[正規プロット]、[Bayes プロット]、および[パレート図]のオプションは、要因のスクリーニングに関するレポートを作成します。これらの分析では、推定値の分散が等しくない場合や、推定値間に相関がある場合、それらを調整して分析を行います。
メモ: [正規プロット]、[Bayesプロット]、および[パレート図]のオプションを使用するには、モデルに少なくとも4つのパラメータがある必要があります。そのうち1つは切片でもかまいません。
いずれかのプロットオプションを選択すると、「要因のスクリーニング」レポートのタイトルのすぐ下に次の情報が表示されます。
• 推定値が等分散であり、かつ、無相関の場合は次のような注釈が出力されます。
– 「パラメータ推定値は等分散」
– 「パラメータ推定値は無相関」
• 推定値の分散が等しくないか、もしくは、相関がある場合は、代わりに、それに応じたリスト項目が表示されます。そこで選択されている方法によって、JMPは推定値を変換しています。変換のいずれかまたは両方を無効にしたい場合は、該当するリスト項目を変更してください。
Lenthの方法で計算された疑似的な標準誤差(PSE; pseudo standard error)が、注釈またはオプションリストのすぐ下に表示されます(疑似標準誤差については、LenthのPSEに説明があります。)パラメータ推定値の分散が等しいかどうか、また、パラメータ推定値間に相関があるかどうかに応じて、表に表示される統計量は異なります。
パラメータ推定値が等分散で、無相関の場合は、次のような統計量が表に表示されます。
Lenthの標準誤差(PSE)
Lenthの擬似標準誤差。
パラメータ推定値の分散が等しくない場合、または相関がある場合は、次のような統計量が表に表示されます。
t値スケールでのLenthの標準誤差(PSE)
パラメータ推定値を相対標準誤差で割ったt値に基づき計算された、Lenthの疑似標準誤差。
コード化されたスケールのLenthの標準誤差(PSE)
変換した推定値に基づき計算された、Lenthの擬似標準誤差。
「パラメータ推定値の母集団」レポートには、パラメータ推定値に対する検定が表示されます。この検定は、オプションのリストで指定した変換に基づいて実行されます。
• [標準化して等分散になった推定値を使用]オプションは、分散を標準化するために正規化した変換を適用します。分散が等しくない場合、このオプションがデフォルトで選択されています。
• [直交化して無相関になった推定値を使用]オプションは、パラメータ推定値間の相関をなくし、無相関にする変換を適用します。元のパラメータ推定値の間に相関がある場合、このオプションがデフォルトで選択されます。なお、直交化で適用される変換は、逐次平方和(タイプIの平方和)を計算するのに使われる変換と同じです。変換された推定値は、現在の変数を、それ以前の変数を含んでいるモデルに追加したときに、どれだけ寄与が増加するかを表します。
• 元のパラメータ推定値が等分散で無相関である場合は、変換は適用されません。レポートには、パラメータ推定値は等分散で無相関であるという注釈が出力されます。
推定値や検定結果は、リストで選択した変換方法に依存します。なお、p値が0.20以下である行は強調表示されます。レポートには、「項」、「推定値」、「t値」、「p値(Prob>|t|)」(もしくは「擬似t値」、「擬似p値」)が表示されます。
項
パラメータ推定値を求めたいモデル項。
推定値
パラメータ推定値。モデル効果の尺度(スケール)が同じ場合にのみ、推定値の大きさを比較できます。
t値
誤差の自由度がある場合、表示されます。この値は、パラメータ推定値をその標準誤差で割ったものです。
p値(Prob>|t|)
検定のp値。変換が適用された場合は、変換したデータを使った検定のp値です。
疑似t値
誤差の自由度がない場合、p値の代わりに表示されます。パラメータの相対標準誤差が同じ場合、疑似t値は、パラメータ推定値をLenthの疑似標準誤差で割ったものとなります。相対標準誤差が異なる場合、疑似t値に示すように計算されます。
疑似p値
誤差の自由度がない場合、p値の代わりに表示されます。この疑似p値はt分布を使って求められます。自由度はm/3を整数に丸めた値です。mはパラメータの数です。
[標準化して等分散になった推定値を使用]が選択され、「パラメータ推定値は無相関」という注釈が表示されている場合、レポートには「標準化推定値」という列が表示されます。この列には、等分散になるよう変換したパラメータ推定値が表示されます。
