REML法を選択すると、REML推定した結果がレポートに表示されます。また、[列の保存]や[プロファイル]メニューに、REML推定に関係するオプションが追加されます。REML推定では、通常の最小2乗法のような平方和の計算は行われないので、分散分析表などは作成されません。なお、誤差分散の推定値は、「REML法による分散成分推定値」レポートに出力されます(REML法による分散成分推定値を参照)。「固定効果の検定」レポートに、固定効果に対する検定が表示されます。その他のレポートでは、変量効果の各水準に対する予測値なども計算されます。
図3.62は、「Investment Castings.jmp」サンプルデータでのREML法のレポートです。サンプルデータに添付されている「モデル: REML」スクリプトを実行すると、このレポートが作成されます。「鋳造」が、「温度」から枝分かれしている変量効果になっています。
図3.62 REML手法の「最小2乗法によるあてはめ」レポート
このレポートには、変量効果の各水準に対して、最良線形不偏予測量(BLUP; Best Linear Unbiased Predictor)の経験的推定値と、その効果が0かどうかの検定が表示されます。
メモ: 「変量効果の予測」レポートが表示されていない場合は、[回帰レポート]>[パラメータ推定値]オプションを選択してください。
項
変量効果のモデルの項。
BLUP
変量効果の各水準における最良線形不偏予測量(BLUP)の経験的推定値。最良線形不偏予測量(BLUP)を参照してください。
標準誤差
BLUPの標準誤差。
分母自由度
「該当する水準の効果は0である」という帰無仮説を検定するための分母自由度。ほとんどの場合、このt検定の自由度は小数点以下をもつ実数となります。
t値
「該当する水準の効果は0である」という仮説を検定するためのt値。BLUPをその標準誤差で割ったものです。
p値(Prob>|t|)
検定のp値。
下側95%
BLUPに対する両側95%信頼区間の下限。[回帰レポート]>[信頼区間をすべて表示]オプションを選択した場合、またはレポートを右クリックし、[列]>[下側95%]を選択した場合にのみ表示されます。
上側95%
BLUPに対する両側95%信頼区間の上限。[回帰レポート]>[信頼区間をすべて表示]オプションを選択した場合、またはレポートを右クリックし、[列]>[上側95%]を選択した場合にのみ表示されます。
最良線形不偏予測量(BLUP; Best Linear Unbiased Predictor)は、変量効果の各水準に対する予測量のことです。BLUPは、不偏な予測量のなかで、予測誤差の平均平方を最小化するものを指します。「変量効果の予測」レポートには、このBLUPの経験的推定値(経験的BLUP)が表示されます。BLUPは、分散成分の値に依存しますが、それらは通常、未知です。「経験的」とは、それらの未知である分散成分に、その推定値を代入してBLUPを求めることを意味します。
「モデルのあてはめ」起動ウィンドウの「手法」で[REML法]を選択すると、「REML法による分散成分推定値」レポートが表示されます。このレポートには、次のような列があります。
変量効果
モデル内の変量効果。
分散比
変量効果の分散成分を、残差(誤差)の分散成分で割った比。変量効果の分散と誤差分散を比べるのに役立ちます。
分散成分
変量効果の分散成分(の推定値)。最後の行にある「合計」は、分散成分のうち正のものだけを足した和です。負の分散成分も含めた合計は、表の下に表示されます。
標準誤差
分散成分推定値の標準誤差。
95%下側
分散成分に対する両側95%信頼限界の下限。分散成分の信頼区間を参照してください。
95%上側
分散成分に対する両側95%信頼限界の上限。分散成分の信頼区間を参照してください。
Wald p値
「共分散パラメータが0と等しい」という検定のp値。この列は、「モデルのあてはめ」起動ウィンドウで[分散成分の範囲制限なし]オプションを選択した場合のみ表示されます。
全体に対する百分率
分散成分の全体に占める、各変量効果の割合を百分率で表したもの。
分散成分の平方根
分散成分推定値の平方根であり、変量効果の標準偏差の推定値です。この列は、レポートを右クリックし、[列]>[分散成分の平方根]を選択した場合のみ表示されます。
変動係数
分散成分の変動係数。分散成分の平方根を、応答の平均値で割り、100倍したもの。この列は、レポートを右クリックし、[列]>[CV]を選択した場合のみ表示されます。
ノルムKHC
Kackar-Harville修正に関する値。Kackar-Harvilleの修正を参照してください。この列は、レポートを右クリックし、[列]>[ノルムKHC]を選択した場合のみ表示されます。
分散成分に対する信頼区間を計算するときに使われる方法は、「モデルのあてはめ」起動ウィンドウで[分散成分の範囲制限なし]を選択したかどうかによって異なります。なお、[分散成分の範囲制限なし]オプションはデフォルトで選択されています。
