JMPで計算されるパラメータ推定値を解釈するには、名義尺度や順序尺度の列が、JMPにおいてどのようにコード化されるかを理解しておく必要があります。名義尺度の列をコード化する方法については、カスタム検定の例に関する詳細を参照してください。また、詳細は、名義尺度の因子および順序尺度の因子を参照してください。
[全水準の推定値]オプションを使うと、名義尺度の因子において、すべての水準に対するパラメータ推定値を求められます。また、推定値とあわせて、標準誤差、t値、およびp値が求められます。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Drug.jmp」を開きます。
2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
3. 「y」を選択し、[Y]をクリックします。
4. 「薬剤」と「x」を選択し、[追加]をクリックします。
5. [実行]をクリックします。
6. 「応答 Y」の赤い三角ボタンをクリックし、[推定値]>[全水準の推定値]を選択します。
図3.23は、「パラメータ推定値」および「全水準の推定値」レポートを示しています。「全水準の推定値」レポートには薬剤[f]という項が表示されています。薬剤[f]に対する検定の帰無仮説は、「薬剤fグループの平均は、全体平均と変わらない」というものです。薬剤[f]の検定は、有意水準を5%とした場合、統計的に有意となっています。「薬剤fグループにおける平均は、全体平均とは異なる」と言えるでしょう。「全水準の推定値」の解釈を参照してください。
図3.23 「パラメータ推定値」と「全水準の推定値」
名義尺度の因子に、n個の水準があるとしましょう。そして、その名義尺度の因子を、n-1個のダミーにコード化するとします(n‐1個の各水準に対して、1変数ずつ)。このとき、コード化の方法の1つとして、n-1個のダミー変数それぞれに対応するパラメータ推定値が、その水準の応答平均と全水準の応答平均との差を表すようにする方法があります。JMPで名尺度の因子に対して採用されているのは、このコード化であり、パラメータ推定値がその水準の応答平均と全水準の応答平均との差を表します(カスタム検定の例に関する詳細を参照)。JMPのコード化によって得られたパラメータ推定値は、多くの場合、その水準がもつ「効果」とみなすことができます。
たとえば、「Cholesterol.jmp」サンプルデータで、「処置群」を因子とし、「6月 午後」を応答とした一元配置分散分析を行ったとします。このとき、処置群[A]のパラメータ推定値は、「処置群」Aにおける応答平均と、応答の全体平均との差を表しています。
JMPで採用されているコード化では、名義尺度の因子の全水準における推定値を合計すると0になります。JMPのコード化では、名義尺度の因子における最後の水準は「–1」に変換されます。このようにコード化した場合、ある水準の推定値は、その水準以外のn-1個の推定値を合計したものの符号を逆にした値になります。これは、JMPのコード化に従えば、最後の水準のパラメータが、それ以外のn-1個の水準すべてのパラメータの合計の符号を逆にした値になっているからです。
[推定値]メニューにある[全水準の推定値]オプションを選択すると、最後の水準に対する推定値も計算されます。これにより、名義尺度の因子において、全水準の推定値を合計すると、0になっていることが確認できます。なお、合計すると0になるので、名義尺度の因子内におけるパラメータ推定値は、独立ではなく、互いに関係しています。
図3.23の「Drug.jmp」のレポートは、xを共変量としたモデルでの「薬剤」に関する推定値です。
注:
• 薬剤[a]の推定値は、薬剤aの最小2乗平均と、全体の最小2乗平均との差です。
• 薬剤[f]の推定値は、薬剤[a]と薬剤[d]の推定値の合計して、その符号を逆にしたものです。
• 薬剤[f]のt検定は、「薬剤」fグループの最小2乗平均が、全体の最小2乗平均と異なっているかどうかを調べます。
• 名義尺度の因子の交互作用が高次になると、「全水準の推定値」レポートには、大量の推定値が表示されます。たとえば、5因子の交互作用の場合、因子が2水準ならば、パラメータは1個だけですが、「全水準の推定値」のレポートには、25=32個もの推定値が表示されることになります。2水準因子の場合、これらの推定値は符号が違うだけで、絶対値は同じです。