多重比較の機能を用いるには、「最小2乗法によるあてはめ」レポートで「応答」の赤い三角ボタンをクリックし、[多重比較]を選択します。Figure 3.53は、[標準最小2乗]手法の[多重比較]オプションの設定パネルです。この例では、「Big Class.jmp」サンプルデータにて、「体重(ポンド)」を応答変数、「年齢」、「性別」、および「身長(インチ)」をモデル効果に指定しています。設定パネルでは、[最小2乗平均の推定値]と[ユーザ定義の推定値]という2種類のいずれかで、比較を指定できます。
このオプションは最小2乗平均を比較するもので、名義尺度または順序尺度の効果に対してだけ使えます。最小2乗平均は、他の効果を中立的な値に固定した時の応答の予測値です(最小2乗平均の定義については、最小2乗平均表を参照)。この比較を行うには、比較を行いたい効果を選択してください。Figure 3.53では、「年齢」の[最小2乗平均の推定値]が指定されています。最小2乗平均プロットを表示するオプションがあります。最小2乗平均プロットのオプションを参照してください。
図3.53 [最小2乗平均の推定値]の起動ウィンドウ
Figure 3.54は、[ユーザ定義の推定値]の設定を示しています。年齢の3水準と性別の2水準を選択しています。また、身長の2つの値をキーボードで入力しています。その後、[推定値の追加]ボタンをクリックすると、図のように、指定された水準を組み合わせたリストが表示されます。なお、この状態で、さらに推定値を指定し、[推定値の追加]ボタンを再度クリックし、「比較の推定値」表にそれらを追加することもできます。
図3.54 [ユーザ定義の推定値]の起動ウィンドウ
[ユーザ定義の推定値]において、水準や値の指定が行われなかった効果は尺度に応じて次のように設定されます。
• 連続尺度の説明変数は、その説明変数における単純な標本平均に設定されます。
• 名義尺度および順序尺度の効果は、最初の水準に設定されます。
メモ: この節では、「平均を比較する」といった場合は、特に断らない限り、「最小2乗平均を比較する」または「ユーザ定義の推定値を比較する」ことを指します。
[最小2乗平均プロットの表示]オプションを選択すると、最小2乗平均プロットが描かれます。このオプションを選択した場合で、選択している効果が交互作用項である時には、交互作用プロットの作成に関するオプションのパネルが表示されます。このパネルで、重ね合わせる項を選択してください。交互作用プロットを選択しなかった場合には、すべての因子の水準を組み合わせた最小2乗プロットが描かれます。最小2乗平均プロットのオプションを参照してください。
比較したい推定値を指定したら、「比較の選択」の下で比較の種類を選択します。または、何も選択せずに[OK]をクリックします。
全体平均との比較 - ANOM
各水準の最小2乗平均を、それらの全体と比較します。この分析は、平均分析(ANOM; analysis of mean)と呼ばれている多重比較法です。
コントロール群との比較 - Dunnett
各水準の最小2乗平均を、コントロール水準の最小2乗平均と比較します。この分析は、Dunnettの検定と呼ばれている多重比較法です。
ヒント: 因子の列に「コントロール群」列プロパティを追加すると、[コントロール群との比較 - Dunnett]を選択するたびにコントロール群を指定せずに済みます。『JMPの使用法』のコントロール群を参照してください。
すべてのペアの比較 - TukeyのHSD検定
最小2乗平均のすべてのペアを比較します。その際、Tukey法による多重性調整を行います。
各ペアの比較 - Studentのt検定
最小2乗平均のすべてのペアを比較します。ただし、この方法では、Tukey法とは異なり、多重性の調整を行いません。
すべてのペアの比較 - 同等性検定
最小2乗平均のすべてのペアを、実質的に同等であるとみなす差に対して比較します。
いずれかの比較を選択すると、レポートが表示されます。レポートの上部には、分位点(棄却値)などの詳細が表示されています。また、多重性の調整を行った検定については、その調整方法名が表示されます。同等性検定の場合は、帰無仮説(上限と下限)および対立仮説(同等性の範囲)が示されます。さらに、[ユーザ定義の推定値]を指定した場合、比較する水準や固定する水準が表示されます。なお、指定がない場合、連続尺度の効果は標本平均に、名義尺度および順序尺度の効果は最初の水準に固定されます。
「比較の選択」リストから何も選択せずに[OK]をクリックした場合、「多重比較」レポートが開き、「最小2乗平均の推定値」または「ユーザ定義の推定値」表が表示されます。この状態でも、「多重比較」の赤い三角ボタンメニューから、前述した4つの比較のいずれも選択できます。以下では、用意されているレポートとオプションを説明します。
デフォルトでは、[多重比較]オプションは、「多重比較」起動ウィンドウで選択された推定値の種類に従って「最小2乗平均の推定値」または「ユーザ定義の推定値」レポートを表示します。この表は、設定ダイアログでいずれの比較を選択しなくても、常に表示されます。比較対象の各グループ(各水準)について、推定値、t値、信頼区間が表示されます。この表には、以下の列があります。
カテゴリカルな効果の水準
レポートの最初の列には、比較するグループ(水準)が示されています。この列の値は、分析されるグループを示します。
推定値
グループ平均(該当する水準の最小2乗平均)の推定値。
標準誤差
グループ平均の推定値に対する標準誤差。
自由度
グループ平均が0かどうかの検定の自由度。
下側95%
グループ平均の両側信頼区間の下限。「モデルのあてはめ」ウィンドウで[有意水準の設定]を選択することによって、信頼水準を変更することができます。
上側95%
グループ平均の両側信頼区間の上限。
t値
(レポートを右クリックし、[列]>[t値]を選択した場合のみ表示されます。)有意性検定のt値。
p値(Prob>|t|)
(レポートを右クリックし、[列]>[p値(Prob>|t|)]を選択した場合のみ表示されます。)有意性検定のp値。
算術平均
(「最小2乗平均の推定値」レポートにのみ表示されます。)各グループの算術平均。
N
(「最小2乗平均の推定値」レポートにのみ表示されます。)各グループの平均を計算するのに使用した標本サイズ。