公開日: 11/25/2021

2方分割実験

2方分割法は、2つの層で構成されています。2方分割法は、工業分野において、ある工程から次の工程へと実験ユニットが引き渡される場合に広く使われています。2方分割法では、各層ごとに、処理を無作為に割り付けます。

2方分割法では、第1段階の工程の後、現在のバッチを新たなバッチに分け直します。そして、第2段階の処理を、その新しいバッチに無作為に適用します。つまり、2方分割法では、第2段階で、新しいバッチに対し、第1段階の工程とは独立して処理を割り付けます。なお、第2段階の後、実験ユニットにさらに追加の処理を割り付けることもできます。

2方分割法では、2段分割法と異なり、第2段階の因子は第1段階の因子からの枝分かれにはなっていません。第1段階の後、バッチは改めて分割されて新しいバッチを形成します。そのため、第1段階と第2段階の因子は独立して割り付けられます。

2方分割法においては因子を変更する難しさはどちらの段階でも同程度かもしれませんが、因子を区別するために、JMPでは第1段階の因子を「非常に困難」、第2段階の因子を「困難」と呼んでいます。また、第2段階の後で実験ユニットに追加する因子を、(変更が)「容易」と呼んでいます。

2方分割実験のシナリオ

この例は、乾電池の開回路電圧(「OCV」)の改善のための実験に基づいています(Vivacqua and Bisgaard, 2004)。乾電池の放電を防ぐために、「OCV」を最小化する必要があります。

乾電池は次の2つの工程を経て製造されます。

第1段階: 2000個のバッチごとに処理される連続組み立て工程。

第2段階: 4000個の乾電池を処理できる室内での5日間の硫化工程。

ここでは、次の6つの2水準の因子について調査します。

組み立て工程に関連する4つの因子(「A1」「A2」「A3」「A4」)。この第1段階の因子においては、16組の組み合わせを実験します。

硫化工程に関連する2つの因子(「C5」「C6」)。硫化工程の実験期間は30日間であり、1回の硫化工程には5日間を要します。そのため、第2段階の因子においては、6組の組み合わせを実験できます。各6組内において、硫化に関する因子設定を反復します。

第1段階と第2段階の因子はどちらも変更が困難なので、2つの分割実験が必要と言えます。しかし、ここでは1つの分割実験で終わらせるために、まず、第1段階の実験における2000個のバッチを、500個ずつのサブバッチに分割します。そして、各サブバッチから無作為に8個の実験ユニットを選び、それら8個を同時に硫化室で処理します。

この実験では48個の実験ユニットを用います。また、第1段階の因子と、第2段階の因子の交互作用もモデルに含めます。

計画の作成

2方分割実験計画を作成するには:

1. [実験計画(DOE)]>[カスタム計画]を選択します。

2. 「応答名」の欄の「Y」をダブルクリックし、「OCV」と入力します。

3. 「目標」の欄の[最大化]をクリックして[最小化]を選択します。

4. 因子を手動で追加するには、ステップ5からステップ10の手順に従います。または、保存されたテーブルから因子をロードする場合は、次の手順に従います。

a. 「カスタム計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[因子のロード]を選択します。

b. 「Design Experiment」フォルダの「Battery Factors.jmp」サンプルデータを開きます。

c. ステップ11に進みます。

5. 「N個の因子を追加」の右側のボックスに「6」と入力します。

6. [因子の追加]>[連続変数]を選択します。

7. 因子の名前を「A1」「A2」「A3」「A4」「C1」「C2」に変更します。

値は、デフォルトの「-1」と「1」をそのまま使用します。

8. 「A1」「A2」「A3」「A4」の「変更」の欄の[容易]をクリックし、[非常に困難]に変更します。

第1段階と第2段階の因子を区別するために、第1段階の因子の「変更」を[非常に困難]とし、第2段階の因子の「変更」を[困難]とします。

9. 「C1」「C2」の「変更」の欄の[容易]をクリックし、[困難]に変更します。

図5.76 「応答」および「因子」アウトライン 

Responses and Factors Outlines

10. [続行]をクリックします。

11. 「モデル」アウトラインで、[交互作用]>[2次]を選択します。

12. 「計画の生成」アウトラインで、[変更が「困難」な因子を、「非常に困難」な因子と独立して設定]オプションを選択します。

図5.77を参照してください。このオプションにチェックを入れることで、2方分割実験計画が作成されます。このオプションを選択しなかった場合、2段階の枝分かれ構造になっている2段分割計画が作成されます。

