「一元配置」プラットフォームには、平均を比較するためのオプションが複数用意されています。ここでは、平均の比較レポートを作成するオプションと比較手法の種類について解説します。
「一元配置」プラットフォームの「平均の比較」の赤い三角ボタンをクリックすると、メニューが開き、次のオプションが表示されます。
差の行列
グループのすべてのペアの平均差で構成された行列の表示/非表示を切り替えます。
棄却限界値
平均の比較で使われる棄却値や有意水準(a)の表示/非表示を切り替えます。
ヒント: 有意水準は、「一元配置分析」の赤い三角ボタンのメニューにある[a水準の設定]オプションを使って変更できます。
LSD閾値行列
([各ペアのステップワイズ]オプションの場合は使用できません。)平均のペアごとの差から、その最小有意差を引いた行列の表示/非表示を切り替えます。正の値は、その平均のペアには有意差があることを示します。HsuのMCB検定の場合は、LSD行列が2つ作成されます。1つは最小値との比較、もう1つは最大値との比較を示します。
文字の接続レポート
([各ペア]、[すべてのペア]、[各ペアのステップワイズ]の各オプションの場合のみ使用できます。)文字によって有意差があるかどうかを示したレポートの表示/非表示を切り替えます。文字で繋がっていない平均のペアには有意差があります。
差の順位レポート
([各ペア]および[すべてのペア]オプションの場合のみ使用できます。)すべてのペアごとの平均差(正の値のほうの差)、標準誤差、信頼区間、p値、および、信頼区間も描いた差の棒グラフの表示/非表示を切り替えます。p値は、平均が等しいという仮説に対応しています。
詳細な比較レポート
([各ペア]オプションの場合のみ使用できます。)各比較の詳細レポートの表示/非表示を切り替えます。比較ごとに、水準間の差、差の標準誤差と信頼区間、t値、p値、および自由度が表示されます。検定結果を図示したグラフが、各レポートの右側に表示されます。
メモ: 差の標準誤差は、MSEと標本サイズに基づいてペアごとに求めた、プーリングした標準誤差です。
「一元配置」プラットフォームの[各ペア,Studentのt検定]オプションは、Fisherの最小有意差(LSD)検定を行います。これは、Studentのt検定に基づいてグループの水準の各ペアの差を検定するものです。この検定の例については、[各ペア,Studentのt検定]の例を参照してください。
「一元配置」プラットフォームの[すべてのペア,TukeyのHSD検定]オプションは、差のすべてのペアを検定します。この手法では、全体における有意水準を保ちながらすべてのペアが検定されます。HSD検定の信頼区間は、Studentのt検定の信頼区間より広くなります。TukeyのHSD検定では、比較円が[各ペア]の比較円より大きく、ペアの平均の差のp値は大きくなります。
「棄却限界値」表にある「q*」の統計量は、q* = (1/sqrt(2)) x qの式で求められます。この式で、qはスチューデント化された範囲分布のαパーセント点です。この検定の例については、[すべてのペア,TukeyのHSD検定]の例を参照してください。
[すべてのペア,TukeyのHSD検定]オプションは、TukeyのHSD(Honestly Significant Difference)検定、またはTukey-KramerのHSD検定(Tukey 1953, Kramer 1956)を行います。この検定は、グループごとの標本サイズが同じときには、指定された有意水準の正確な検定です。グループごとの標本サイズが異なるときは、保守的な結果になります(Hayter 1984)。
「一元配置」プラットフォームの[最適値との比較,HsuのMCB検定]は、特定の水準の平均が、それ以外の水準の平均の最大値または最小値とどう異なるかを調べます。Hsu(1996)を参照してください。この検定の例については、[最適値との比較,HsuのMCB検定]の例を参照してください。
HsuのMCB検定の分位点は、群によって異なります。各群の標本サイズが等しくない場合は、比較円のグラフは正確とはいえません。比較円の半径は、その群の平均に対する標準誤差と、最大分位点を掛け合わせたものになります。正確に有意差を評価したい場合には、グラフではなく、検定のp値を見てください。最小/最大との比較を参照してください。
[最適値との比較,HsuのMCB検定]オプションは、HsuのMCB検定(Hsu 1996、Hsu 1981)を行います。
