製品における劣化の程度を調べる際、製品を破壊しなければならない場合があります。たとえば、製品の強度を調べるときは、製品に圧力を加え、破壊したときの圧力を測定します。こうしたケースには、通常の劣化分析は適用できません。次のいずれかの方法を使用します。
• 仮定する故障時間モデルが標準的なものであれば、「破壊劣化」プラットフォームで分析できます。詳細については、破壊劣化を参照してください。
• 時間または応答のカスタム変換や、カスタムの非線形モデルを使用する場合は、「劣化データ分析」プラットフォームを使用します。「劣化データ分析」プラットフォームの起動ウィンドウで、[破壊劣化]タブを選択してください。
この例では、カスタムの非線形モデルを自分で指定します。このデータテーブルには、接着剤の強度に関する測定データが記録されています。接着剤がはがれるまで製品に圧力を加え、必要な破壊応力を記録しました。通常の使用条件下ではユニットが破壊することは稀なので、加速因子(温度)でいくつかの水準を設定して試験しました。25oCの状態で52週間(1年間)使用した後のユニットの強度(単位はニュートン)を推定してみましょう。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Reliability」フォルダにある「Adhesive Bond.jmp」を開きます。
2. [分析]>[信頼性分析/生存時間分析]>[劣化分析]を選択します。
3. [破壊劣化]タブを選択します。
4. 「強さ」を選択し、[Y, 目的変数]をクリックします。
5. 「週数」を選択し、[時間]をクリックします。
6. 「温度」を選択し、[X]をクリックします。
7. 「打ち切りの有無」を選択し、[打ち切り]に指定します。
図7.18 設定後の起動ウィンドウ
8. [OK]をクリックします。
1. 「モデルの指定」アウトラインにある「位置パラメータ経路の指定」パネルのメニューから[対数正規]を選択します。
これにより、応答「強さ」に対数正規変換が指定されます。
2. 「劣化データ分析」の赤い三角ボタンのメニューをクリックし、[劣化経路の種類]>[非線形経路]を選択します。
これにより、スクリプトウィンドウがレポートに追加されます。このウィンドウに、モデルを指定するスクリプトを挿入します。
3. 次のJSL式をコピーし、「非線形経路」の下のスクリプトウィンドウに貼り付けます。
Parameter(
{b1 = 50, b2 = 50, b3 = -1},
b1 * :温度 + b2 * Exp( b3 * Sqrt( :週数 ) )
)
このスクリプトは、b1、b2、b3 というパラメータをもつモデルを定義し、また、それらのパラメータの初期値を設定しています。
4. レポートの下部にあるテキストボックスの「空白」という文字を「カスタムモデル」に変更します。
図7.19 非線形経路スクリプト
5. [使用して保存]をクリックします。
図7.20 更新された「モデルの指定」アウトライン
レポートが更新され、パラメータの初期値を変更するためのコントロールが表示されます。パラメータの初期値は、スクリプトエディタ内で指定した値に設定されます。
6. [モデルのあてはめ]をクリックします。
図7.21 あてはめたモデルのプロット
「モデルの指定」アウトラインのパラメータパネルが更新され、あてはめたモデルのパラメータ推定値が表示されます。「重ね合わせ」プロットには、モデルのあてはめ結果が表示されます。軸をドラッグすると、見えていない点を表示できます(図7.21)。図の右上側にある凡例において、各曲線がどの温度に対応しているかが示されています。
次に、25oCを基準として52週間使用した後の「強さ」の予測値と予測区間を求めましょう。
1. 「劣化データ分析」の赤い三角ボタンのメニューをクリックし、[予測の設定]を選択します。
2. 「予測の設定」ウィンドウで:
– 「基準」に「25」と入力します。
– 「縦軸予測」パネルの「時間」に「52」と入力します。
– 「縦軸予測」パネルのメニューから[予測区間]を選択します。
図7.22 予測の設定
3. [OK]をクリックします。
4. レポートの[予測グラフ]タブを選択します。
図7.23 週数52の予測プロット
「予測プロット」には、25(基準)という軸ラベルの上に、予測値と95%水準の予測区間が表示されます。
5. [予測プロット]の赤い三角ボタンのメニューをクリックし、[予測の保存]を選択します。
「温度」の3つ値(50度・60度・70度)と、基準値である25度に対して、予測値がデータテーブルに保存されます。25oCの環境下で1年間使用した接着剤の予測強度は61.96で、予測区間は42.42~90.50です。