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公開日: 09/19/2023

複数の変数による平均の比較

1変数による平均の比較では、1つのカテゴリカル変数の水準間で平均を比較しました。複数の変数の水準間で平均値を一度に比較する場合には、分散分析(ANOVA)を用います。

シナリオ

証券アナリストは、「割合の比較」節で挙げた「会社のタイプ(製薬会社またはコンピュータ関連企業)によって、会社規模が利益に与える影響に違いがあるかどうか」という問題について検討します。

回答を導き出すには、次の2つの変数の組み合わせによって会社の利益を比較します。

「タイプ」(PharmaceuticalまたはComputer)

「会社規模」(small、medium、big)

関係の洗い出し

まず、タイプと会社規模のすべての組み合わせについて、利益がどのように異なっているかをグラフで見てみます。

1. [ヘルプ]>[サンプルデータフォルダ]を選択し、「Companies.jmp」を開きます。

2. [グラフ]>[グラフビルダー]を選択します。「グラフビルダー」ウィンドウが表示されます。

3. 「利益($M)」をクリックし、「Y」ゾーンにドラッグ&ドロップします。

4. 「会社規模」をクリックし、「X」ゾーンにドラッグ&ドロップします。

5. 「タイプ」をクリックし、「グループX」ゾーンにドラッグ&ドロップします。

図5.21 会社の利益を表したグラフ 

会社の利益を表したグラフ

このグラフから、大手コンピュータ企業1社が極めて高い利益を上げていることがわかります。この外れ値があるせいで、グラフのY軸の範囲が広くなり、他のデータ点を比較しにくくなっています。

6. 外れ値をクリックして選択し、グラフ内を右クリックして[行]>[行の除外]を選択します。該当する点が削除され、グラフの範囲が自動的に更新されます。

7. 棒グラフアイコンここに画像を表示をクリックします。平均だけに興味がある場合には、点よりも棒グラフのほうが分かりやすいです。

図5.22 外れ値を除外したグラフ 

外れ値を除外したグラフ

更新後のグラフから、製薬会社の方が平均利益が高いことがわかります。また、製薬会社についてのみ、会社規模によって利益に差が出ていることもうかがえます。1つの変数(会社規模)の効果が別の変数(会社タイプ)の水準に応じて変化する場合、これを交互作用と呼びます。

関係の定量化

このデータは1つの標本に過ぎないため、次の点を確認するとします。

この標本で見られる差は、偶然だけで生じたものなのか

または

母集団においても差があるといえるのか

1. 1つのデータ点が除外された状態の「Companies.jmp」データテーブルに戻ります。関係の洗い出しを参照してください。

2. [分析]>[モデルのあてはめ]を選択します。

3. 「利益($M)」を選択し、[Y]をクリックします。

4. 「タイプ」「会社規模」の両方を選択します。

5. [マクロ]ボタンをクリックして[完全実施要因]を選択します。

6. 「強調点」メニューから[要因のスクリーニング]を選択します。

7. [ダイアログを開いたままにする]チェックボックスをオンにします。

図5.23 設定後の「モデルのあてはめ」ウィンドウ 

設定後の「モデルのあてはめ」ウィンドウ

8. [実行]をクリックします。レポートウィンドウにモデルの結果が表示されます。

平均利益の差が偶然で起きたものかどうかを確認するには、「効果の検定」レポートを見ます。

メモ: [モデルのあてはめ]のすべての結果についての詳細は、『基本的な回帰モデル』のモデルの指定章を参照してください。

効果の検定の表示

「効果の検定」レポート(Figure 5.24)には、統計的検定の結果が表示されます。「モデルのあてはめ」ウィンドウでモデルに含めた各効果(「タイプ」、「会社規模」、「タイプ*会社規模」)の検定結果が示されています。

図5.24 「効果の検定」レポート 

「効果の検定」レポート

まず、モデルの交互作用の検定(「タイプ*会社規模」効果)に着目します。Figure 5.22は、製薬会社の利益が会社規模によって異なることを示していました。しかし、効果の検定では、タイプと会社規模の交互作用の有意性を認めることができません。p値は0.218であり、有意水準0.05よりも大きくなっています。次に、モデルから交互効果を削除し、モデルを再実行してみます。

1. 「モデルのあてはめ」ウィンドウに戻ります。

2. 「モデル効果の構成」ボックスで、「タイプ*会社規模」効果を選択して[削除]をクリックします。

3. [実行]をクリックします。

図5.25 更新後の「効果の検定」レポート 

更新後の「効果の検定」レポート

会社規模のp値は5%よりも大きく、会社規模による有意差は認められません。「タイプ」効果のp値は小さいので、コンピュータ関連企業と製薬会社間のデータに見られた差は偶然だけで生じたものではないことを示しています。

結論

証券アナリストは、会社のタイプ(製薬会社またはコンピュータ関連企業)によって、会社規模が利益に与える影響に違いがあるかどうかを確認する必要がありました。これに対し、次のような回答を得ることができました。

母集団において、コンピュータ関連企業と製薬会社の平均利益には差がある。

会社規模とタイプとの交互作用は、統計的に有意ではなかった。

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