混合モデル手法を起動するには、[分析]>[モデルのあてはめ]を選択し、「手法」メニューから[混合モデル]を選択します。なお、手法を選択する前にYリストに連続変数を指定した場合、「手法」には[標準最小2乗]が表示されます。
手法として[混合モデル]を指定すると、固定効果・変量効果・反復構造を指定できます。レポートで表示されるオプションは、指定したモデルの種類によって異なります。「列の選択」の赤い三角ボタンのメニューのオプションについては、『JMPの使用法』の列フィルタメニューを参照してください。
[混合モデル]を使ってモデルをあてはめる場合、[分散成分の範囲制限なし]というオプションが表示されます。このオプションがオンになっている場合、分散の推定値が負になることを許容します。このオプションは、デフォルトでオンになっています。固定効果に対する検定に主に興味がある場合は、このオプションをオンにしておいたほうが良いでしょう。分散推定値に非負の制約を課すと、固定効果の検定に偏り(バイアス)が生じるためです。[分散成分の範囲制限なし]の詳細は、負の分散推定値を参照してください。
[固定効果]タブにすべての固定効果を追加します。必要に応じて、[追加]・[交差]・[枝分かれ]・[マクロ]・[属性]の各オプションを使用します。これらのオプションの詳細については、モデルの指定を参照してください。
メモ: 「モデルの指定」の赤い三角ボタンのメニューから[多項式の中心化]を選択した場合でも、変量効果に含まれている連続尺度の列は中心化されません。
Figure 8.7は、「Split Plot.jmp」サンプルデータの固定効果を追加したところです。なお、データやモデルによっては1つも固定効果がないものもありえます。例として、正方形分割された農場での試験の例を参照してください。
図8.7 固定効果を追加した「モデルのあてはめ」起動ウィンドウ
[変量効果]タブは、従来の分散成分モデルや、ランダム係数モデルを指定するときに用います。
メモ: 「モデルの指定」の赤い三角ボタンのメニューから[多項式の中心化]を選択した場合でも、変量効果に含まれている連続尺度の列は中心化されません。
従来の分散成分モデルを指定する場合は、[追加]・[交差]・[枝分かれ]オプションを使用して、乱塊実験におけるブロック効果や、分割実験における1次単位効果などの変量効果を指定します。これらのオプションの詳細については、モデルの指定を参照してください。
Figure 8.8は、「Split Plot.jmp」サンプルデータにおいて変量効果を指定したところです。ここでは、「肉」が1次単位となっています。この例については、分割実験モデルの例で詳述しています。
図8.8 「モデルのあてはめ」起動ウィンドウの[変量効果]タブでの指定
ランダム係数モデルを作成するには、[ランダム係数 枝分かれ]ボタンを使ってランダム係数のグループを作成します。
1. 「列の選択」リストから、説明変数となる連続尺度の列を選択します。
2. [変量効果]タブを選択し、[追加]をクリックします。
3. [変量効果]タブで連続尺度の説明変数の列を選択して(説明変数が複数ある場合には、それらすべてを選択してください)、さらに、「列の選択」リストにおいて個々の回帰モデルに該当する水準の列を選択します。この各水準を表す列は、SAS PROC MIXEDでのRANDOMステートメントのSUBJECT= オプションで指定される変数に該当します。
4. [ランダム係数 枝分かれ]ボタンをクリックします。
この最後の操作により、ランダムな切片とランダムな(複数の)傾きがモデルに追加されます。なお、切片と(複数の)傾きの間には、すべて相関が仮定されます。この最後の操作では、ランダムな切片も自動的に追加される点に注意してください。「切片はすべてのグループで共通で固定されている」と仮定するなら、「切片[<グループ>]& ランダム係数(1)」を選択して[削除]をクリックすると、ランダムな切片がモデルから削除されます。
同様の手順を繰り返すことにより、ランダム係数に関して複数のグループを指定できます。これにより、より複雑なランダム係数モデルを指定できます。たとえば、製造業の分割実験において、バッチの効果と、処置とバッチの交互作用という、2つの効果を含めたランダム係数モデルを指定できます。また、教育効果の調査においては、学校の効果と、(学校から枝分かれした)生徒の効果という、2つの効果を含めたランダム係数モデルを指定できます。