• [分散成分の範囲制限なし]が選択されている場合、Wald法によって信頼区間が計算されます。これらは、漸近的には妥当な近似法なのですが、標本サイズが小さい場合は近似が悪いです。
• [分散成分の範囲制限なし]が選択されていない場合、つまり、分散成分の推定値の下限が0に制約されている場合は、Satterthwaite法が使用されます(Satterthwaite, 1946)。
REML法では、固定効果の標準誤差は、分散成分の推定値を使って求められます。この時、分散成分の推定値がもつばらつきが考慮されていなければ、固定効果の標準誤差は過小評価されます。JMPでは、分散成分の推定値がもつばらつきを考慮するために、Kackar‐Harvilleの修正によって、固定効果の共分散行列が調整されます(Kackar and Harville,(1984)、Kenward and Roger(1997))。固定効果の共分散行列に関係するすべての計算において、この修正が使われます。この修正が行われるものには、固定効果の最小2乗平均、固定効果の検定、固定効果の信頼区間、および予測値の分散が含まれます。詳細については、Kackar-Harvilleの修正を参照してください。
「ノルムKHC」の列に表示される値は、Kackar‐Harville修正におけるFrobeniusノルム(行列ノルム)です。バランス(釣合い)がとれたデータに近いほどノルムKHCは小さくなる傾向があります。
このレポートには、分散成分推定値の共分散行列の漸近的な推定値が表示されます。この行列は、観測Fisher情報量行列の逆行列です。
REML法は、σ2とGの分散成分を、これらのパラメータだけに依存する残差尤度関数を最大化することにより推定する方法です。JMPの反復計算では、この残差対数尤度の-2倍を最小化していきます。「反復履歴」レポートには、反復計算の履歴が表示されます。
反復
反復回数。
(-2)*対数尤度
残差対数尤度をマイナス2倍したもの。これを反復計算における目的関数とします。尤度・AICc・BICを参照してください。
勾配のノルム
目的関数の勾配(1次微分)のノルム。
パラメータ
「パラメータ」以降の列には、分散成分推定値が表示されます。分散成分の表示順序は、「REML法による分散成分推定値」レポートで表示されている順序と同じです。反復計算の各ステップにおける分散成分の推定値が表示されます。
反復計算の収束基準は、勾配ベクトルのノルムに基づいています。デフォルトの基準値は、10‐8です。この収束基準は、「モデルのあてはめ」起動ウィンドウで変更できます。それには、「モデルの指定」の赤い三角ボタンメニューから[収束の設定]>[収束限界]を選択し、任意の基準値を指定します。
REML法を使用した場合、「固定効果の検定」レポートに固定効果の検定が表示されます。このレポートには、次のような列があります。
要因
モデル内の固定効果。
パラメータ数
効果に含まれるパラメータの個数。
自由度
効果に関係する自由度。
分母自由度
分母の自由度。分母の自由度は、Kenward‐Roger近似によって計算されています。Kenward‐Roger近似は、共分散行列の推定値を調整し、近似を良くした統計量の分布に基づいていますKackar-Harvilleの修正および変量効果を参照してください。
F値
計算されたF値。
p値(Prob > F)
「効果が0である」という帰無仮説を検定するp値。
REML法を使用すると、[列の保存]メニューに6つの追加のオプションが表示されます。これらのオプション名には、「条件付き」という接頭語が付きます。この接頭語は、これらの列が、固定効果の周辺期待値ではなく、変量効果も考慮した条件付きの予測値であることを意味しています。
条件付き予測式
予測式を、データテーブルの新しい列に保存します。
条件付き予測値
予測値を、データテーブルの新しい列に保存します。
条件付き残差
残差を、データテーブルの新しい列に保存します。
条件付き平均の信頼区間
平均の信頼区間を保存します。
条件付き個別の信頼区間
個々の応答に対する信頼区間を保存します。
条件付き計算式を発行
条件付き予測式を作成し、「計算式デポ」プラットフォームに計算式列のスクリプトとして保存します。「計算式デポ」レポートが開いていない場合は、このオプションによって「計算式デポ」レポートが作成されます。『予測モデルおよび発展的なモデル』の計算式デポを参照してください。
REML法のレポートで、[因子プロファイル]>[プロファイル]を選択すると、「予測プロファイル」の赤い三角ボタンのメニューに[条件付き予測]というオプションが追加で表示されます。条件付き予測値は、固定効果の周辺期待値ではなく、変量効果も考慮した条件付きの予測値のプロファイルを描きます。
メモ: プロファイルには、因子の水準のすべての組み合わせについて、条件付き予測値と条件付き平均信頼区間が表示されます。これらの一部は入れ子のために意味がない場合があります。