メモ: MCBで最大値または最小値とみなされない平均は、Gupta(1965)の部分集合(最大平均または最小平均をもつ可能性があるとして選択された群の集合)にも含まれません。
「HsuのMCB検定」レポートには、平均の比較の全手法に共通する表に加え、「最小/最大との比較」表が含まれます。この表には次の値が表示されます。
水準
群(カテゴリカル変数のグループ)。
p値(vs. 最大)
ある水準の平均がその他の水準の最大平均より大きいという仮説検定のp値。(未知の)真の平均の最大値以下に有意になっている平均を選ぶために使用できます。
p値(vs. 最小)
ある水準の平均がその他の水準の最小平均より小さいという仮説検定のp値。(未知の)真の平均の最小値以上に有意になっている平均を選ぶために使用できます。
「一元配置」プラットフォームの[コントロール群との比較,Dunnett検定]オプションは、グループの平均をコントロール群と比較します。Studentのt検定では、多重性調整をまったく行いません。Tukey-Kramer検定では、すべてのペアの比較に関して多重性調整を行います。Dunnett検定は、コントロール群との比較に関してだけで多重性の調整を行うので、これら2つの検定の中間にあたると言えます。この検定の例については、[コントロール群との比較,Dunnett検定]の例を参照してください。Dunnettの検定の詳細については、Dunnett(1955)を参照してください。
「一元配置」プラットフォームの[各ペアのステップワイズ, Newman-Keuls検定]オプションは、逐次的なステップワイズ手順により標本平均を比較します。各ステップでは、2群の平均の差に対してTukeyのHSD検定を行います。この検定の例については、[各ペアのステップワイズ, Newman-Keuls検定]の例を参照してください。
[各ペアのステップワイズ, Newman-Keuls検定]オプションは、スチューデント化された範囲をもとにステップワイズ手順により検定を行い、平均に差があるかどうかを調べます。この検定は、「Newman-Keuls検定」または「Student-Newman-Keuls検定」と呼ばれています(Keuls, 1952)。この検定は実験全体の水準は保てないので妥当な検定ではありませんが、TukeyのHSD検定ほど保守的ではありません。
注意: Newman-Keuls検定では、検定全体における過誤率(family-wise error rate)が守られていません。結果の解釈には注意が必要です。
J個の群における平均を以下のように検定します。
次のように定義します。
J = 群数(群の平均で昇順に並べたもの)
N = 標本サイズ
d = 自由度(N - J)
i = 比較対象の群平均のうち、最小平均の群番号
j = 比較対象の群平均のうち、最大平均の群番号
k = 各比較におけるjの最小値
処理の開始時に、i = 1, j = J, k = 2と設定します。
1. 群iとjに対して、TukeyのHSD検定を行います。ここで、適切な分位点を見つける群数は、j - i + 1です。
– この検定の結果が有意である場合は、群iとjに有意な差があると判断します。jの値を1減らします。
そして、jがkより小さい場合は、iの値を1増やし、k = max(i, j) + 1, j = Jと設定して、step 2に進みます。
また、jがk以上である場合は、step 2に進みます。
– この検定の結果が有意でない場合は、iとjに有意な差があるとは判断しません。iの値を1増やし、k = i + 1, j = Jと設定し、step 2に進みます。
2. kの値に基づいて、処理を続行するか、または終了するかを判定します。
– kがiより大きく、J以下である場合は、step 1を繰り返します。
– kがi以下か、またはJより大きい場合は、処理を終了します。まだ検定していない範囲はすべて、有意な差がないとみなされます。
各ステップにおいて実行されるTukeyのHSD検定の分位点は、そのステップでの並び替え済みの群平均の個数に基づいており、ステップごとに異なります。Newman-Keuls検定のレポートの「最小q*」(検定に使われた最小の分位点)は、上記の手順で使用した、スチューデント化された範囲の最小分位点を、2の平方根で割った値です。
検定の結果は、「文字の接続レポート」に示されます。
Newman-Keuls検定の詳細については、Howell(2013)を参照してください。
メモ: [各ペアのステップワイズ, Newman-Keuls検定]オプションでは、比較円は表示されません。この手法では、ステップごとに比較円の大きさが異なるためです。