この例では、「加速寿命試験計画」プラットフォームによって、既存の試験データに基づいて、新たな試験を追加する方法を紹介します。この例では、150 個のコンデンサーを3つの温度条件下(摂氏85度、105度、125度)で1500時間試験しました。結果は、「Capacitor ALT.jmp」サンプルデータテーブルに記録されています。試験結果から得られたモデルに基づき、通常の使用温度条件下(摂氏25度)で100,000時間試験した場合の累積故障確率を推定します。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータライブラリ]を選択し、「Design Experiment」フォルダ内の「Capacitor ALT.jmp」を開きます。
2. 緑色の三角ボタンをクリックし、「寿命の二変量」テーブルスクリプトを実行します。
3. 「比較」アウトラインの「分布」タブにある「分布プロファイル」において、次の操作を行ってください。
– 「温度」の上の「105」をクリックし、「25」に変更します。
– 「時間」の上の「750.5」をクリックし、「100,000」に変更します。
図22.10 コンデンサモデルの「分布プロファイル」
現在のデータに基づくと、25度で100,000時間使用した場合の累積故障確率の点推定値は0.00358、95%信頼区間は0.00056から0.02268となりました。累積故障確率をより精確に推定し、信頼区間の幅をより狭くするために、追加の試験を行うとしましょう。
累積故障確率のより精確な推定値を求めるために、追加試験を行うことにします。元の試験では、温度は85度、105度、125度に設定されていました。追加試験では、90度、110度、125度で試験することにします。これらの温度のうち、2つは新しい試験条件です。最適な追加試験を求めるには、次の手順を行います。
1. [実験計画(DOE)]>[特殊な目的]>[加速寿命試験計画]を選択します。
2. [1因子]と[連続して観測]を選択し、[続行]をクリックします。
3. 「因子名」に「温度」と入力します。
4. 「水準数」に「5」と入力します。
追加試験では3水準の温度(90、110、125)のみを用いますが、元の試験で使用した水準も指定し、合計5水準にしなければなりません。「因子の変換」は、デフォルトで[Arrhenius 摂氏]に設定されます。
5. 「最低使用条件」と「最高使用条件」の両方に「25」と入力します。
6. 「最高試験条件」に「85」、「最低試験条件」に「125」と入力します。
7. [続行]をクリックします。
8. 「温度 水準値」に「85」、「90」、「105」、「110」、「125」と入力します。
3水準(85、105、125)は、元の試験で使用された値です。追加試験では、新しい2水準(90、100)と、元の試験の1水準(125)が使用されます。
注: 元の試験と追加試験のすべての水準を指定する必要があります。
9. 「分布の選択」で[Weibull]が選択されていることを確認します。
10. 「事前平均」の下で[切片を指定]を選択します。「寿命の二変量」の「推定値」アウトラインの加速モデルパラメータ(「Weibull 結果」レポートの[統計量]タブにある)を入力します。
図22.11 「Weibull 結果」アウトラインのパラメータ推定値およびあてはめたモデル
– 「切片」に「-35.200」と入力します。
– 「活性化エネルギー(温度)」に「1.389」を入力します。
これは活性化エネルギーに関する推定値で、ケルビンで測定された温度にBoltzmann定数を掛けたものの逆数に対する回帰係数になっています。
– 「尺度」に「1.305」と入力します。
Weibull分布の加速寿命モデルにおいて、JMPでは、位置パラメータμおよび尺度パラメータσによって分布が表現されています。通常のαおよびβのパラメータ化に対しては、尺度パラメータはσ = 1/βになっています。Weibull分布を参照してください。
「加速寿命試験計画」ウィンドウで、「事前分散行列」に、事前平均に対する不確定性を指定できます。この例では、「事前分散行列」を設定しません。この例では、「事前平均」アウトラインで指定した値が真のパラメータ値であるという仮定のもとで作成することにします。
11. 「計画の設定」で、「試験期間」に「1500」と入力します。
試験は、元の試験と同じく、1500時間以上実施されます。
12. 「試験で用いるユニット数」に「250」と入力します。
前回の実験では150個のユニットを試験しましたが、追加実験でさらに100個試験するため、合計で250個になります。
図22.12 設定後の計画の詳細ウィンドウ
13. [続行]をクリックします。
14. 元の試験における「温度」の各設定にあるユニットを考慮するため、「候補の実験数」で次の値を入力します。
– 各温度(85、105、125)の「最小ユニット数」を50に指定します。
15. 「加速寿命試験計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[ALT最適化基準]>[故障確率最適計画の作成]を選択します。
この基準の詳細については、故障確率最適計画の作成を参照してください。
16. [計画の作成]をクリックします。
最適な試験計画が、他の結果とともに表示されます。
図22.13 最適計画
最適計画は、実験数の水準、試験で用いる最小のユニット数、試験で用いる総ユニット数(「候補の実験数」にある情報)、および、その他の指定情報に基づいて算出されます。最適計画では、温度の各水準において試験で用いるユニット数は次のようになります。
• 摂氏85度で50個。前回の実験ですでに、85度で50個を試験しているため、この温度での追加実験は不要です。
• 摂氏90度で89個。
• 摂氏105度で50個。前回の実験ですでに、105度で50個を試験しているため、この温度での追加実験は不要です。
• 摂氏110度で0個。この水準は不要です。
• 摂氏125度で61個。すでに前回の実験において、125度で50個を試験しているため、追加実験では11個のユニットが必要です。
1. 「分布プロファイル」で、「温度」に「25」、「時間」に「100,000」と入力します。累積故障確率は0.00357となっています。そして、その95%信頼区間は0.00093から0.01361です。この信頼区間は、前回の試験で得られた信頼区間(0.00056から0.02268; 図22.10を参照のこと)より狭くなっています。
図22.14 温度 = 25、時間 = 100000の分布プロファイル