この例では、「モデルのあてはめ」プラットフォームの[混合モデル]手法を使って、2因子の分割実験モデルを指定し、分析します。「モデルのあてはめ」起動ウィンドウで[混合モデル]手法を指定すると、効果を指定するタブが表示されます。そこで変量効果を指定すると、レポートされる分析結果は、それらの変量効果を考慮したものになっています。なお、分割実験は、[混合モデル]手法ではなく、[標準最小2乗]手法を使っても分析できます。
サンプルデータは、テンダライザー(柔化剤)とロースト時間の効果について調査したデータです。ある精肉工場において、まず、6つの枝肉が無作為に抽出されました。続いて、各枝肉は、さらに3つの塊に分割されました。そして、分割された3つの塊に対して、3種類の柔化処理(テンダライジング処理)のいずれかが無作為に割り付けられました。その後、オーブンで加熱した後、肉の中心部に近いところから、4個所をくりぬいて測定しました。
同一の枝肉における3つの塊は、同じオーブンに入れられました。30分後、各塊の中心部に近いところから、肉をくりぬいて測定しました。同様にして、36分後、42分後、そして48分後において各塊から肉をくりぬいて測定しました。くりぬいた肉が適温まで冷めるのを待ち、Warner‐Bratzler装置によって肉の硬さを測定しました。測定値は、大きいほど硬いことを示します。
分析者が興味があるのは、テンダライザー(柔化剤)とロースト時間の効果、さらに、テンダライザーとロースト時間との交互作用です。それを調べる目的で、この分割実験は計画されました。
1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Split Plot.jmp」を開きます。
2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。
3. 「Y」を選択し、[Y]をクリックします。
4. 「手法」リストから[混合モデル]を選択します。
5. 「テンダライザー」と「ローストする時間」を選択して、[マクロ]>[完全実施要因]を選択します。
図8.27 「モデルのあてはめ」起動ウィンドウの[固定効果]タブでの指定
6. [変量効果]タブをクリックします。
7. 「肉」を選択して[追加]をクリックし、肉を変量効果に指定します。
8. 「肉」と「テンダライザー」を選択し、[交差]ボタンをクリックします。
「肉」の変量効果は、一次単位である枝肉の効果です。一方、「肉*テンダライザー」の交互作用は、二次単位である塊の効果で、「標準最小2乗」手法の場合の「肉*テンダライザー&変量効果」と同じです。
図8.28 「モデルのあてはめ」起動ウィンドウの[変量効果]タブでの指定
9. [実行]をクリックします。
Figure 8.29のような「混合モデル」レポートが表示されます。
まず、「予測値と実測値のプロット」と「条件付き予測値と実測値のプロット」を見ると、あてはめたモデルについて特に問題はないようです。次に、結果の解釈に進みましょう。「固定効果の検定」レポートを見ると、「テンダライザー」と「ローストする時間」の間の交互作用は、統計的に有意になっています。
図8.29 「混合モデル」レポート
1. 「混合モデル」の赤い三角ボタンをクリックし、[周辺予測値プロット]>[プロファイル]を選択します。
図8.30 ロースト時間が30分のときの周辺モデルプロファイル
2. 「ローストする時間」のグラフで、赤い縦の点線を36、42、48に移動してください。
Figure 8.30のすべてのペアに対する検定結果を見ると、テンダライザーの「Papain」(パパイン)と「Vinegar」(酢)の両方とも、ロースト時間が30分や36分のときは、コントロール群よりも硬さが有意に低いことがわかります。この検定結果では、42分においては差は有意ではありません。48分では、パパインはコントロール群より低い値を示していますが、酢はそうではありません。パパインの硬さは、42分のときを除き、常に酢よりも低くなっています。
3. 「混合モデル」の赤い三角ボタンをクリックし、[多重比較]を選択します。
4. 「テンダライザー*ローストする時間」を選択します。
5. 「すべてのペアの比較 - TukeyのHSD検定」を選択して[OK]をクリックします。
Figure 8.31は、すべてのペアを比較した結果の一部です。いくつものペアで有意差が見られています。たとえば、プロファイルで確認できたパパインと酢の差のほとんども、有意になっています。パパインのほうが、酢よりも優れたテンダライザー(柔化剤)であると言えるようです。
図8.31 すべてのペアに対する多重比較の結果(一部)