13. 「一次単位の数」の横のボックスに「16」と入力します。

これが、第1段階の因子に対する実験回数となります。

14. 「二次単位の数」の横のボックスに「6」と入力します。

これが、第2段階の因子に対する実験回数となります。

15. 「実験の回数」の「ユーザ定義」テキストボックスに「48」と入力します。

これが、合計の実験ユニット数となります。

図5.77 「計画の生成」アウトライン 

Design Generation Outline

メモ: 乱数シード値(ステップ16)と開始点の数(ステップ17)を設定すると、以下の数値例と同じ実験設定が得られます。同じ実験設定でなくても良い場合は、これらの手順は不要です。

16. (オプション)「カスタム計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[乱数シード値の設定]を選択します。次に、「1866762673」と入力して[OK]をクリックします。

17. (オプション)「カスタム計画」の赤い三角ボタンのメニューから[開始点の数]を選択し、「21」と入力して[OK]をクリックします。

18. [計画の作成]をクリックします。

19. [テーブルの作成]をクリックします。

図5.78 計画のデータテーブル(一部) 

Partial View of Design Table

計画のデータテーブルには、「一次単位」の16個の水準が表示されます。「一次単位」の各水準において、組み立てに関する4つの因子の設定は一定です。「一次単位」の各水準から、電池500個ずつの3つのバッチ(「二次単位」)が無作為に選ばれ、硫化に関する因子の設定に割り当てられます。硫化に関する2条件(C1 = -1、C2 = 1およびC1 = 1、C2 = 1)は反復されます。これを確認するには、「C1」「C2」を選択し、列見出しを右クリックして[並べ替え]>[昇順]を選択します。

結果の分析

「Battery Data.jmp」サンプルデータに、生成した計画の実験結果が含まれています。

1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Design Experiment」フォルダの「Battery Data.jmp」を開きます。

2. 「テーブル」パネルで、「モデル」スクリプトの横にある緑の三角ボタンをクリックします。

「モデルのあてはめ」ウィンドウで、次のことを確認してください。

因子「一次単位」には、変量効果(「&変量効果」)の属性が指定されています。変量効果に指定することにより、「「一次単位」の各水準がもつ効果は確率変数の実現値である」と仮定されます。つまり、「一次単位」は、誤差のように扱われます。

因子「二次単位」にも、変量効果(「&変量効果」)の属性が指定されています。

分析手法は[REML(推奨)]です。モデルに変量効果があるため、この手法が用いられます。REMLモデルの詳細については、『基本的な回帰モデル』のREML法(制限最尤法)を参照してください。

ヒント: JMP Proでは、「モデルのあてはめ」ウィンドウで、「手法」を[混合モデル]に変更できます。

3. [ダイアログを開いたままにする]チェックボックスをオンにします。

4. [実行]をクリックします。

図5.79 完全モデルのレポート 

Report for Full Model

「パラメータ推定値」レポートから、4つの2因子間交互作用「A1*C1」「A1*C2」「A2*C1」「A4*C2」と2つの主効果「A1」「A4」が有意水準0.05において有意であることがわかります。

5. 「Battery Data.jmp」の「テーブル」パネルで、「縮小モデル1」スクリプトの横にある緑の三角ボタンをクリックします。

「モデルのあてはめ」ウィンドウが開きます。ここでは、有意でない交互作用が削除されています。残った効果は、すべての主効果と、4つの2因子間交互作用「A1*C1」「A1*C2」「A2*C1」「A4*C2」です。ここでは、有意でない交互作用は削除していますが、主効果はすべて含めています。

6. [実行]をクリックします。

図5.80 事前に縮小されたモデルのレポート 

Report for Preliminary Reduced Model

主効果「C2」は、有意水準0.05において有意です(p = 0.0331)。

7. 「モデルのあてはめ」ウィンドウで「A3」を削除します。

主効果「A3」は、有意である2因子間交互作用には含まれておらず、また、その主効果も有意ではありません。

8. [実行]をクリックします。

図5.81 縮小モデルのレポート 

Report for Reduced Model

「REML法による分散成分推定値」レポートから、「一次単位」に関連する分散成分は、「二次単位」の分散成分の5倍の大きさであることがわかります。これは、組み立て工程のばらつきが硫化工程のそれより大きいことを示します。また、「一次単位」のばらつきは、残差誤差のそれよりも大きくなっています。ばらつきを減らしたい場合は、まず組み立て工程(「一次単位」)に、そして乾電池ごとの違い(「残差」)に注意を払うべきです。

9. 「応答 OCV」の赤い三角ボタンをクリックし、[因子プロファイル]>[プロファイル]を選択します。

10. 「予測プロファイル」の赤い三角ボタンをクリックし、[最適化と満足度]>[満足度の最大化]を選択します。

図5.82 OCVを最小化する設定の予測プロファイル 

Prediction Profiler with Settings That Minimize OCV

プロファイルには、重要と識別された5つの因子と「OCV」を最小化する設定が表示されます。

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).