「Singularity.jmp」サンプルデータを開きます。応答変数Yと、4つの説明変数X1、X2、X3、Aがあります。データは5行あります。A以外は連続変数で、Aは4水準の名義変数です。また、連続変数の間には、X3 = X1 + X2という一次従属性があります。
一次従属性があるときには、推定値が一意に定めることができません。この例で、そのことを見てみましょう。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Singularity.jmp」を開きます。
2. 「モデル1」スクリプトを実行します。「モデルのあてはめ」起動ウィンドウが開き、そこにX1、X2、X3の効果がこの順番で入力されています。
3. [実行]をクリックします。レポートウィンドウを開いたままにしておきます。
4. 「モデル2」スクリプトを実行します。「モデルのあてはめ」起動ウィンドウが開き、そこにX1、X3、X2の効果がこの順番で入力されています。
5. [実行]をクリックします。レポートウィンドウを開いたままにしておきます。
2つのレポートを比較していきましょう(図3.66)。2つのレポート先頭の「特異性の詳細」レポートには、X1 = X3 ‐ X2という一次従属性の関係式が示されています。
次に、2つのレポートの「パラメータ推定値」レポートを比較してみましょう。「モデル1」ではX1の推定値は–1.25であるのに対し、「モデル2」ではX1の推定値は2.75です。両モデルとも、モデル全体の自由度は2であり、3個のパラメータのうち2個しか推定されていません。分散分析表におけるモデルの自由度も2になっています。推定された2個のパラメータ推定値には、「バイアスあり」というラベルが表示されています。また、残りの推定値は0に固定されており、「ゼロに固定」というラベルが表示されています。
「効果の検定」レポートでは、どの検定も実行されていません。また、すべての行に「足りない自由度」と表示されています。この理由を考えてみましょう。効果の検定では、すべての効果を含んだモデルと、該当する効果だけを除いたモデルとが比較されます。この例では、いずれか2つの効果だけを含んだモデルによって、3つのすべての効果を含んだモデルの平方和は完全に説明されます。そのため、各効果には、検定に用いる自由度や平方和が残されておらず、いずれの効果も検定が行えません。
図3.66 モデル1(左)とモデル2(右)の「最小2乗法によるあてはめ」レポート
次の例によって、「足りない自由度」について理解を深めましょう。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Singularity.jmp」を開きます。
2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
3. 「Y」を選択し、[Y]をクリックします。
4. 「X1」と「A」を選択し、[追加]をクリックします。
5. 「強調点」を「最小レポート」に設定します。
6. [実行]をクリックします。
図3.67はレポートの一部です。「特異性の詳細」レポートから、効果Aに関連する3つの項と、Xとに一次従属性があることが分かります(名義尺度の効果に対するコード変換方法については、カスタム検定の例に関する詳細を参照してください)。「分散分析」レポートから、モデル全体の自由度は3であることが分かります。「パラメータ推定値」レポートでは、X1、A[a]、およびA[b]の3つの項が「バイアスあり」と示され、4番目のA[c]が「ゼロに固定」と示されています。
「効果の検定」レポートは、X1を検定できないことを示しています。X1に対する検定は、Aだけを含んだモデルと、X1とAとを含んだモデルを比較します。Aだけを含んだモデルですでに自由度が3あるので、Xを検定する自由度は残っておりません。一方、Aに対する検定は、自由度2だけを使って検定することができます(X1だけのモデルが自由度1で、X1とAとを含んだモデルは自由度3で、その差が2です)。Aに対する検定は、Aに関係するパラメータのうち、一部のものだけに対する検定になっています。解釈には注意が必要です。
図3.67 X1とAのモデルの「最小2乗法によるあてはめ」レポート