公開日: 09/19/2023

競合原因分析の統計的詳細

競合原因分析モデルでは、全体の累積分布関数が次のように定義されます。

ここに式を表示

ここで、Fi(x), i = 1, , kは、個々の原因における累積分布関数です。信頼限界も簡単に計算できます。関係する推定値がすべて最尤推定値だからです。

競合原因分析でのパラメータ指定

競合原因分析で、ある故障原因の分布パラメータを特定の値に固定したい場合は、その故障原因の「原因ごとの分析」レポートにてパラメータ値を指定します。「寿命の一変量 - 故障原因: <名前>」レポートにおける「パラメトリック推定」レポートでパラメータ値を指定してください。[モデルの更新]をクリックすると、指定したパラメータ値が設定され、全体の分布に反映されます。

この例では、競合原因分析でパラメータを指定する方法を説明しています。

1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Reliability」フォルダにある「Appliance.jmp」を開きます。

2. [分析]>[信頼性/生存時間分析]>[寿命の一変量]を選びます。

3. 「故障までの時間」[Y, イベントまでの時間]に指定します。

4. 「原因コード」[故障原因]に指定します。

5. 「信頼区間の方法」を[尤度]にします。

6. [パラメータ指定の分布も使用する]を選択します。

7. [OK]をクリックします。

図3.25 原因1を削除したパラメータ指定モデル 

原因1を削除したパラメータ指定モデル

デフォルトでは、原因1にはデータが十分ないので、「除去」されています。ここでは、この原因を「除去」として処理したくないとします。

8. 原因1の「原因ごとの分析」レポートを開きます。「寿命の一変量 - 故障原因:1 度数:1」という名前のレポートです。

9. 「パラメトリック推定 - Weibull」の赤い三角ボタンをクリックし、[分布パラメータの指定]を選択します。

10. [Weibull βを選択して、「2」を入力します。

11. [更新]をクリックします。

図3.26 Weibull βを指定したパラメータ指定モデル 

Weibull βを指定したパラメータ指定モデル

「パラメトリック推定値 - Weibull」レポートで、bを2と仮定すると、パラメータαは22463.391と推定されます。以下の操作により、この分布を原因1の故障分布に使用します。

12. レポートウィンドウの最上部の「故障原因の組み合わせ」が表示されるまで上にスクロールします。

13. 原因1の「除去」ボタンを選択解除します。

14. 原因1の分布に、[パラメータ指定 Weibull]を選択します。

15. [モデルの更新]をクリックします。

図3.27 原因1が表示された更新モデル 

原因1が表示された更新モデル

これらの操作により、パラメータが指定されたWeibull分布を原因1に適用して、全体のモデルが計算されました。

競合原因分析でのBayes推定

故障原因にBayesモデルを指定するには、競合原因分析でのパラメータ指定の手順と同じような手順に従います。各原因に対する「寿命の一変量」の「統計量」の「パラメトリック推定」における「Bayes推定」レポートで、Bayesモデルを指定します。Bayes推定 - <分布の名前>を参照してください。

ある原因に対してBayes推定が適用された場合、全体の累積分布関数を求めるのに乱数シミュレーションが利用されます。たとえば、2つの故障原因があるとします。1つ目の原因には通常のWeibull分布を最尤推定し、2つ目の原因ではWeibull分布をBayes推定したものを用いるとします。このとき、1つ目の原因においては、パラメータベクトルq1を推定するのに最尤法が使われます。一方、2つ目の原因においては、パラメータベクトルq2の事後分布を求めるのにBayes推定が使われます。

この場合、全体における累積分布関数F(x, q1, q2)の事後分布での分位点や中央値は、次のように求められます。

1つ目の原因に対してはパラメトリックなブートストラップを実行します。最尤推定値ここに式を表示の漸近分布から標本を乱数で生成します。ここに式を表示に対する漸近分布から生成された値をここに式を表示とします。

一方、2つ目の原因に対しては、Bayes推定の枠組みで、q2の事後分布に従う乱数を生成します。これをここに式を表示とします。

生成されたここに式を表示ここに式を表示の各セットに対して、F(x, q1, q2)に対する推定値F*(x, q1, q2)を求めます。

F*(x, q1, q2)から、全体の累積分布関数における中央値や分位点を求めます。これらの中央値や分位点が、分布プロファイルにおいて、対応するx値のところにプロットされます。

競合原因分析でのWeibayes分析

故障原因にWeibayesモデルを指定する手順は、競合原因分析でのパラメータ指定の手順と同様です。まず、各原因に対する「寿命の一変量」の「統計量」の「パラメトリック推定 - Weibull」レポートで、[分布パラメータの指定]を選択してください。そして、「分布パラメータの指定」レポートで、「Weibayes」オプションにチェックを入れてください。競合原因分析においてはWeibayesモデルがBayesモデルとして処理され、パラメータαの事後分布からブートストラップ標本が抽出されます。Liu and Wang(2013)を参照してください。

競合原因分析での平均余寿命の計算

競合原因分析での平均余寿命は、故障時間を乱数シミュレーションで生成することにより計算されています。「平均余寿命の計算」の赤い三角ボタンのメニューの[設定]オプションにより生成される乱数の個数を変更できます。この乱数の個数を、ここではmとします。

時間tでの平均余寿命の推定値を求めるために、「時間tまで生存していたもの」という条件付けをした分布からm個の乱数を生成します。そして、これらの乱数の平均を計算します。

平均余寿命に対する信頼区間をJMPに計算させるには、「設定」ウィンドウのチェックボックスを選択する必要があります。そのチェックボックスにチェックすると、ブートストラップ標本の回数(ブートストラップ標本の標本数)を設定するためのオプションが表示されます。この回数をnとします。

信頼区間を計算するために、最尤推定値の漸近分布、またはBayes推定における事後分布のどちらかに基づいて、シミュレーションがn回、行われます。1回のシミュレーションごとにm個の乱数が生成され、そのm個の乱数から平均余寿命が計算されます。そして、n個の平均余寿命から、信頼区間が計算されます。

[混合分布のあてはめ]での予測式の保存

ここでは、「混合分布」レポートの[予測の保存]オプションによって保存される式を説明します。

次の記号を用います。

ここに式を表示 は、混合の割合wiに対する推定値です。

ここに式を表示 は、累積分布関数Fiに対する推定値です。

ここに式を表示 は、Fiに対応した確率密度関数に対する推定値です。

観測値yが打ち切りデータではない場合、保存される値は次のように求められます。

ここに式を表示

観測値が打ち切りデータの場合には、打ち切りがなかった場合における上式の確率密度値を、以下に述べるものに置き換えて求められます。

ここに式を表示 (右側打ち切りの場合)

ここに式を表示 (左側打ち切りの場合)

ここに式を表示 (区間打ち切りの場合)

より詳細な情報が必要な場合や、質問があるときは、JMPユーザーコミュニティで答えを見つけましょう (community.jmp.com).