[標準化して等分散になった推定値を使用]と[直交化して無相関になった推定値を使用]の両方が選択されている場合、レポートには「直交コード化」という列が表示されます。次の情報が示されます。
直交コード化
直交するように変換したパラメータ推定値を表示します。
直交t値
誤差の自由度がある場合、表示されます。変換した推定値に対するt値です。
擬似直交t値
誤差の自由度がない場合、表示されます。直交化した推定値(「直交コード化」の列に表示される値)を、コード化されたスケールの「Lenthの標準誤差(PSE)」で割ることによって算出されたt値です。
図3.42のレポートは、「Bicycle.jmp」サンプルデータに添付されている「モデルのあてはめ」スクリプトを実行すると作成されます。メニューより作成する場合は、[要因のスクリーニング]>[正規プロット]を選択します。レポートの先頭にある注釈は、推定値は等分散で無相関であり、変換が必要でないことを示しています。このような場合、元の推定値から「Lenthの標準誤差(PSE)」が計算されます。誤差には自由度がないため、誤差分散の推定値は求められません。そのため、Lenthの標準誤差によって、t値を求めます。そして、そのt値に基づき、p値を求めます。p値が0.20以下である3つの推定値が強調表示されています。
図3.42 等分散で無相関の推定値の「要因のスクリーニング」レポート
「Odor.jmp」サンプルデータを開き、添付されている「モデル」スクリプトを実行し、呼び出された起動ダイアログで[実行]ボタンをクリックしてください。その後、「応答 臭気」の赤い三角ボタンをクリックし、[要因のスクリーニング]>[正規プロット]を選択すると、図3.43のレポートが作成されます(または、「応答 臭気」の赤い三角ボタンをクリックし、[Bayesプロット]か[パレート図]を選択してください)。
レポートタイトルのすぐ下の注釈は、元の推定値は等分散ではなく相関もあるため、等分散で無相関にするには標準化と直交化が必要であることを示しています。なお、元の推定値における相関行列は、「推定値の相関」レポートに表示されます。
レポートには、「Lenthの標準誤差(PSE)」の「t値スケール」と「コード化されたスケール」が表示されます。しかし、この例では誤差の自由度があるため、「パラメータ推定値の母集団」レポートの検定では「Lenthの標準誤差(PSE)」は使用されていません。p値が0.20以下である3つの推定値が強調表示されています。「パラメータ推定値の母集団」レポートの最後には、直交化された推定値は、モデルに指定された効果の順番に依存するという注釈が出力されています。
図3.43 分散が等しくなく、相関がある推定値の「要因のスクリーニング」レポート
「推定値の相関」レポートは、推定値に相関がある場合にのみ表示されます(図3.43)。このレポートには、パラメータ推定値の相関行列が表示されます。このレポートは、赤い三角ボタンメニューから[推定値]>[推定値の相関]を選択したときに表示される相関行列と同じです。ただし、よりコンパクトに表示するために、列見出しは付いていません。推定値の相関を参照してください。
「無相関にするための変換」レポートは、推定値に相関がある場合にのみ表示されます。レポートには、計画行列を変換して無相関のパラメータ推定値を計算するために使用する行列が表示されます。変換された推定値(「直交コード化」の列に表示される値)は、元の推定値にこの行列を掛けて、さらにある値を掛けることによって求められます。この値は、誤差の標準偏差および行数の関数であり、次のように定義されます。
RMSE / sqrt( NRows )
この変換行列は、Cholesky分解によって求めることができます。交差積行列X′Xを、LL′とCholesky分解します。ここでLは、下三角行列です。分解されたL′から変換行列が求められます。
この変換は、各説明変数を、モデルに指定された順序でそれより前にある説明変数に対して直交化します。直交化された推定値は、このような計算を反復して行うことにより得ることができます。直交化されたパラメータ推定値の共分散行列は、対角要素が等しい対角行列になります。
メモ: 直交化された推定値は、起動ダイアログで指定された効果の順番に依存します。各効果の寄与は、それより前に指定された効果に対して直交化されます。基本的には、主効果、2因子間交互作用、3因子間交互作用、という順番で効果を指定してください。