同一グループのランダム係数の共分散構造には、無構造(unstructured)が仮定されます。Figure 8.9は、「Wheat.jmp」サンプルデータでランダム係数を指定したところです。[混合モデル]手法の使用例も参照してください。
図8.9 ランダム係数を指定した「モデルのあてはめ」起動ウィンドウ
[反復構造]タブは、誤差の共分散構造を選択するのに使用します。
図8.10 「モデルのあてはめ」起動ウィンドウの[反復構造]タブでの指定
反復構造は、デフォルトでは[残差]に設定されています。[残差]構造は、「誤差間には共分散が存在しない」、つまり、「誤差は互いに独立している」と仮定します。[残差]および[異分散]構造を除く、その他のすべての共分散構造は、誤差間に何らかの共分散があることを仮定します。反復構造に関する詳細は、「統計的詳細」の節の反復測定の統計的詳細と空間的構造の統計的詳細を参照してください。
Table 8.1に、使用できる共分散構造と、各構造を使用するための要件、各構造の共分散パラメータの数をリストします。観察時点数はJとします。
構造 | 反復列の種類 | 反復列の必要数 | 個体の指定 | パラメータ数 |
---|---|---|---|---|
残差 |
| 0 |
| 0 |
異分散 | カテゴリカル | 1 | オプション | J |
無構造 | カテゴリカル | 1 | 必須 | J(J+1)/2 |
AR(1) | 連続尺度 | 1 | オプション | 2 |
複合対称 | カテゴリカル | 1 | 必須 | 2 |
先行依存 等分散 | カテゴリカル |
| 必須 | J |
Toeplitz | カテゴリカル | 1 | 必須 | J |
複合対称 異分散 | カテゴリカル | 1 | 必須 | J+1 |
先行依存 | カテゴリカル |
| 必須 | 2J-1 |
Toeplitz 異分散 | カテゴリカル | 1 | 必須 | 2J-1 |
空間的構造 | 連続尺度 | 2+ | オプション |
|
空間的異方性 | 連続尺度 | 2+ | オプション |
|
空間的構造(ナゲットあり) | 連続尺度 | 2+ | オプション |
|
空間的異方性(ナゲットあり) | 連続尺度 | 2+ | オプション |
|
構造として「残差」を指定した場合、[反復]や[個体]の列に指定された列は無視されます。「共分散構造として「残差」が選択されているので、[反復]や[個体]に指定された列を無視して分析を行います。」という警告が表示されます。
共分散構造として空間的な構造のいずれかを選択すると、「種類」リストが表示されます。このリストから空間的構造を表す関数を1つ選択します。[べき乗]・[指数]・[Gauss]・[球型]という4種類があります。Figure 8.10は、「UniformityTrial.jmp」サンプルデータで球型の空間的構造を選択したところです。
反復測定構造を定義する列を入力します。この[反復]に指定できる列の尺度は、共分散構造によって異なります。反復測定の共分散構造ごとの要件について、Table 8.1を参照してください。
個体を定義する1つまたは複数の列を入力します。個体の列は、カテゴリカルでなければなりません。
「モデルのあてはめ」プラットフォームの[混合モデル]手法では、すべての応答変数の測定値は1列に含まれている必要があります。反復測定データは、複数の列に保存されていることもあるでしょう。つまり、それぞれの行が1個体を表しており、各時点での測定値が別々の列に記録されていることがあるでしょう。データがそのような形式である場合は、データを積み重ねてから[混合モデル]手法を実行する必要があります。「Cholesterol.jmp」および「Cholesterol Stacked.jmp」サンプルデータテーブルは、それぞれ応答値を複数列に保存している形式と積み重ねた形式になっています。複数列に保存している形式におけるデータの各行は、積み重ねた形式のデータにおける「患者」1人に対応しています。