公開日: 09/19/2023

不適合率プロファイル

「シミュレータ」の赤い三角ボタンのメニューから、不適合率プロファイルを起動することができます。このプロファイルは、他の因子はランダムに分布しているという条件のもとで、不適合の確率(仕様内に収まっていない確率)を因子ごとにその因子の関数として表します。不適合率プロファイルは、許容差設計(tolerance design)を行う時の1つの分析として、不適合になるのに最も影響しているだろう因子を視覚化するのに利用できます。

分析者によって指定された仕様限界が不適合率の計算に使用されます。また、各因子に指定された確率分布は応答値をシミュレートするために使用されます。不適合率プロファイルを使用するには、少なくとも1つの応答列に仕様限界が定義されている必要があります。

意味のある結果を得るには、シミュレーション設定において少なくとも1つの因子において[ランダム]を指定してください。[ランダム]を指定しないと、シミュレーションの出力は定数になり、結果が仕様内であれば不適合率は常にゼロ、結果が仕様外であれば不適合率は常に1になります。

ヒント: なお、非常に低い不適合率を推定する必要がある場合、[正規加重]オプションの使用を考慮してください。[正規加重]オプションは、100万個につき数個というような低い不適合率でも数千回のシミュレーションを行うだけで比較的安定した推定値を計算できます。

許容差設計の紹介

許容差設計(tolerance design)とは、入力のばらつき(変動)を制御することにより、不適合率をどれだけ制御できるかを調べることです。

許容差設計においては、入力となる因子にばらつきがあると仮定されます。許容差設計においては、各因子はばらつくと仮定され、また許容範囲が仕様限界によって定義されます。その因子(入力)におけるばらつきは応答(出力)に影響します。応答に対しても、仕様限界が指定されています。

許容差設計の分析により、因子に対する仕様限界が厳しすぎることが分かることがあります。このような場合は因子(入力)に対する仕様限界を緩めることで、応答(出力)の品質を落とさずに製造コストを下げることができます。これは、許容差設計がコストの削減につながるケースです。

また、仕様限界をより厳しくするか、目標値を変更すれば、品質が向上することもあります。いずれのケースでも、因子(入力)におけるばらつきが不適合率にどのように影響を与えるかを知ることが重要です。

不適合率プロファイルは、それぞれの因子ごとに、因子の関数として不適合率を表したグラフです。該当の1因子を特定の値に固定し、その他の因子は指定された確率分布に従っているときの不適合率を描いています。複数の応答変数があり、それに仕様限界が指定されている場合、各応答変数を異なる色で描いた不適合率曲線も描かれます。その場合、黒色の曲線が全体の不適合率を示しています。

図8.7 不適合率プロファイル 

不適合率プロファイル

グラフのスケール

不適合率は、3乗根のスケールが使用されるので、高い不適合率と低い不適合率の両方を詳しく調べられます。

不適合率

シミュレーションによって求められた全体の不適合率の平均と標準偏差が、不適合率プロファイルにおける各因子の下に示されます。この平均は、不適合率曲線を、その因子に指定された確率分布で積分することにより求められています。この平均は、いくつかの条件が揃えばすべての因子で近い値になりますが、それでもシミュレーション誤差と数値誤差のために、少し異なります。

この平均値は、設定された確率分布の状況で生じる全体の不適合率に対する推定値です。全体の不適合率に対する推定値は、別の求め方ですが、予測プロファイルの[シミュレート]ボタンの下にある表の「割合」列にも表示されます。

メモ: この「割合」列に計算される全体の不適合率は、仕様限界を定義された応答が1つ以上ある場合に、[シミュレート]ボタンをクリックすると計算されます。

この「割合」列に計算される全体の不適合率は、数値積分の範囲が限られていることやシミュレーション誤差によって、不適合率プロファイルでの積分値とは少し異なった結果になります。これらの不適合率の差が大きい場合は、シミュレーションの回数を増やしてみてください。また、不適合率プロファイルにおける各因子のX軸が十分に広い範囲になっており、積分する範囲内に設定した確率分布が十分収まっていることを確認してください。

不適合率プロファイルの標準偏差は、不適合率がどれほど因子の変化に対して敏感かを示す指標です。因子プロファイルが平坦になっているか、もしくは因子の確率分布のばらつきが小さければ、この標準偏差は小さくなります。この標準偏差が大きければ大きいほど、因子の変更が不適合率のばらつきにもたらす影響が大きくなります。すべての因子の標準偏差を比較することで、どの因子を変更すれば不適合率が削減できるかを検討できます。

平均と標準偏差は、因子に対する確率分布の設定を変更すると更新されます。因子に対する確率分布の設定を変更することにより、因子をどのように変更すれば、不適合率を減らせるかを検討できます。因子に対する確率密度関数もしくは確率関数のグラフにあるハンドルをドラッグし、因子の確率分布の変化によって不適合率がどのように変わるかを調べてください。ただし、因子の分布に対する変更を不適合率プロファイルに反映させるためには、[再実行]ボタンをクリックして、新たなシミュレーションを実行する必要があります。

シミュレーションの手法と詳細

因子「X1」の不適合率プロファイルがどのように作成されるかを説明します。X1において、均等な間隔でk個のグリッド点を選び出し、そのグリッド点ごとに「繰り返し数」と同数のシミュレーションを実行します。(デフォルトでは、kは、17に設定されています)。各グリッド点において、仕様限界を満たさない不適合がm個生じた場合、そのグリッド点における不適合率はm/nと計算されます。こうして計算された不適合率をつなげて、X1の連続関数としてプロットします。

ノート

シミュレータの確率分布を変更しても、不適合率プロファイルの曲線は自動的に再計算されません。曲線を更新するには、[再実行]ボタンをクリックしてください。

不適合率プロファイルの目的は、一般的な最適化ではありません。「一般的な最適化」とは、問題のあらゆる側面を考慮した関数を使って、コストと見合せながら品質を最適化するというものです。Space Filling計画で実験計画を立てて、近似的なモデルを用いてモデル化すれば、より一般的な最適化を行えるかもしれません。

不適合率プロファイルの曲線は、不適合率が低い部分で、ぎざぎざになる傾向があります。3乗根スケールが使用されるために低い率での差異が誇張されることが理由の1つです。不適合率プロファイルが滑らかでないのは、シミュレーションの回数が足りないためかもしれません。全体の不適合率曲線(黒色)が滑らかで、それぞれの不適合率がある程度一貫していれば、シミュレーションの回数は十分で解は安定している判断できます。全体の不適合率曲線が滑らかでない場合、シミュレーション実行回数を増やしてみてください。通常は、2万回程度に設定すれば曲線は安定します。

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