公開日: 09/19/2023

加速寿命試験を拡張する例

「加速寿命試験計画」プラットフォームを使い、既存の試験データに基づいて新たな試験を追加する方法を紹介します。この例では、150個のコンデンサを3つの温度条件下(摂氏85度・105度・125度)で1,500時間試験しました。試験結果から得られたモデルに基づき、通常の使用温度条件下(摂氏25度)で100,000時間試験した場合の累積故障確率を推定します。

メモ: データテーブルの行数は88です。度数列は、150回の測定を対象としています。

現在の予測値の検討

1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Reliability」フォルダ内の「Capacitor ALT.jmp」を開きます。

2. 緑の三角ボタンをクリックし、「寿命の二変量」テーブルスクリプトを実行します。

3. 「比較」セクションの「分布」タブにある「分布プロファイル」において、因子設定を変更します。

「温度」の上の「105」をクリックし、「25」に変更します。

「時間」の上の「750.5」をクリックし、「100,000」に変更します。

図23.15 コンデンサモデルの「分布プロファイル」 

コンデンサモデルの「分布プロファイル」

現在のデータに基づくと、コンデンサを25度で100,000時間使用した場合の累積故障確率の点推定値は0.003575、95%信頼区間は0.00056から0.02268となりました。ここで、累積故障確率をより精確に推定したいとしましょう。推定の精度を示す信頼区間の幅をより狭くするには、追加の試験を行うのがいいでしょう。

計画の拡張

累積故障確率のより精確な推定値を求めるために、追加試験を行うことにします。元の試験では、温度は85度・105度・125度に設定されていました。追加試験では、90度・110度・125度で試験することにします。これらの温度のうち、2つは新しい試験条件です。最適な追加試験を求めるには、次の手順を行います。

1. [実験計画(DOE)]>[特殊な目的]>[加速寿命試験計画]を選択します。

2. [1因子]を選択します。

3. 「因子名」「温度」と入力します。

4. 「水準数」に「5」と入力します。

追加試験では3水準の温度(90, 110, 125)のみを用いますが、元の試験で使用した水準も指定し、合計5水準にしなければなりません。「因子の変換」は、デフォルトで[Arrhenius 摂氏]に設定されます。

5. 「最低使用条件」「最高使用条件」の両方に「25」と入力します。

6. 「最高試験条件」に「85」、「最低試験条件」に「125」と入力します。

7. [続行]をクリックします。

8. 「分布の選択」[Weibull]が選択されていることを確認します。

9. 「事前平均」「切片を指定」を選択します。「寿命の二変量」の「推定値」セクションの加速モデルパラメータ(「Weibull 結果」レポートの[統計量]タブにある)を入力します。

図23.16 「Weibull 結果」のパラメータ推定値およびあてはめたモデル 

「Weibull 結果」のパラメータ推定値およびあてはめたモデル

「切片」に「-35.200」と入力します。

「活性化エネルギー(温度)」に「1.389」を入力します。

これは活性化エネルギーに関する推定値で、ケルビンで測定された温度にBoltzmann定数を掛けたものの逆数に対する回帰係数になっています。

「1/b」に「1.305」を入力します。

Weibull分布の加速寿命モデルにおいて、JMPでは、位置パラメータmおよび尺度パラメータsによって分布が表現されています。通常のaおよびbのパラメータ化に対しては、尺度パラメータはs = 1/bになっています。Weibull分布を参照してください。

「加速寿命試験計画」ウィンドウで、[事前分布のばらつきを指定]を選択すると、事前平均に対する不確定性を指定できます。この例では、事前分布のばらつきは指定しません。この例では、「事前平均」セクションで指定した値が真のパラメータ値であるという仮定のもとで作成することにします。

10. [続行]をクリックします。

11. 「候補の実験数」で、「温度 水準値」に「85」・「90」・「105」・「110」・「125」と入力します。

3水準(85, 105, 125)は、元の試験で使用された値です。追加試験では、新しい2水準(90, 110)と、元の試験の1水準(125)で試験を行います。

メモ: このように、元の試験と追加試験のすべての水準を指定する必要があります。

12. 「候補の実験数」で、各温度(85, 105, 125)の「最小ユニット数」として「50」を入力します。これは、すでに実施した実験の数を示します。

13. 「計画の設定」で、「試験期間」に「1500」と入力します。

試験は、元の試験と同じく、1500時間以上実施されます。

14. 「試験で用いるユニット数」に「250」と入力します。

15. 前回の実験では150個のユニットを試験しましたが、追加実験でさらに100個試験するため、合計で250個になります。

16. 「加速寿命試験計画」の赤い三角ボタンをクリックし、[ALT最適化基準]>[故障確率最適計画の作成]を選択します。

この基準の詳細については、故障確率最適計画の作成を参照してください。

図23.17 設定後の計画の詳細 

設定後の計画の詳細

17. [計画の作成]をクリックします。

最適な試験計画が、他の結果とともに表示されます。

図23.18 最適計画 

最適計画

最適計画は、実験数の水準、試験で用いる最小のユニット数、試験で用いる総ユニット数(「候補の実験数」にある情報)、および、その他の指定情報に基づいて算出されます。最適計画では、温度の各水準において、試験で用いるユニット数は次のようになります。

前回の実験ですでに、85度で50個を試験しているため、この温度での追加実験は不要です。

90度で58ユニット。

105度で50ユニット。前回の実験ですでに、105度で50個を試験しているため、この温度での追加実験は不要です。

110度で0ユニット。この水準は不要です。

125度で92ユニット。前回の実験ですでに、125度で50個を試験しているため、この温度での追加実験は不要です。

追加試験と元の試験の比較

1. 「分布プロファイル」で、通常の使用条件として「温度」に「25」、「時間」に「100,000」と入力します。累積故障確率は0.00357となっています。そして、その95%信頼区間は0.00089から0.014525です。この信頼区間は、前回の試験で得られた信頼区間(0.00056から0.02268; Figure 23.19を参照のこと)より狭くなっています。

図23.19 温度 = 25、時間 = 100,000の分布プロファイル 

温度 = 25、時間 = 100,000の分布プロファイル

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