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公開日: 09/19/2023

「測定モデルの評価」レポートの例

確証的因子分析(確認的因子分析, CFA; Confirmatory Factor Analysis)では、測定モデルの一種をあてはめます。「測定モデルの評価」レポートには、質問や指標の信頼性および妥当性を示す統計量が表示されます。これらの統計量には、指標変数の信頼性、ω係数、H係数、構成概念妥当性行列などがあります。

この例では、消費者データ調査の妥当性および信頼性を評価します。まず、プライバシー・セキュリティ・評判・信頼性・購入意向(Privacy, Security, Reputation, Trust, Purchase Intent)という5つの潜在変数を因子とする、確証的因子分析モデルをあてはめます。その後、[測定モデルの評価]オプションを使用して、調査に用いた質問の信頼性を検討します。

1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Online Consumer Data.jmp」を開きます。

2. 「SEM: 確証的因子分析」スクリプトの緑の三角ボタンをクリックします。

スクリプトによって、調査データに対する確証的因子分析モデルが実行されます。

3. 「モデルの指定」および「モデルの比較」のグレーの開閉アイコンをクリックし、これらのセクションを非表示にします。

図8.13 CFAモデルの「あてはめの要約」 

CFAモデルの「あてはめの要約」

「あてはめの要約」によると、このモデルのカイ2乗は808.11、自由度は160です。また、p値が有意であることに注目してください。これは、「このモデルのあてはまりが良い」という帰無仮説を棄却する証拠があるということを示しています。ただし、カイ2乗の統計量は、標本サイズに大きく影響され、データ数が200~300以上の場合、モデルがデータから少しずれているだけでも、有意になる傾向があります。この例では、標本サイズが843なので、モデルの適合度を評価するために、CFIとRMSEAも参照することにします。この例では、CFIは0.9より大きい値を、RMSEAは0.1より小さい値をとり、両方とも適合度が良いことを示しています。

4. 「構造方程式モデル: CFA」の赤い三角ボタンをクリックし、[測定モデルの評価]を選択します。

図8.14 CFAモデルの「測定モデルの評価」レポート 

CFAモデルの「測定モデルの評価」レポート

「指標変数の信頼性」プロットには、「指標変数の信頼性」がプロットされています。また、その許容できる下限に対する推奨値(0.25)に線が引かれています。この「指標変数の信頼性」は、潜在変数からの標準化負荷量の2乗と定義されています。セキュリティに関する質問のうちの2つと、評判に関する質問のうちの1つが、それぞれの潜在変数を測定する指標としての信頼性が低いことが示唆されます。Security_3の質問の値は非常に低いので、この質問を取り除いたモデルでも、構成概念の信頼性にほとんど影響はありません。また、Security_5とReput_3の質問は、質問内容を改めることで、信頼性を向上できる可能性があります。

「合成信頼性」および「構成概念最大信頼性」には、各潜在変数のω係数およびH係数がそれぞれ示されています。これらは0~1の値をとり、推奨値は約0.70以上です。ω係数は、標準化した指標変数の単純な合計を合成スコアとした場合に、その合成スコアの変動において潜在変数による変動が占める割合です。H係数は、標準化した指標変数の加重和(重み付きの合計)を合成スコアとした場合に、その合成スコアの変動において潜在変数による変動が占める割合です。セキュリティのω係数は、推奨値の0.70を若干下回っていますが、ここでの目的が研究であるならば、合成信頼性があるとみなせるでしょう。0.70などの推奨値は、調査目的に応じて柔軟に用いてください。たとえば、個人について意思決定や判断を下すために合成スコアを使用する場合は、信頼性の目安として、推奨値よりも高い値(約0.90以上)を使用したほうがよいでしょう。一方、研究目的で合成スコアを使用する場合は、推奨値より低めの値でも構わないでしょう(Nunnally 1978)。「セキュリティ」(Security)および「評判」(Reputation)といった潜在変数の合成信頼性を向上させるためには、Security_3, Security_5, Reput_4の質問に着目し、これらの指標の信頼性を向上させるように努めるとよいでしょう。

「構成概念妥当性行列」(Construct Validity Matrix)は、顕在変数が潜在変数を期待どおりに構成しているかどうかを判断するのに役立ちます。行列を視覚化したグラフを見ると、「プライバシー」(Privacy)・「信頼性」(Trust)・「購入意向」(Purchase Intent)の対角要素の値が、その上または右の値よりも大きいことがわかります。一方、「セキュリティ」(Security)と「評判」(Reputation)についてはそうなっていません。このことからも、「セキュリティ」および「評判」という潜在変数を測定するために、それに関する質問を改善する余地があることがわかります。

結論として、「セキュリティ」および「評判」に関する質問の一部を削除したり、別の質問にしたりすることによって、調査を改善できる可能性があるといえます。

これらのレポートの内容については、測定モデルの評価を参照してください。

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