公開日: 04/01/2021

推定値の並べ替え

[推定値の並べ替え]オプションで表示されるレポートは、「パラメータ推定値」レポートに似ており、因子のスクリーニングに役立ちます。実験計画が飽和計画でない場合、このレポートは、「パラメータ推定値」レポートにおける切片以外の項を、p値の小さい順に並び替えたものです(図3.21の2番目のレポート)。実験計画が飽和計画の場合、疑似t検定が実行されます。疑似t検定は、Lenthの疑似標準誤差に基づき計算されています(Lenth, 1989)。LenthのPSEを参照してください。

「並べ替えた推定値」レポートの例

1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Reactor.jmp」を開きます。

2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。

3. 「Y」を選択し、[Y]をクリックします。

4. ウィンドウの下のほうにある「次数」ボックスに2という数値が入っていることを確認します。

5. 「送り速度」「触媒」「攪拌速度」「温度」、および「濃度」を選択し、[マクロ]>[設定された次数まで]をクリックします。

6. [実行]をクリックします。

7. 「応答 Y」の赤い三角ボタンをクリックし、[推定値]>[推定値の並べ替え]を選択します。

図3.21 並べ替えたパラメータ推定値 

Image shown here

「並べ替えたパラメータ推定値」レポートは、[強調点]として[要因のスクリーニング]を選択し、かつ、すべての効果においてパラメータが1つしかない場合には、メニューで選択しなくても、デフォルトで表示されます。

「並べ替えたパラメータ推定値」レポートは、「パラメータ推定値」レポートと次のような違いがあることに注意してください(図3.21を参照)。

「並べ替えたパラメータ推定値」レポートには切片が表示されない。

パラメータ推定値は、t値の絶対値が大きい順に並び替えられている。つまり、p値が最も小さい効果が一番上に表示されています。

数値だけでなく、t値を示す棒グラフが描画される。このグラフにおいて、青色の縦線は、有意水準5%の棄却値を示しています。

飽和モデルの「並べ替えたパラメータ推定値」レポート

スクリーニング計画で使われることが多い完全飽和モデルには、誤差分散を推定できるだけの自由度がありません。そのような場合、「並べ替えたパラメータ推定値」レポート(図3.21)では、相対標準誤差とLenthの疑似標準誤差(PSE; Pseudo Standard Error)を使って、t値とp値が算出されます。PSEに基づく統計量には、「擬似」という語句が先頭に付けられます。LenthのPSEおよび疑似t値を参照してください。また、PSEの値と、解釈上の注意を示したメッセージが表示されます。

レポートには、次のような列があります。

係数を求めたいモデル項。

推定値

パラメータ推定値は、p値が小さいものから順に並んでいます。

相対標準誤差

残差誤差の自由度がない場合、レポートには相対標準誤差が表示されます。相対標準誤差は、誤差の標準偏差(RMSE)を1に設定することによって計算されます。

疑似t値

疑似標準誤差を使って計算される推定値のt値。Lenthの疑似標準誤差は、レポートの下部に表示されます。

疑似p値

m/3を誤差自由度(DFE)として計算したp値。ここで、mは切片以外のパラメータ数です。計算に使われた誤差自由度は、レポートの下部に表示されます。

LenthのPSE

Lenthの疑似標準誤差(PSE; Pseudo Standard Error)は、Lenth(1989)によって提案された、標準誤差の推定値です。PSEが妥当なものになるには、「効果の稀薄性」が成立していなければいけません。「効果の稀薄性」とは、「スクリーニング計画においては、調べられる因子のほとんどが効果をもたない」という仮定です。重要ではない効果は、推定量のランダムなばらつきを反映しているので、標準誤差を推定するのに利用することができます。

Lenthの疑似標準誤差は、次のように計算されます。

1. 切片を除くすべてのパラメータに関して、推定値の絶対値を求めます。

2. 絶対値が、その中央値の3.75倍を超えるすべてのパラメータを除去します。

3. 残ったパラメータの絶対値の中央値を1.5倍します。

疑似t値

すべての相対標準誤差が互いに等しい場合、レポートの下部に表示されているLenthの疑似標準誤差をもとに、次式によって、疑似t値は計算されます。

Equation shown here

相対標準誤差が等しくない場合、Lenthの疑似標準誤差が、t値スケールで計算されます。この値は、推定値を相対標準誤差で割った値から求められた、Lenthの疑似標準誤差です。次式によって、疑似t値は計算されます。

Equation shown here

この式の分母において、t値スケールの疑似標準誤差に、相対標準誤差を掛けたものを、推定値の標準誤差としている点に注意してください。

飽和モデルの例

1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Reactor.jmp」を開きます。

2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。

3. 「Y」を選択し、[Y]をクリックします。

4. 「送り速度」「触媒」「攪拌速度」「温度」「濃度」の5列を選択します。

5. [マクロ]ボタンをクリックして[完全実施要因]を選択します。

6. [実行]をクリックします。

7. 「応答 Y」の赤い三角ボタンをクリックし、[推定値]>[推定値の並べ替え]を選択します。

使用されたLenthのPSEおよび自由度は、レポートの下部に表示されます。レポートは、疑似p値に基づき、効果「触媒」「触媒*温度」「温度*濃度」「温度」「濃度」は高度に有意であることを示しています。

図3.22 飽和モデルの「並べ替えたパラメータ推定値」レポート 

Image shown here

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).