この農業試験では、品種は無作為に抽出されているため、次のようなモデルが仮定できます。「母集団においては、数多くの品種が存在しており、品種ごとに回帰式が成立している。母集団におけるその回帰式は、1つ1つの品種ごとに異なっている。そして、ここでの10品種の1つ1つの回帰式は、その母集団の回帰式から無作為に抽出したものである」というモデルです。このような仮定やモデルをもとに、切片や傾きが、それぞれの品種ごとにランダムに異なっているとします(つまり、回帰式の切片や傾きが、確率変数であると仮定します)。ランダムに分布している切片と傾きには相関があると考えるのが自然でしょう。また、このランダムな切片や傾きは、固定効果で表される期待値を中心として、確率的に分布していると仮定します。固定効果として指定された切片や傾きは、品種ごとにランダムに散らばっている切片と傾きの期待値を表します。この固定効果は、母集団において、ランダムではない、固定された値です。この例は、Littell et al.(2006, p. 320)に記載されているものです。
品種ごとに回帰直線を描いてみると、切片と傾きにおけるばらつきを確認できます(標準最小2乗の回帰)。傾きはあまりばらついていませんが、切片はかなりばらついています。また、切片と傾きには、切片が小さい品種の方が傾きが大きそう、つまり、負の相関がありそうです。
図8.2 標準最小2乗の回帰
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[ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Wheat.jmp」を開きます。
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[分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
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「収率」を選択し、[Y]をクリックします。
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「土壌水分」を選択し、[固定効果]タブで[追加]をクリックします。
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[変量効果]タブをクリックします。
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「土壌水分」を選択し、[追加]をクリックします。
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[実行]をクリックします。
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「混合モデルのあてはめ」レポートのような「混合モデルのあてはめ」レポートが表示されます。なお、紙面スペースの都合上、図では、いくつかのレポートを閉じています。「予測値と実測値のプロット」を見ると、モデルの仮定には特に問題がなさそうです。
収率 = 33.43 + 0.66 * 土壌水分
図8.5 「混合モデルのあてはめ」レポート
図8.6 「ランダム係数」レポート
「モデルの指定」ウィンドウの[多項式の中心化]オプションは、デフォルトで選択されています。そのため、「品種」レポートの冒頭に記されているように、「土壌水分」の効果は、平均である35.583で中心化されます。「固定効果のパラメータ推定値」と「ランダム係数」の各レポートにある品種2の推定値を使い、次のような回帰式が得られます。