2つの平均の差が統計的に有意かどうかを確認する方法の1つは、観測された平均の差が最小有意差(LSD; Least Significant Difference)より大きいかどうかを見ることです。最小有意差は、2つの平均の差の標準誤差をStudentのt統計量に掛けたもので、次式で表されます。
2つの独立した平均の差の標準誤差は、次の関係から計算されます。
平均の間に相関がない場合、統計量の関係は次のようになります。
これらの平方値を図にすると、ピタゴラスの定理に基づく直角三角形になります(図)。
2平均の差の関係
三角形の斜辺が、平均を比較する際の目安になります。観測された平均の差が、斜辺の長さ(最小有意差)より大きい場合に限り、平均は有意に異なります。
では、2つの平均がちょうど境界線上にあり、観測された平均の差が最小有意差に等しい場合にはどうなるでしょうか。縦軸に2つの平均を置き、それを頂点として三角形を描きます。また、それぞれの平均を中心として、それぞれの信頼区間の長さを直径とした円を描きます。
t検定統計量の幾何学的関係
各円の半径は対応する三角形の辺の長さと等しく、で表されます。
円は三角形の2辺と同じ角度で交わるため、次のような関係が成り立ちます。
• 平均の差が最小有意差と等しい場合、平均を中心とした信頼区間の円は直角に交わります。つまり、接線の角度が直角になります。
では、平均の差が最小有意差より大きい場合や、逆に小さい場合に、円がどのように交わるかを考えてみましょう。
• 円の外側の交角が直角より大きいとき、平均は有意には異なりません。円の外側の交角が直角より小さいとき、平均は有意に異なります。外側の交角が90度より小さいということは、平均の差が最小有意差より大きいことを意味します。
• 円が交わらない場合、平均は有意に異なり、円が入れ子になる場合、平均は有意には異なりません(図)。
Studentのt分布の分位点ではなく、他の分位点を用いれば、いろいろな多重比較検定に対しても同様のグラフを描くことができます。