分割実験は、もともと農業分野で考案されたものですが、今では製造やエンジニアリング分野でも広く普及しています。分割実験では、設定の変更が困難な因子の水準は、一次単位(whole plot)ごとに無作為に割り付けます。各一次単位をさらに細かい二次単位(subplot)に分割して、変更が容易な因子の水準をそれらの二次単位に対して無作為に割り付けます。
ここでは、Kowalski, Cornell, and Vining(2002)による例をもとに、自動車のシートカバー用ビニールの厚さに影響する5つの因子について調べます。実験で使用する応答と因子は、次のとおりです。
• 応答は、製造されるビニールの「厚さ」です。これを最大化するのが目的です。厚さの値の下側限界は10です。
• 一次単位の因子は、押出速度(「押出速度」)と乾燥温度(「温度」)です。これらは工程変数で、設定の変更が困難です。
• 二次単位の因子は3つの軟化剤の配合割合(「m1」・「m2」・「m3」)で、これらは合計すると1になります。これらの因子は配合成分です。
現在の予算では、一次単位に対しては、7通りの因子設定の実験を行えます。また、各一次単位について、二次単位に対する実験を4回実施できます。つまり、全体では、28回の実験を行うだけの予算があります。
1. [実験計画(DOE)]>[カスタム計画]を選択します。
2. 「応答名」の下の「Y」をダブルクリックし、「厚さ」と入力します。
目標はデフォルトの[最大化]をそのまま使います。
3. 下側限界の値を「10」とします。
因子を手動で追加するには、ステップ4からステップ11の手順に従います。または、保存されたデータテーブルから因子をロードする場合は、「カスタム計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[因子のロード]を選択します。そして、「Design Experiment」フォルダの「Vinyl Factors.jmp」サンプルデータを開きます。[因子のロード]を選択する場合は、ステップ4~ステップ11の手順を省略してください。
4. 「N個の因子を追加」の右側のボックスに「2」と入力します。
5. [因子の追加]>[連続変数]を選択します。
6. それぞれに「押出速度」、「温度」という名前をつけます。
値は、デフォルトの「−1」と「1」をそのまま使用します。
7. [容易]をクリックし、「押出速度」と「温度」の「変更」を[困難]に変更します。
これで、「押出速度」と「温度」が一次単位に定義されます。
8. 「N個の因子を追加」の右側のボックスに「3」と入力します。
9. [因子の追加]>[配合]を選択します。
10. 配合因子にそれぞれ「m1」、「m2」、「m3」という名前をつけます。
値は、デフォルトの「0」と「1」をそのまま使用します。
図5.72 「応答」および「因子」アウトライン
11. [続行]をクリックします。
12. [交互作用]>[2次]を選択します。
13. [OK]をクリックして、メッセージを閉じます。
「一次単位の数」のデフォルト値が3であることを確認してください。
14. 「一次単位の数」の横のボックスに「7」と入力します。
15. [ユーザ定義]の横のボックスに「28」と入力します。
メモ: 乱数シード値(ステップ16)と開始点の数(ステップ17)を設定すると、以下の数値例と同じ実験設定が得られます。同じ実験設定でなくても良い場合は、これらの手順は不要です。
16. (オプション)「カスタム計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[乱数シード値の設定]を選択します。次に、「12345」と入力して[OK]をクリックします。
17. (オプション)「カスタム計画」の赤い三角ボタンのメニューから[開始点の数]を選択し、「5」と入力して[OK]をクリックします。
18. [計画の作成]をクリックします。
図5.73 「計画」アウトライン
一次単位の因子「押出速度」と「温度」は、因子「一次単位」の水準に合わせて7回リセットされます。「一次単位」の各水準内で、配合成分の「m1」、「m2」、「m3」が無作為に割り当てられます。
「Vinyl Data.jmp」サンプルデータには、旧バージョンのJMPで作成した計画を使った実験の結果が含まれています。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Design Experiment」フォルダの「Vinyl Data.jmp」を開きます。
このサンプルデータには、28回の実験と応答値が含まれています。「カスタム計画」プラットフォームを使って作成したテーブル内の計画の設定は、「Vinyl Data.jmp」とは異なる場合があります。
2. 「テーブル」パネルで、「モデル」スクリプトの横にある緑の三角ボタンをクリックします。
図5.74 「モデルのあてはめ」ウィンドウ
「モデルのあてはめ」ウィンドウで、次のことを確認してください。
– 因子「一次単位」には、変量効果(「&変量効果」)の属性が指定されています。変量効果に指定することにより、「「一次単位」の各水準がもつ効果は確率変数の実現値である」と仮定されます。つまり、「一次単位」は、誤差のように扱われます。
– 分析手法は[REML(推奨)]です。モデルに変量効果があるため、この手法が用いられます。REMLモデルの詳細については、『基本的な回帰モデル』のREML法(制限最尤法)を参照してください。
ヒント: JMP Proでは、「モデルのあてはめ」ウィンドウで、「手法」を[混合モデル]に変更できます。
3. [実行]をクリックします。
図5.75 分割実験の分析結果
「パラメータ推定値」レポートからは、3つの配合成分と「押出速度*m3」の交互作用が、0.05の有意水準において有意であることがわかります。
「REML法による分散成分推定値」レポートからは、「一次単位」に関連する分散成分が2.476748であることがわかります。これは、分散全体の38.838%です。つまり、一次単位の誤差項は、残差誤差(プロット内の誤差項)よりも小さいことを示しています。