょう。たとえば、ジュースの味覚に関する官能検査で、「フルーティ」・「甘い」・「さわやか」といった項目を各検査者は評価するとしましょう。従来の官能分析では、すべての検査者が同じような味の評価を行えるように事前にトレーニングしたり、検査者間で同じような評価になっているかどうか確認したりする必要があります。多重因子分析では、こうしたトレーニングを積んでいない検査者の評価データであっても分析を行えます。
多重因子分析が対象とするデータの典型例は、複数の同じ商品・食品・製品を、異なる検査者がいくつかの項目について評価したものです。この場合、1人の検査者から得られたデータを、1つのブロックとします。この官能検査データでは、データ行が測定対象の商品・食品・製品で、データ列が感覚によって判定された項目です。そして、1名の検査者が1つのブロックとして扱われます。なお、「多重因子分析」プラットフォームでは、欠測値は列の平均値に置換されます。
多重因子分析の詳細については、Abdi et al.(2013)を参照してください。